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第伍話 「漆黒の悪夢」

a.


「さあ、祭りを始めましょう?」



浴衣姿で水風船を持ったその少女は仮面の小さな穴から私達を猛禽類のごとき鋭い、まるで獲物を見るような目で見つめている!!



「よくも萬茶ちゃんを....!」



「あら?倒したのはあんたらだよ。私はかわりにトドメを刺してあげただけ!! あいつは悪党だったでしょ、じゃあいいじゃん?」




「確かに、萬茶ちゃんは....生かしてはいけなかった。だからって、もう少し待ってあげても良かったじゃない!!」




「うっせ、ばーか!!」




「きゃ!」




茉莉が希里子に近寄ろうとした、その時いきなり地面が爆破し彼女の華奢な体を爆風が吹き飛ばした。



「茉莉っ!」



「一旦....逃げないと、ふらふらする....」



萬茶との戦いで能力を使った代償で、希里子は一時間はまともに立てない。



茉莉も爆風で吹き飛ばされ、全身傷だらけだ、私は強引に希里子を背負い、茉莉の手を引っ張って走り出す。



「適格な判断ね。だけど逃げられないわよ」



と言いつつも浴衣の少女は追いかけて来ない、只じーっとこちらを見つめているだけだ。



「逃げきれるわ....!!」



この調子なら何とか逃げ切れると安堵した矢先にまたしても突然、目の前の地面が爆発した.... やはり奴の能力は爆破させる能力か....萬茶を爆破したし



「下手に動けば、今度はあなたが爆発するわよ」



「この野郎っ!」



気付くと少女がいつの間にか目の前に立っていたので、回し蹴りを放つ。



「おわっ!!あぶね」



私の脚は少女の手にした水風船を破裂させ、水を浴びると見えなくなってしまった。



決して溶けたわけではない、確かに脚の感覚はあるから見えなくなっただけだ



「なによこれ!」



「百合子ちゃんの脚が無くなっちゃった!?」



「違うわ!!透明になったのよ!」



透明....まさか?



「その顔、気付いてゾッとしたって顔ね」



「まさか爆弾を、いや地雷を....」



どうやら希里子もそれに気が付いたようで、冷や汗が首筋に流れ、つんと刺激した。



「透明にしてこの辺りに設置したってわけ!?」



「御名答」



いきなり萬茶が爆裂したのは、見えない地雷を踏んだからだ。そして下手に動けば彼女の二の舞と地雷を踏んでしまう!



「さあ、どうする? 私はさよならするわよ、餓死か爆死か選んでね」



そう言うと、浴衣の裾を翻しながら少女は姿を消した



「くっ....」



「百合子ちゃん、希里子ちゃん。耳塞いで」



「えっ?」



茉莉に言われた通りに私と希里子は耳を両手で塞ぐ、何をする気なんだろうか....?



「はああああ!」



茉莉は右腕に電気を纏い、地面に拳を叩き込んだ....! すると、この世の終わりを思わせるほどの爆音が起こる。



一斉に周囲の地雷が、電流を浴びて爆発したのだ....!



「これで安心して帰れるよ!」



「やるじゃないのよ!」」



「凄い」



誉められてえへへ、と素直に喜ぶ茉莉が可愛いらしい。抱きしめたいなあ!



「あいつが近くまで来てたから、私達のすぐ近くには地雷はないって思ったの」



凄いわ、立派に成長したわね....



「グレート」



「でもあいつ、また来るよ....きっと」



「来ないで欲しいけど、無理かなあ」



「どのみち、また会うことになるよ。あいつは、私達を襲ってきた、アークか能力者か。どちらにしても、倒す」



私は会いたくないけどなぁ、と深いため息をつく。



取り敢えず、茉莉を病院に連れていかないと、爆風に巻き返まれたとは言え能力者だから軽い怪我だけど....




第伍話「漆黒の悪夢」



b.



病院から帰ってくると直ぐさま茉莉と希里子はぐったりとベッドに横たわる



私も疲れてるけど、この二人は今日たくさん頑張ったんだから殆ど何もしてない私は譲らないとね



一応言っておくと、亀子さんの死体は希里子が元の場所に戻した、その後Vatに連絡したらしい....これで後は彼らが処理するそうだ。



「でも結局、殺人鬼たちは見つからなかったわね」



いきなり、蟹食べに行こうジンギスカン!って変な歌が流れてくる。



希里子のスマホの着信音だ、こんな歌が自分のスマホから流れてきたら恥ずかしくないのか。



「うん....あ、連絡」



「なに?」



「はい、はい、本当ですか、では」



プツリ、と電話を切った希理子はちょっと嬉しそうな表情を浮かべている。



「何だったのよ?」



「見つかったんだよ。脱獄したうちの一人が」



とんだ朗報じゃないの!



「何処でっ!?」




「公園の池、死体で見つかった」




「えっ....」




茉莉が絶句する、予想外だ....いや逆に何故、予想していなかった?



