ダンジョンへ。
トトとタケルは朝まで飲み明かして語り合った。身体がある喜びやこれからの事。
「兄ちゃん、おかえりー」
「おはよう、ノーレン。昨日はデートしたのか?」
「まぁ、うん…断り切れなくて」
ノーレンは、はははっ、と乾いた笑いを浮かべる。女神に話し掛けられても動じないノーレンを、ご令嬢はとても気に入ってしまった様だ。
詳しく聞いていると、やがてノワールが起きてきた。
トトが帰って来ている事に安心した様子で笑顔を見せる。
一同は朝食を食べ、準備を済ませた後は、ミリアン大陸へと転移する。
次元を旅する円盤の、一度行った場所に転移出来る能力で転移した場所は、ノール王国の西…ニーソの街の近く。トトが初めてこの世界に来た場所。
「懐かしいなぁ…」
「泰人は、ここに転移されて来たんだね…うん、何も無い。よく街に行けたね」
「最初森の方に行っちゃってさ、オークを見た時は死ぬかと思ったよ」
「オーク?兄ちゃんなら倒せたんじゃないのか?」
「最初は丸腰の強さ5だぞ?勝てる訳ねぇ」
当時は武器も無く、職業すら知らなかった。今でもよくここまで生き残ったものだと思っている。
四人はSGドラゴンに乗り込み、更に西を目指す。
「うわぁー!すげぇ!これを兄ちゃんが作ったのか?」
「おー、すげえだろ。爆撃も出来るから空飛ぶ兵器だぞー」
「これが沢山あったら革命が起きますね」
「そうだね、明らかにオーバースペック」
みんな初めて乗るSGドラゴンに興奮し、楽しい空の旅。
数時間もすると、大きな街が見えてきた。
高い城壁に囲まれた巨大な街。
「ここは何の国だろ…地図は、あった。ユーギィっていう国…あっ凶悪ダンジョンで有名な国って解説あるぞ」
「上から見るのは初めてだけど、厳重だねぇ。魔物のランクも高そう。ダンジョンはもう少し西にあるはず」
「了解」
西に向かってしばらく進むと、不自然に巨大な穴が開いている。
数百メートルの細長い穴が交差した十字の穴で、東西南北に入り口の階段がある様に見える。
「あったよー。確か、『天国への階段』だっけな?」
「へぇー、奈落への階段の間違いじゃねえか?。それに結構人がいるなぁー。中心から入れば近道になる?」
「それぞれ別の場所に出る筈だから、どうなんだろ?」
十字の穴の中心。混沌の穴の様に底の見えない暗い穴。
SGドラゴンを空中に停止させ、どうするか話し合っている所に、ラグナから話し掛けられた。
≪泰人、中心から行けば下層に行けるよ≫
「おっ、ありがと。中心から行くかー」
「そうだね。探索者とのやり取りも面倒だからそのまま行こうか」
SGドラゴンを下降させる。
暗い穴の中は、とても静かで魔物が居る気配は無い。
底の方にライトを当てながら進む事数分。
地面に到着。中心に淡く光る転移陣があり、それ以外には何も無い。
SGドラゴンから降りて、地図を作成するが、特に何も無かった。
「ちょっと休憩するかぁ」
「そうだね。いきなり戦闘とか有り得るし」
「そうそう。転移したら離れ離れとかありそうだし」
軽い休憩を終え、手を繋ぎながら転移陣にて転移する。
バシュン__
転移した先は、小さな泉がある小部屋。
小部屋から出ると通路が二つあり、左の道は真っ直ぐ続く通路。右手の道は扉が見える。
とりあえず扉が気になったので開けてみると、広い円形ホールの中心に魔物の姿。
≪悪魔11式・ロストデーモン、クラス7、強さ25874≫
「いきなりボス?」
「え…クラス7ですか?」
この階の地図を作ってみると、魔物の奥に階段がある。
魔物を避ける場合は、遠回りすれば階段に行き着く様だ。
「近道を行くならボスを倒せって事か。しかも宝箱はこの部屋からしか行けない場所にある」
「じゃあ倒すんだね」
「うわ…俺緊張してきた…」
「が、頑張ります」
「じゃあ…パワーレベリングでもやるかぁ」
人知れずのダンジョンアタックが始まった。