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流れの武器屋  作者: はぎま
ニーソの街
12/163

深紅の豚2

 

 赤黒く染まるクリムゾンオークは雄叫びを上げた後、深呼吸をする様に息を吐く。


 潰れた右目からは既に血は流れておらず、左目が鋭くトトを睨み付けていた。



「赤い斧が無いから爆風は無いけど…この威圧感。クラス3はこんなに強いのか…」


 実際にはクラス4の魔物だが、トトには知る由も無い。


 相手が動いていない硬直した状態。隙を見て軋んだ身体を回復する為に、ポーションナイフを押し当て治療する。


「治りが遅い…刺した方が効果あるかな_っ痛くない。刺した方が回復力が高いな」


 腕に刺してみると、回復効果が違う。これ幸いと軋んだ部分にツンツン刺していく。



「ブルルルルル!」

「…来るか」


 クリムゾンオークは_ガンッ!_拳を打ち鳴らし、小細工は無用だとばかりにズンズンと歩き出した。



「今度こそ捕まったら死ぬ。あの変色は…恐らく防御特化。まずは…」


 走りながら鋼鉄の槍を取り出し、隙を見る。一点集中で突けば貫ける自信はあった。


 クリムゾンオークが拳を振りかぶりトト目掛けて殴る。


 殴る動きが早い。足に力を入れて加速。


 ドンッ!トトが躱した後の地面を殴り付ける。

 小さなクレーターが出来上がっていた。


「うわ…食らったら骨砕けるぞ…」


 殴った後の前傾姿勢。

 伸びた腕目掛けて「そこ!一点突き!」_ザクッ_「くっ浅い」


 槍の先は刺さったが奥まで行かない。


「ブルル」


 かすり傷程度。出血も無く、傷は直ぐに筋肉に埋もれる。


 クリムゾンオークは傷を気にせず攻撃体制。


「硬いなー。でも数撃ちゃ弱るはず!」


 ドンッ!トトが避けて地面に衝撃。

「二段突き!_ザシュ!ザシュ!「_ッブオオ!」よし!」

 突き出した拳、指目掛けて突く。


 クリムゾンオークの小指と薬指を貫き、トトはバックステップで後退。


「ブルル!」


 指を貫かれ、痛みに耐える様に右手を振ってグーパーしている。しかし手に力が入らない様子で顔が歪んでいた。


「この調子。集中を切らすな。気を抜いたら殺られる」


 ふぅーっ、と息を吐き、流れる汗もそのままに集中していく。


「来いよ」


「ブルル…ブガァ!」


 中々仕留められない苛立ちなのか、ドンドンと地団駄を踏み近くにあった小屋を力任せに蹴る。


 ドカッ!「うおっ!」破片が飛び散りトトが怯む。


 クリムゾンオークが好機と見たのか、次々と小屋を蹴り破片をぶつけてきた。


 ドン!ドン!ドン!ドン!「ブオオ!ブオオ!」


「うおっ!子供かよ!ハンマー!」


 バラバラと破片が舞い、大きな破片はハンマーで弾く。

 気を抜くと近付いて来るので走りながら躱すが、次々と襲ってくる破片に疲弊してくる。


「はぁ、はぁ。いつまで闘えば良いんだよ…逃げたらきっと街まで追ってくるし…」


 現状の問題は確実に仕留めるレベルが足りない。



 ドン!ドン!「くっ…仕方ない。使うか」


 一目散にダッシュ。クリムゾンオークから離れる。


 追ってくるのを感じながら全力疾走。



 ぐるぐると回りながら、やがて50メートル程離れた所で。


「やっぱりこれしか無いよな!赤い斧!」


 ドンッ!クリムゾンオークから奪った、2メートルを超える長柄の赤いバトルアクスを出す。


「重たっ!これを!一番レベルの高い鋼鉄の剣と合わせて!」



 赤いバトルアクスと鋼鉄の剣を合わせて集中する。



「_っんあ?なんだ?この感覚…」



