表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
従順な犬、気ままな猫。  作者: 橋越夏空
1/2

猫じゃらしに疲れる

時々、思うことがある。

欲を満たした後に生じる、人生に対する興味の欠落。

どこからそのような感情が起こるのかなんてわからない。

一時的な感情を安定的にする作業に疲れているのか、単に飽きているのか。

自分なりの答え、それを信じる。他人の意見に補正させることもある。

次第に適当な考え、普遍的なモラルで生きた方が楽ということに気づく。

そうして自分の個性を捨ててきた。周りに同化する能力を得たわけだ。

心のどこかでは、もっと刺激的な出来事が目の前で起きてほしいと思っているわけだが

見物客として、枯渇した感情を何かで満たしたいのだろう。

今まで生きてきた中で、そんな体感をした覚えなどほとんど無いに等しいと思える。


また、僕のダメな感情を凝り固めてしまう癖が出てしまった。

話は変わる。僕は本当に暇すぎて何もしたくないわけだ。

暇との闘いの中で一番犠牲になるのは時間だろう。そう思う。

金もない生活の中で、僕がすることといえば、ネットゲーム。

もっと刺激的でクリエイティブなことをしたいといつも思ってはいるのだが、

最終的に面倒臭いという感情にかき消されてしまうのがオチだ。

いつも通り、ゲームをしていると、ドアを叩く音が聞こえてくる。


??「(トントン)ねえ」


多分、妹だろう。

俺には2歳年下の高校生の妹がいる。顔は可愛い、でも性格は何というか酷いに尽きる。


俺「っなんだよ。今ゲームしてるから邪魔だ。用事あるなら後にしろよ」


そんな言葉を無視して妹はドアを開けて入ってくる。

まあ入ってきてほしくない理由は何個かあるのだが、もう最近では諦めている。

俺の部屋で妹がすることは、俺のベットに寝転がりお菓子を食べながら漫画を

読んだり、ゲームをしたりすることだ。

妹にも自部屋があるのに、わざわざ俺の部屋に入ってくる。

兄である俺がいうのもあれなんだんが妹は容姿はかなり可愛いと思う。

友達だって沢山いるだろうし、異性からも人気は高いほうだろう。

まあこいつの本性は俺と同じインドアオタクなんだが。

他の人間と趣味が合わずに、一番気の合う人間が俺なもんだから

こうやって俺の部屋に入ってきては時間をつぶしているわけだ。

俺はいつも通り好きなゲームジャンルのFPSをやっている。

勿論ゲーム上の俺は強くクランの中でもリーダー的ポジションの立場だ。

VCボイスチャットを付けて連携を取りながら仲間と遊んでいるんだが、

妹の声がヘッドマウス越しにネット空間に流れて仲間たちやオンラインの

臭そうなオタクどもに聴かれてしまうのが何となく気がかりだった。

仲間たちは俺の妹だということを知っているし、妹自身もたまに俺と一緒に

プレイするから良いんだが、ときたま粘着してくる奴らがいるのも確かなことだ。

数ゲーム終えて喉が渇いて何かお菓子が欲しかったからコンビニに行こうとすると

妹が俺の尻に軽くキックした。


俺「何だよ?!」

妹「お兄ちゃん、私にもお菓子買ってきてくれるよね?」

俺「嫌だ、そんな行儀の悪い子には何も買ってこんからな」

妹「じゃあ私も着いて行くから何か買ってよ」

俺「なんで俺がお前の分まで買ってこないといけないんだよ」

妹「この前、ゲームで負けた方が千円差し出すって約束してたじゃん」

俺「クッ..(忘れたと思ったら、ここで持ってきたか)」

妹「じゃあ着替えてくるから10分後ね」

俺「お前ベットの上見てみろ、何かボロボロ食い落したものが散らばってて、はあ..」

わがままでダラシナイ性格、俺も言えたことじゃないが妹は俺より酷い。


コンビニに来た。もちろん妹もついてきたわけだ。

さっそくお菓子エリアの棚に行って物色している。

家から徒歩10分もかからない距離のコンビニに行って帰ってくるだけなのに、

やたらオシャレしている妹、同級生とか友達に会ったときを意識してるのか不明だ。

白いレースの服、膝上10センチのスカート、黒のストッキング。

対照的に俺はポロシャツの上にパーカ、そして洗ってないジーパンだ。

そんな二人が外に出て歩いているとやたら周りの歩行者の視線を感じる。

「何でこんな陰キャ男がこんな可愛い女の子引き連れているのだ?」

そう周囲の人間は思っているのも自然のことで、妹は歩きスマホしながら

自分の身の安全を確保するために、俺の服の袖を掴んで歩くのが癖だ。

早く歩くと袖を強く引っ張るもんだから、最近買ったこのパーカーも既に

よれよれの服と化してしまったのだ。

帰り際、お菓子とアイスとジュースを詰め込んだビニール袋、合計2160円。

うん、確実に1000円以上搾取されているな。

満足してやたらテンションの高い妹、そして財布を空にした俺。


まさに闇のゲーム。敗者は魂を抜き取られる。

こんな生活を俺と妹は日々過ごしているわけだ。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