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とある異世界転移者の帰還

「本当にこの魔法陣を起動したら元の世界の元の時間軸に戻ることが出来るんだな?」


『はい、マスターを召喚した魔方陣を反転使用する事で発動された魔法の逆の効果を発揮することができます。今回の事を礼に上げるのであれば、マスターが召喚された時間からマスターを召喚する魔法を反転使用するので、こちらからマスターをマスターが召喚された時間軸に送り返す魔法となります』


 俺の独り言に答えてくれるのは、この世界に召喚された時俺に与えられた能力スキル神域アカシック知識書レコード》だ。

 この能力スキルは、所持している物の質問に対して回答するというだけの物だが、このスキルのためだけに俺は召喚された時から命を狙われるような事になった。

 というのもこの能力スキルはこの世界の事に対しての質問ならありとあらゆる質問に答えることが出来るからだ。

 わかりやすい例で言うならば、昨日俺が食べたアイスの味から今まで踏み潰した蟻の数まで答えてくれるし、今、この場所に向かっている敵の数と、その方向までわかる。


「『大いなる火の力よ。現出して我が敵を討て! フレア!!』」


「「「ぐぁぁぁぁぁぁあ!?」」」


 俺の詠唱と魔力によって現出した火の力が不意打ちを企んでいたのか、気配を消して近づいてきていた三人の刺客を葬る。正に「ズル」とか「チート」と呼ぶに相応しい能力スキルだろう。まぁ、色々と弱点もあるから最強と呼べるかは別なのだが。


「······最初は一回撃つ度に息も絶え絶えになっていたのにな」


 召喚された当初の頃を思い出して一人笑う。召喚されてすぐの頃は本当に酷いものだった。魔力を鍛える余裕が出来るまでは、追っ手を追い払うのに魔法を使っては動けなくなり、しばらく休憩を繰り返していた。本当に《神域アカシック知識書レコード》がなければ、俺は今ここで生きて帰るための準備をすることなんて出来なかっただろう。

 ······まぁ、その能力スキルのせいで狙われる事になったんだから感謝するのも少し違う気がしないでもないが。


「『大いなる五つの元素よ。今その力を束ね現出させよ。我が望みは大いなる理への反逆なり』······ん?」


 反転魔法の詠唱を終えて後は発動するだけという段階になって《神域アカシック知識書レコード》が接近してくる存在を知らせてくるが、その存在に俺は眉を潜める。別に敵というわけでは無い。むしろ味方だ。しかしながらここにいるはずの無い味方なのだ。


「おっ、良かった。何とか間に合ったみたいだな!」


 一番最初に顔を出したのは俺が所属している反抗勢力レジスタンスのリーダーであるヴォルフだ。その後ろからもゾロゾロと反抗勢力レジスタンスの幹部達が集まってくる。


「何しに来たんだよ。雁首揃えて······こんなところで道草くってると折角のクーデターが失敗するぞ?」


「はっはっはっ! 俺達が何しに来たのかなんてお得意の能力スキルで確認すれば良いだろう?」


 俺の言葉に高笑いで返してくるヴォルフに少しイラッとしながらも俺は能力スキルを発動する······が、その答えは、


『該当項目なし』


 ───というものだった。これは《神域アカシック知識書レコード》の能力スキルで答えが得られない時に起こりうる反応だ。確かに万能に見えるこの能力スキルだが、それぞれの人間の内部の情報まで読み取ることは出来ない。つまりは、口にも出さず、紙にも書かず、ただ自分の思うがままに行動をすると、その行動に移るまで《神域アカシック知識書レコード》では返答を得られず、どの様な行動をするのかわかったとしても、その意図を知ることは出来ないのだ。


「───んにゃろう。何の相談も無しに自分達の仕事をほっぽりだして幹部全員ここに来やがったってのか······この暇人どもめが」


「あっはっはっ。皆例えこのクーデターが失敗したとしても君を見送ることを選んだようだ。世話になった相手を一人寂しく帰らせるなんてあり得ないからね。最後の見送りくらいはしようと思った訳だ。反抗勢力レジスタンスの仲間が恥知らずじゃないってわかって僕はホッとしてるよ」


 俺の冗談混じりの言葉に笑いながら応じるヴォルフと、その後ろで頷く幹部たち。


「全く······世話になってるのは俺も変わらないってのに」


 事実この反抗勢力レジスタンスがなければ俺も元の世界に帰る事は出来なかったどころか、結局何処かでのたれ死んでいただろう。


「まっ、最後にそんな心配するんだったらお得意の能力スキルでこのクーデターの結果を見てくれれば良いだろう? 君の指示通りにすれば成功するというのは聞いていたのだが······見ての通りここにはリーダーの僕を筆頭に指示通りに動かなかった馬鹿共がいるようだからね」


 ヴォルフの言葉に「ここで失敗とか出たら最悪だな」等と冗談を良いながらもう一度能力スキルを使う。


『·······』


「───ふん、心配しなくてもクーデターは成功するだとさ」


「そうか、それは良かった······っとそろそろお別れの時間かな?」


「あぁ、どうやらそのようだ」


 詠唱によって現出させられた五つの元素が発生させるべき事象を見つけられずに暴走を始めようとしている。そろそろ発動しないと不味いだろう。


「じゃあな! 元の世界でも達者で!」


「あぁ、お前たちも元気でな!」


 最後に言葉を交わしあって、俺は事象を発生させるための鍵言キーワードを叫ぶ。


表裏反転リバース


 その言葉と共に俺はこの世界から帰還した。

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