 バトルアクスと剣を合わせて強い剣を作成しようとしたが、いつもと全く違う感覚。



「教えて、くれるのか……_っ!はははっ!すげえな!」



 最適な形を教えてくれる。魔武器に意思があるのか分からないが、トトはこの赤いバトルアクスに感謝を込める。



「武器作成!」



 鋼鉄の剣と、赤いバトルアクスが輝き合わさる。そして、赤い光が立ち昇った。



「ブオオ!ブオオ!ブオオ!」


 逃げようとする存在を追いかけ、怒りに燃えるクリムゾンオーク。


 赤く光り出したが構わず拳を振りかぶり。


 渾身の一撃。


 ガンッ!「ブモオ!?」


 確かに直撃した。しかし鋼鉄の壁を殴る様な、押し負ける拳。


 ガンッ!ガンッ!ガンッ!

 目標目掛けて殴る殴る。しかし硬い。


 その時、_ボンッ!_「ブギャァ!」_クリムゾンオークの右手が爆散した。



「…なっちゃいないねぇ。終わるまで待つもんだろ」


 先程とは違う落ち着いた、重みのある声が響く。


 スラリとした曲線を描くフォルム。


 顔は見えず、表情を伺う事は出来ない。


 右手に持つ斧は、身長程の長さ。


 熱を発しているのか、ゆらゆらと陽炎が見てとれる。


 赤いオーラを纏う深紅のフルプレートメイル。




「ブモオ!ブモオ!」


「武装…爆炎の戦士。っていうんだって。…痛くて聞いちゃいないか」


 爆散した右手を抑え、荒い息で睨み付けるクリムゾンオーク。


「この鎧は全身が武器なんだってよ。よく分からないけど防具という括りじゃなくて、兵器という扱いかな」


 淡々と喋りながらクリムゾンオークに向かって歩く。


 得体の知れない強さを持ったトトに、少しずつ後退していく。



「慣れてないのかこれ凄く疲れるんだよ。だから、次で決める」


 斧を両手で持ち、力を溜める様に集まる赤い光。



「ブオオオオ!」


 クリムゾンオークも終わりが近い事を悟ったのだろう。力を左手に溜めていく。ボコボコと筋肉が迫り上がって肥大する左手。



「ブオオオオ!」

「行くぞ!爆炎破斬!」


 ボオォン!激しい爆発と衝撃。


 粉塵が舞い、その音は遠くの街まで響く爆音。


 街の者が恐れを抱く程の衝撃が響いた。





「……」



 粉塵が晴れ、静寂が支配する集落跡地。


 中心部には10メートル程のクレーター。


 そこには、武装が解け斧を杖替わりに立ててフラフラしているトトと。


 胴体が吹き飛び、上半身と下半身が別れたクリムゾンオークが絶命している姿があった。




「勝った…」



 へたっとその場に座り、空を見上げる。太陽が真上に昇り、トトを祝福する様に輝いていた。


 ポーションナイフで回復しながら、斧を収納し、クリムゾンオークを収納する。


「…帰ろう。…あっ、あの女の人無事かな?」


 行っても女性は逃げ出しており、居ないのだが、それを知らないトトは探しに行こうとフラフラ歩き出した。



「明日は、休もう。ちょっと身体が痛い」



 フラフラと歩き、女性を木に固定した場所へ。

 幸い魔物は先程の闘いで逃げ出しており、遭遇する事は無かった。


 少し回復したトトは木を確認。


「あれ?居ないなー。ロープが解けてその場にあるから、脱出したっぽいな」


 一応確認の為に辺りを散策する事にした。



 そのお蔭か、爆音を聞き集落へ向かった調査団と入れ違いになる。


 調査団は集落跡地にクレーターを確認したが、警戒していたオークの上位種の姿を確認出来ず。


 謎の爆発事件として取り扱われる事になった。



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