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流れの武器屋  作者: はぎま
アヴァロ大陸。
115/163

黄色い閃光。2

 

 トトが顔を引きつらせた瞬間。

 テラティエラが消え、トトの懐に入り手を添えていた。


「_やばっ!」

『にひっ_超武発勁!』


 ドフッ!__

「_がはっ!」

 トトの身体がくの字に曲がる。

 体勢を低くしたテラティエラ。


『さっきのお返しや!__超武昇天!』

 ボゴンッ!__

 鳩尾を狙い済ましたアッパーカット。

 トトの身体が空高く舞う。


「_ぐっ…やべっ…武…まじか」

 トトが空中で武装を展開する前に、テラティエラは更に上に居た。

『しまいや!_超武天墜落!』

 バギンッ!__

 回転しながら空中踵落とし。

 高速で落下し…

 ドゴンッ!__

「__ぐはっ!」

 地面にめり込む。


 肺の中の空気が一気に吐き出され、上手く息が出来ない。

 辛うじて開けた目に飛び込んで来たのは…

 ゴゴゴゴ!__

(…あほか)

 巨大な隕石…と、テラティエラの満面の笑み。



 ドゴォォン!__

 激しい衝撃が大地を揺るがす。

 闘っていた山は消し飛び、巨大なクレーターが出来ていた。



『……あかん』

 少し我に返ったテラティエラは、やり過ぎたかも…と少し焦っていた。

 しかし…


『__なんや!』


 背後にゾクリと何かを感じた瞬間。


 ザシュッ__


『__くっ…』


 テラティエラの左腕が宙を舞った。


 振り返ってみると、血を流しながらもユラリと立ち…青い着流しを着たトトの姿。

 青い刀を片手に俯き、少し息が切れている。


『なんや…それ』

「はぁ…はぁ…武神装…青」


 見た目は、着流しを着た侍の様だが、纏う力が異常に高い。

 高過ぎると言わざる得ない程に…


 テラティエラが警戒しながら落ちた左腕を拾い、くっ付ける。


『…ちょいと洒落にならんなぁ…その強さ』

「言葉を…返すよ…くっ…」


 トトが少しよろけた隙にテラティエラが駆ける。

 右腕を腰だめに構えて飛び上がる。


『_超武大地勁!』

「…霞柳(かすみやなぎ)


