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流れの武器屋  作者: はぎま
アヴァロ大陸。
117/163

海底神殿へ……

 夕方、目が覚めたトトはテラティエラが居ない事に首を傾げる。

 テントの外に出ると、ノワールがお茶を飲みながらボーッとしていた。


「ノワールさん、おはようございます。ティラちゃん見ませんでした?」

「おはようございます。テラティエラ様は…天上に行ってくると言って出ていきました」

「そうですか。まぁ、その内来ますよね」


 出掛けても書き置きを残せば良いと思ったので、予定通りに事を進める。

 海底神殿、浮遊城、試練の遺跡の何処に行くかだが…


「ちょっと、どんな所か確認してきます」

「はい、気を付けて下さいね」


 三種類ある転移石の、帰還用転移石を設置。


 最初は海底神殿に行ってみる事に。


 バシュン__




 転移した先。

 何か神殿の様な場所の入口の中だった。

 前方には、壁の代わりに滝が流れる真っ直ぐ伸びた通路。

 後方には、水で出来た扉。向こうが透けており、暗い海の底と思わせる場所が広がっている。


『ザ・海底神殿って感じだね』

「まぁな。ちょっと行ってみるかぁ」


 滝が流れる通路を歩く。

 滝の落ちた先は、真っ暗で見えない。

 地図を作ってみるが真っ直ぐな道が続き、滝の向こう側には何も無さそうだ。


 少し湿った床を歩くが、不思議と滑らない。

 滝から何か出そうな雰囲気に、少し警戒しながらしばらく歩くと、水の扉に到着した。



「ここってダンジョンじゃねえな」

『そうだね。なんというか、いつもと違うし…何の施設だろ?』


 扉に触れてみると、そのまま入れそうだったので扉をくぐる。

 扉の先には、大きなホール。奥に何個か扉があり、中央には大きな噴水がある。

 とりあえず噴水に近付き、鑑定してみる。


≪深海の噴水、ランクーー≫


「この噴水の水…強い力を感じるな」

『青い刀に合成してみたら?』


 極光刃を取り出して、水に浸けて合成してみる。


「おー、すげぇ。力が上がってる」


≪極光刃・新水氷霧、ランクーー、極光ーー、攻撃ーー、水の理・氷の理・水化・極光刀技・海の証≫


「ん?海の証ってなんだろ?」

『なんだろうね?』


 極光刃に海の証が増えていたが、よく解らない。

 首を傾げながら噴水を通り過ぎ、奥の扉の前に到着。

 木で出来た渋い扉には、何かが書かれていた。


「……なぁタケル」

『……うん、言いたい事は解るよ』


『アクアマリンの部屋』と書かれた扉。

 もう嫌な予感しかしなかった。


「ここって…女神の家?」

『…うん。…多分』


 この先の行動で、色々な面倒が降り掛かる事は間違いない。

 触らぬ神に祟り無し…ここで転移石を起動するのが最善だが…


「…タケル。ちょっと会ってみたい」

『まぁ…帰還は直ぐに出来るから、良いと思うけど…闘いになりそうだったら逃げる…オーケー?』

「…ラジャ」



 コンコン__


『_はぁーい。どちらさまぁ?』


 ノックをすると、扉の向こうから女性の声がした。

 少し緊張しながらも、トトは返事をしてみる。


「_通りすがりの者です。何も言わずに帰るのは、失礼かと思いまして…ご挨拶に来ました」

『あらぁ、迷い込んだのかしらぁー?入って良いわよぉ』


 ガチャリと部屋に入る。



 中は青を基調とした落ち着いた部屋。

 その中央にテーブルと椅子があり、青いドレスを着た女性が座っていた。

 水の流れの様に、ウェーブの掛かった青く長い髪。綺麗な海の様な青い瞳。白い砂浜の様な肌。

 優しそうな顔立ちで微笑む美女の姿があった。


「…初めまして、泰人と言います」

『私はアクアマリン。私に会いに来たのぉ?』

「いえ、知らずに転移石で来ました。扉にお名前があったので挨拶をと思いまして」

『ふぅーん。そうなのぉ?……ねぇ、私の人形持ってる?』

「人形?まぁ、持っていますが…」


 アクアマリンの人形は二体。貝殻バージョンとブルークリスタルバージョン。

 持っていると聞いたアクアマリンの目が細められる。

 トトは少し警戒しながら、転移石を握っている。


『何体?』

「…二体、です」

『ほっ、良かった…二体ねぇ。ねぇ泰人君、譲ってくれたら加護をあげるわよぉ?』

「ん?どういう事です?譲る?」


 トトは首を傾げる。

 女神人形は女神が集めている物なのかと。


『ちょっと集めているというか…まぁ…必要なのよぉ』

