お城へ。
「兄ちゃん…兄ちゃーん」
「…ん…んん? ノーレン…どした?」
「来たんだよ…国の使者」
「あぁ、そうなんだ。何て言ってる?」
「城に来て欲しいって…今姉ちゃんが対応してる」
「了解…」
トトはノーレンに起こされ、適当に着替えて入り口の方へ。
入り口に到着すると、高官とみられるピシッとした服を着た男が立っていた。
トトを見て、ピクリと眉が動く。
鑑定をして、あまり強くない事に疑問を持った様子であまり良い印象を持っていない。
「…君がトハーシ殿か?」
「こりゃどうも。俺も付いて行って良いです?」
「…ノーレン殿を呼ぶ様に言われている。君は呼ばれてはいない」
「ふーん。俺もノーレンの保護者なんだ。今後を交渉するなら俺を通さないと不義理じゃねえか?」
「…解った。掛け合ってみるが期待はするなよ」
少し面倒そうにしながら、高官の男は付いてこいと言う様に黒塗りの馬車を示す。ノワールは留守番で家に残り、トトとノーレンは馬車に乗り込んだ。
「トハシさん…お気をつけて。あとノーレンもね」
「ちょっ…ついでみたいに言わないで」
「行ってきますね。ティラちゃんが来たら…城に行くから絶対に来るなと行っておいて下さい」
「はい、伝えておきますね」
ノワールに見送られ出発。野次馬などがノワールに話を聞いているが、適当に笑って誤魔化している様子が見えた。
馬車の中は高官の男とノーレン、トトの三人。凄く微妙な空気に、ノーレンが落ち着かない様子でキョロキョロしている。
トトは寝起きなので、だらんとしていた。
「あっ、ノーレン。最近色々ありすぎて内容忘れたんだけど…纏めて」
「えっ、纏めてって言われても…」
「…私が纏めよう。クラス6に襲われていた隣国ギアラチェインの公爵家…ルーデバルク家の馬車をノーレン殿が救ってくれた。是非ともお礼をしたいという公爵家に、我が国も立ち会うという形だ」
「どういう予定で進むの?」
「先ずは着替えて貰う。それから王に謁見。その後は公爵家も交えて会食の予定だ」
予定を聞き、少し考え込む。
謁見の際に恩賞だとか今後の事を押し付ける予感がした。
「…恩賞は何を?」
「…騎士爵が妥当だな」
「だよなぁ。断る時はどうするの?」
「…その場で断るしか無い。出来ればだがな」
「なるほどねー。教えてくれるなんて、役人さんは話が解るねぇ」
高官が訝しげな目でトトを見る。本当に断る気なのか?という目だ。トトはその視線に笑顔で答え、高官が少し嫌そうな顔をした。
黒塗りの馬車は城へと入っていく。
そして、着替えさせられたトトとノーレンは謁見の間に到着する。
「俺も来て良いって気前良いなぁ…ってノーレン大丈夫か?」
「なっ、なんで兄ちゃんそんなに平気なんだよぉ…緊張して…俺…」
「まぁ俺は、神と接する機会の方が多いからなぁ」
「…もしかして兄ちゃんって王様より偉い?」
「いや?ティラちゃんと結婚したら偉くなるけど、現状は平民より下の身分だぞ?」
「もう無茶苦茶だよなぁ…あっ少し楽になった」
______
馬車が行ってしばらく経ったアーラ家では、ノワールが落ち着かない様子で家でゴロゴロしていた。
因みに収納出来ない破壊神剣は、城へ持って行くと大変なのでアーラ家に黒色宝箱を設置し、鍵を掛けて封印してある。
「はぁー…今頃美味しい物食べてるのかなぁ…私も行きたかったなぁ…」
コンコンコンコン__
「ん?はーい」
扉をノックする音が聞こえて、ノワールが出ると…
『__邪魔するでぇ!…ん?ノワールちゃん!やす兄ちゃんは!?』
「あっ、お城へ行くから絶対に…」
『__おっ!城やな!ありがとん!』
「_あっ!ちょっ!……行っちゃった」
少し焦った様子のテラティエラが来訪。嵐の様に去って行った。
その様子を呆然と眺めるノワールは、次に来た来訪者に顔を引きつらせた。
『どうもぉー。今テラがここに来たわよねぇ?』
『何処に逃げたか教えてくれねえか?』
『大丈夫、悪い様にはしないから』
青、赤、緑の美女が現れ、ニコニコしながらノワールに詰め寄って来た。
これは逆らったらいけないと本能が告げている。
「お、お城へ…行き…ました」
『お城ねぇー、ありがとぉ』
『城か。礼に俺の加護をやるよ』
『テラって逃げ足だけは一流よねぇ。ありがとうノワールちゃん』
「……」
キャッキャウフフしながら青、赤、緑の美女は城へと向かう。
ノワールは美女達が去った後…その場にペタリと座り込んだ。
「これは…とても不味い…どうしよう……寝よう…うん、そうしよう」
フラフラと立ち上がり、扉を閉めて寝室へ。そのままパタリと横になる。
きっとトトならなんとかすると言い聞かせて…