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流れの武器屋  作者: はぎま
ニーソの街
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深紅の豚

 吹き飛ばされたオークは、1体は絶命し、残る2体は重症を負っていた。すかさず鋼鉄の剣を横凪ぎに振るい止めを刺す。そして直ぐに仕留めたオークは収納。


 左手に鋼鉄のハンマーを持ち、右手に鋼鉄の剣を持つトトはオークに向かって駆ける。


「そうか、それぞれの武器にレベルが付いているから、レベルがプラスされるのか。武器を持てば持つほど強くなる感覚。こりゃ凄え」


「ブヒィ!」「おりゃ!」ズンッ!ハンマーの一撃でくの字に曲がり砕ける骨の音。


 一体レベルは幾つになるんだという疑問はオークを仕留める度に薄れ、闘いに集中していく。



「武技、行けそうだ!二段斬り!_ザザンッ!_「ビヒィ!」」



 1体、また1体と、一撃でオークを仕留めるトトに、オークが恐れを抱き始める。



「これで10体!斬り落とし!」ザシュッ!槍を持つオークを槍ごと縦に斬り裂き仕留めた。そしてオークを収納し、周囲を確認。


「…まだ居る筈だけど、小屋の確認もしなきゃ」


 周囲を確認しながら小屋を確認していく。中には枯れ草が敷かれ、寝床になっている。これと言って何もない小屋が続き、最後に大きな小屋を覗いてみた。


「ここも寝床か。多分ボスの小屋だけど…っと箱があるな。なんだろ?」


 こそこそと小屋の中に入り箱を開ける。中には冒険者の物と思われる武器や道具が入っていた。こういった場合は発見者の物になるので、後で確認しようと思い箱ごと収納に仕舞っていく。


「何人殺されたんだろ?パッと見て5人分はあったと思うけど…_っ!「ブオオォォ!」」


 ドオン!何かが地面に叩き付けられる音が響く。トトは急いで小屋から脱出。そして集落と森の境を見据えた。



「やっぱり、ボスのお出ましか」



 自分の仲間の血の匂いに気付いて、急いでやって来たのだろう。荒々しい息と共に分厚い胸板が上下している。


 普通のオークはオレンジ色。だがやって来た存在は赤色をしていた。まるで怒りに染まっているかの深紅に染まった体毛。


 5メートルを超える巨漢。右手に持つ3枚の刃が付き、中心に宝石が嵌まるバトルアクスが赤く輝いている。



「赤いオークってなんだろ?オークがクラス2だから…クラス3かな?」


 赤いオークはトトの知識に無かった。オークの変異種、クラス3のレッドオーク。しかしトトの前に立つオークは更に上位の存在。


 クラス4。クリムゾンオーク。


 上位職業のパーティー以上でないと対応出来ない魔物が、そこに存在していた。



「まっ、クラス3なら…なんとかなるだろ」


「ブオオォォ!」


 呑気なトトと、怒りに染まった深紅の豚が対峙した。



 ______



「ん、んぅ…_はっ!ここは!確かあたいはオークに…あれ?」


 木に縛られた女性が目を覚ます。しかし周囲にオークの姿は無く、自分の身体が縛られ木に固定されていた。


「誰かが…助けてくれたのか?_っ!」


『グオオォォ!』


「何!普通のオークの声じゃない!_くっ、逃げなきゃ」


 身体を縛っていたロープを解き、一目散に逃げる。


「何だってんだ!くそっ!ブルも居ないし!」



 トトが助けた女性は無事、逃げる事が出来た様だ。誰に助けられたかも分からずに街へ走って行った。


 ______



「あのバトルアクスは厄介そうだなー。あの宝石高そう…魔武器って奴かな?…欲しい」


 のっしのっしと歩いてくる巨漢。近付いて来るにつれて、「あれ?デカくね?」トトの頬に汗が流れて来る。やがて10メートル先で止まったクリムゾンオーク。


 5メートル。2階建ての建物と同じくらいの大きさ。間近で見ると分かる。脂肪ではなく筋肉の塊だという事に。



「いや…ちょっと普通のオークとギャップありすぎでしょ…逃がしちゃ、くれないよねー」


「ブルルル!」


 1つため息をして、周囲を回る様にしてクリムゾンオークの側面に移動していく。


「止まっていたらやられる。右手に斧、右利きなのかな?だとしたら攻撃範囲は絞られる…」


 ハンマーを魔法杖に持ち換え、移動しながら射出。


 ドンドンドン。クリムゾンオークに直撃するが効果は無い。


「ブオオ!」クリムゾンオークが右手の斧を振りかぶりトトの方向へと振り下ろす。


「そんな距離から_って!」

 ドオン!斧が地面に接触した瞬間に爆発「うおっ!あちちちち!」


 周囲に赤い爆風が吹き荒れた。


 砂煙で辺りが見えない。「一旦離脱か_ぐぼっ!(やべえ!)」


 砂煙の中から伸びる腕。トトの胴体が捕まれ、ギリギリと身体を軋ませながら振り回される。


「あが…がぐ…」「ブオオ!ブオオ!」


 瞳を歪ませ、獲物を捕まえた喜びを雄叫びに乗せていた。


「こな…くそ…」ボンボンボン。幸運にも両手は動いた。

 魔法杖で顔目掛けて魔力の塊をぶつけ、握り潰されない様に鋼鉄の剣で手首を突き刺す。


「ブオオ!ブオ!ブオ!」


 クリムゾンオークが煩わしそうに顔を振るう。少し痛いのだろう。顔が歪みトトをブンブンと振り回す。


「うお!あぐっ!(吐きそう)」


 手首を突き刺したお陰で力がゆるみ、握り潰される事は無いが拘束は解かれない。


 グワングワンと頭が揺れる。吐きそうになりながらも魔法杖は必死に振るい続けた。


「ブルル!」クリムゾンオークがトトを振り回すのをやめる。


 意識が朦朧となりながらも、トトは目線を上げると「うわ…」右手に持ったバトルアクスを振り上げる姿。


 死の恐怖がトトを襲う。魔法杖を振り魔力をぶつけるがクリムゾンオークは顔を横に振り弾いた。


「_っ!貫け!」鋼鉄の剣から手を離しクロスボウを取り出した


 バシュン。「ブオオオオ!」右目を貫く。


 激しい痛みに拘束が解かれ「よっしゃ!」酸素を取り込みながら脱出。


 胸を押さえながら息を整える。クリムゾンオークを見ると両手で右目を抑え、もがき苦しんでいた。


「おっ!チャンスじゃね?フックショット!」


 シュン。_カッ_クリムゾンオークが使っていたバトルアクスを引き寄せる。「ゲット!収納!」即座に収納。



「よしよしよし!ざまあみろ豚野郎!これでお前の武器は無い!」


「ブルル…ブル。ブオオオオ!」


 痛みが落ち着いたクリムゾンオークはトトを左目で見据え、激しく怒る。仲間が殺され、仕留められず、武器まで奪われた。


 こんな小さな存在が自分を笑っている。プライドが許さなかった。


「ん?なんだ?」


 両手を交差し唸るクリムゾンオーク。


 そして、深紅の身体が徐々に赤黒く染まっていく。


「え?嘘?何これ?…もしかして…」



 クラス3とクラス4の間には大きな壁がある。


 上級職のパーティーでないと対応出来ない強さを持ち。


 そして、それぞれが有する。特殊な力。


「固有能力?」


「ブオオオオ!」


 赤黒く染まった身体を見せつける様に。


 森を揺るがす雄叫びが響き渡った。



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