 テラティエラの一撃をユラリと躱し、右腕に手を添える。


「_隅落とし」

 ストン_

『_へ?』

 テラティエラが仰向けに転がされ、驚いた顔を見せる。

 至近距離で黄色い瞳と青い瞳が交わる。

 しかし驚いたのは一瞬。

 身体を捻ってトトを蹴り付け、腕をバネに飛び上がり後退。


『くくっ…さいっこうやなぁ!これがウチの本気や!_超武闘気!』


 両手でガントレットをガンッ!と鳴らし、渦巻くオーラを腕に纏う。

 トトも少し苦しそうにしながら、刀を鞘に納めて居合いの構え。


「…来いよ」


 一瞬の静寂。


『__超武・千手神拳!』


 千を超える無数の拳が一つとなり、

 神々しいまでの力を纏った巨大な拳がトトを襲う。

 構えるトトは、ボソリと呟き一閃。


「_極みの太刀」


 シャンッ__


 金属の擦れる音が鳴り、両者はすれ違った。



「…」

『…やす兄ちゃん』

「…なんだ?」

『…ウチの負けや』

「…そうか」


 ガントレットがボロボロに崩れ、テラティエラはパタリと倒れる。


 トトは武神装を解除。

 フラフラと重い足取りで、テラティエラの元へ行く。


「…武神装…まじでキツイな…」


 テラティエラは完全に気を失っている様子。

 今なら逃げられるが、このまま置いてはいけない。


 テントを出して、テラティエラをベッドに寝かせ、トトはソファーにドカッと座った。


「あぁー疲れたー」

『泰人、お疲れ様ー。強くなったねー』

「…まぁな。ただ、まじでキツイ…まさか女神と闘うとは思って無かった…」


 少し休憩し、外に出てボロボロになっている神拳・テラフィストを回収。テーブルに置いて眺めていると、テラティエラが寝返りを打ってぼんやりと目が開く。



「よう、起きたかー」

『…あぁ、そか…ウチ負けたんか』


 ボーッとしながら呟き、のそのそとベッドから起きる。

 そのままトコトコ歩いて、ソファーに座っているトトの隣に座った。

 そして、腕を絡めてピタリとくっ付く。


「…テラティエラちゃん?」

『なんや?やす兄ちゃん。…ん?ルナちんの匂い…』


 トトにくっ付いたテラティエラが、クンクンとトトの匂いを嗅いでいる。


『なぁ…やす兄ちゃん。ルナちんの良い人なん?』

「ルナちん?って…あぁ…いや……やすキュン、ルナたんと呼び合う仲だ」


 とりあえずデマカセを言ってみる。

 テラティエラは少し唇を尖らせているが、信じた様子でグリグリ頭をトトの肩に擦り付けている。

 そして、立ち膝になってトトの肩に顎を乗せ、凝視してくる。

 非常に居心地が悪い。


『ふーん…ウチは何て呼んでくれるん?』

「んー…ティラちゃん」

『…へへっ』

「ティラちゃん、聞いて良い?」

『ええよ』

「悪神…ラグナレヴィアってどんな奴?」

『ルナちんのお姉さんやで』


 あっさりと凄い情報を聞いたトトは少し止まるが、テラティエラは変わらずトトを凝視している。

 何でも答えてくれそうなので、色々聞いてみる事にした。


「何で悪神なんて呼ばれてるの?」

『…堕ちてしもたんや。昔な…みんな仲良うて、ルナちんとラグナはいつも一緒やった。

 やけどある時、この世界に邪気が出る様になった。それを放置しちょると裏の世界と繋がる言うてラグナが邪気を受け持つ様になった…して耐えきれんくなってな…』


 ラグナレヴィアは元々闇を司る女神だったが、ルナライトに闇を譲渡し邪気を受け持つ存在になった。

 裏の世界という物に繋がると、非常に面倒な事態になるらしい。


「それで女神戦争が起きたのか」

『そや。それで色々あって…ルナちんは責任感じてしもてな、ラグナの力を持ってる者には容赦せん様になった』

「…そうか」

『だから…やす兄ちゃん…ルナちんの事、嫌いにならんで欲しい…』

「……」


 それは確約出来ない。

 次また記憶を消す様な事をしたら、世界ごと憎む自信がある。

 今まで抑えてはいたが、無理な物は無理。

 しかし、そんな事を言うテラティエラが気になった。


『…混沌、取りに来たんやろ? …もう、持ってるんか?』

「…持っていたら、ティラちゃんも敵になるか?」

『…ならんよ。持っていて、自我を保ってウチより強いんや。制御出来てるっちゅう事やん。

 …教えてくれん?ウチ、やす兄ちゃんの味方になりたいん』


 テラティエラの言葉を信じても良いものか悩む。

 これで、破壊、混沌の力を見せてしまったら再び殺し合いが待っていそうで…

 少し悩んだトトは、破壊神剣(タケル)と混沌砲を取り出しテラティエラに見せた。


『…なんや、破壊も持っちょるんか。驚いたわ。……凄いやないか』

「…」

『やす兄ちゃんの目的はなんなん?』

「…家に帰りたいだけさ。たまたま、力を手にしただけ」


 女神相手に何を言っているんだろうと思ってはいたが、テラティエラは真剣に聞いてくれた。

 今までの事を話しても、しっかりと聞いてくれた事に安心感を覚えた。


『…そか、もうルナちんと闘ってもうたか。でも、よく生きてたなぁ』

「ボコボコにされて逃げただけだよ」

『そないでも凄いやん。ボコボコで済んでるんやから』

「…そうだな」


 ボコボコ以外にも、記憶を消されているのだが…言わなくても良いと思ったので、混沌砲を仕舞い破壊神剣を背負う。

 その時、ボロボロになった神拳・テラフィストが目に入った。


「ティラちゃん、これもう使わないか?」

『あー…せやな。ボロボロやし…欲しいなら貰ってええよ』

「じゃあ…」


 少し寂しそうなテラティエラを見て、トトは神拳・テラフィストを手に取る。

 収納から、千獣の王・ニャートラを取り出し…調整しながら合成。

 爪と肉球の付いたガントレットに変化した。


≪千神拳・ニャーテラ、ランクーー、千神ーー、攻撃ーー、超破壊混沌爪武、超武神術、ニャートラ召喚≫


『…は?なんやそれ…』

「…ティラちゃん、味方になるって言ってくれたお礼。ありがとう」


 テラティエラにニャーテラを渡す。

 だが受け取ろうとしないので無理矢理持たせた。


 例え嘘だとしても、味方になると言ってくれたテラティエラには、感謝を伝えたかった。それだけなのだが、テラティエラにとってはそれ以上に思えた様で…


『…ウチをもろてくれるん?』

「…え?」

『いや、こな、凄いもん…プロポーズやろ?』

「い、いや…違う…よ」

『そな恥ずかしがらんと…ウチも好っきゃで!やす兄ちゃん!』

「……あの」


 説得という新しい闘いの幕開けだった。


 とりあえず、朝まで掛かった事は間違いないだろう。




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