「えっ、でも…俺、コンプリートを目指したくて…」

『_それは駄目!』

「_へ?」

『あっ、大きな声出してごめんねぇ。でもコンプリートは駄目よぉ?本当に駄目よぉ?だから、譲ってくれないかしらぁ?』


 アクアマリンの圧力が怖い。

 そこまでして集めている理由が知りたいが、答えてくれそうに無い。

 今度テラティエラに聞いてみようと思うが、今は目の前の問題だ。

 正直譲りたくないというのが本音。

 だが譲らないと力付くで来る確信がある。


「あの、一体だけじゃ駄目ですか?」

『……』


 妥協案を示してみる。

 アクアマリンは悩んでいる様子。


『…どんな奴?』

「…ブルークリスタルバージョンです」

『レアねぇ…良いわぁ。それで手を打つ』

「…はい。あっ、でも加護は遠慮しても良いですか?」

『んー?なんでぇ?テラの加護があるからぁ?』

「ん?ティラちゃんの加護?」


 不安になって自分を鑑定してみる。


≪トト、武器師、強さ5、テラティエラの加護≫


 確かに加護が付いている。

 いつ付けられたのかは解らないが、テラティエラなら良いかと思ってしまう。

 しかし、複数加護が付いたらと思うと怖いので遠慮したい。


「まぁ、テラティエラ様の加護があるので…すみません」

『そぉ。仕方無いわねぇ。でもいつでも言ってねぇ。直ぐに加護を付けてあげるからぁ。変わりにコレあげる』


 真っ赤な宝石をくれた。

≪血赤魔珊瑚、ランクS≫


 そして、ニコニコしながら手を出して来た。

 トトは心の中で涙を流しながら、収納からブルークリスタルバージョンを出し、アクアマリンに渡す。


「…はい。じゃあ、また会う機会があれば」


 トトは転移石を起動。


『またねぇー。あっ…もう一つは、どんな奴なのぉ?』

「あぁ、貝殻バージョンです。では」

『_えっ?』


 バシュン__


 アクアマリンが何か言い掛けていたが、気にしない様にしてアーラ家に帰還した。


「トハシさん、お帰りなさい。どうでした?」

「あー…海底神殿は無しです。次は浮遊城…浮遊城…かぁ…」

『泰人…浮遊城ってもしかしたら…風の女神が居そうだね』

「…はぁ…でも行ってみない事には…よし!行ってきます!」

「あっ、はい、行ってらっしゃい?」


 バシュン__



 転移した先、どこかの城らしき建物の入口。ホールになっており、階段やら扉などが沢山あった。

 後ろには大きな扉。

 開けてみると、ゴォォォ!_と薄暗い外は嵐が起きていた。

 外は少しだけ陸があり、その先は何も無い。イメージ通りの、空に浮遊している城だった。


「天気悪いなぁ…この世界でこんなに天気悪いの初めて見た」

『確かに、この世界は嵐とか災害が少ないね。女神が管理しているからかな?』

「でも魔物の大移動はあるぞ……ん?なんだあれ?」


 この世界で珍しい嵐を眺めていると、遠くに何かが見える。

 見えるというか飛んで来る。


『白い…人…かな?化け物に追われてる?』

「空を走るネコかー。流石は異世界だなぁ…」


 __ドォォン!

 魔物らしきものに追われている白い人影は、別方向から来た黄色い閃光に撃たれトトの方向に吹き飛ばされて来た。

 流石にスルー出来ないので、吹き飛ばされて来た白い人影を受け止める。

 気を失っている様子で、ダランとしている。トトは顔を覗き込むと、少し顔が引きつった。


「__よっと。ん?うわ…ルナライトちゃん…どうなってんの?」

『泰人_来るよ!』


 ルナライトを追っていた魔物がトトに近付いて来た。

 かなり大きい…ネコ。


『__ニャーーートラ!』


≪神獣ニャートラ、ーー、ーー≫


「『うわ…』」


 トトとタケルの声が合わさり、神獣ニャートラが大きな口を開ける。どす黒いエネルギーが収束してきた。


「_よし!逃げよう!」

『ギアメルンは駄目だよ!誰も居ない所ね!』

「_えっ?じゃあ、あっ!秘境にゴー!」


 バシュン!__



 トトはルナライトを連れて秘境に転移。


『__ニャーーー!』

 ドゴォォォ!__

 その直ぐ後にニャートラの破壊光線が浮遊城を貫いた。


 ……少しして、大きな穴の開いた城に降り立った小さな人影。


『…なんやルナちん、逃げたんか。…まぁ…こんぐらいにしたるわ…ほな行くで、ニャートラ』

『_ニャー』


 その小さな人影と、大きなネコは去って行き…


 それからフラフラと舞い降りた緑色の人影。


『…私の…お家が…』

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