アークが襲うのはまともな人間だけではなく、犯罪者も含まれる筈なんだ。



まだアークになる前では、どんなに凶悪で屈強な犯罪者だろうと無力同然....襲われたら逃げきらない限りはひと溜まりもない




「アークになる前に、アークに殺された?」




「それもあり得る、あと殺人者リストに、幼女がいる。もしかしたら」




「あいつ!?」




脳裏に真っ先に浮かんだのは仮面を被った浴衣姿のあの少女!




「さっきの女の子だね....仮面で自分の顔を隠してたのも」




「逆に目立つでしょ、あれ」




「もしかして、それが目的かもしれない」




「どういうこと?」




「Vatの人間も、何人も、殺されたって」




わざと目立つ格好で誘きだし殺害、追っ手を減らす作戦ってわけね。




「でも、Vatの人結構強いんでしょ」




「うん、だけど、それを一人で十人....やっぱり、あいつ、強い」




「でも放っておく訳にはいかないよ!」




「わかってる、ちゃんと戦うから....今度はこちらから探し出して闘うよ」




「とは言っても、勝つ自信はあるの?」




「勝つよ、それが私の使命だから」




希里子の瞳の奥に燃え上がる炎をみた、少し喉が渇いたのでジュースを飲みに一階へ降りようとした時....「残念だが、勝つどころか戦うことすらできねえよ」と言いながら黒いアークが窓から飛び込んできた。



「アーク、だね、あなた。さしずめ浴衣の少女....資料によれば夏目なつめ 鈴音れおんの刺客」




「当たりだ、あの方に言われて貴様らを殺しに来た!」




「あいつの....鈴音の狙いは何....!?」




「百合子、さっきの話を思い出して」




「そっか私達も追っ手だから消して枕を高くして寝ようって魂胆ね!」




「いや違う」




「!?」



違うって....それ以外に鈴音が私達を狙う理由は思い浮かばない。



「楽しみたいのさ、強い奴との闘いを」



「なっ」



「俺にすら勝てん雑魚どもは、あの方と闘う価値すらないわけだ....そして俺は逃亡者の一人!」




「飛んでいる夏の虫って奴ね」




「お喋りはここまでだ、さっさと闘いを始めようぜ!」



「はっ!」



流れるような連続パンチとキックを繰り出すアーク、明らかに今までの奴らと技のキレが違う。



それでもやはり希里子は難なく回避してしまうのだが



「ならこいつを....っ!」




「茉莉には、触れさせない!」



アークは茉莉に狙いを変えたが、希里子が既に庇うように立っているので意味はない。



「やはり、てめえから倒すか」



「はあああ!」



出た、希里子の素早いナイフ捌き! 萬茶には防がれたがこいつは防ぐことすら出来ずに棒立ちだ、一瞬にしてアークはバラバラになる!!



「な....」



「嘘っ!?」



「この程度か?」



確かにアークはバラバラになった、でも瞬時にバラバラになった体が再結合して復活してしまったのだ!



「お前の弱点は予想外の出来事とみた!」



希里子がはっと気付いた時には膝蹴りを腹部に食らってしまい、踞る彼女の頭を掴みあげ、窓の外へ放り投げてしまった。



「希里子ちゃん!」



「こいつも強い....」



「当然だ、強くなければあの方の刺客にはなれんからな。さて」




アークが私達を見る、茉莉を守らないと....茉莉の方が強いけど私が茉莉を守るのよ!




「無能力の雑魚と闘っても楽しくねえ、退けや」




「どかないわよ....例え無能力でも私は茉莉を守る為に闘いを....!」




「退いて百合子ちゃん、私が闘うから....言ったでしょ無理しないでって」




「それはそうだけど!きゃっ」




茉莉が私を押し退けてアークの前に出る、こんな強引な事をするなんて....!




「私は百合子ちゃんが居なくなるのが怖いの」




それは私も同じって叫びたかったけど、体が痺れて声が出せない。


軽く電流を流したのね....わたしの体に....優しい茉莉はこんなことしたくない筈なのに、私が無茶をしたせいで!!



「ごめんね....」



謝らないで....悪いのは私なんだから....



「絶対こいつを倒す!」



茉莉の電気パンチで腹部を貫かれるアークだが、瞬時に穴は塞がってしまった。



「気に入った、大切な者を守る為に強い覚悟を持った目だ!闘いがいがある!」



電磁障壁ボルテック・シールド!」



アークが放つ無数の針を希里子の雷の壁が弾き返すがひびが入っている!!パッと見て九十連発食らっているから無理はないか。



「やるな、だが貴様にあの方と闘う資格はない!」



「うぅ....防ぎ切れないっ!!」



皹の入った部分に十発の針が連続で放たれシールドが割られてしまった。



「きゃあああ!」



「片腹痛いな、この程度であの方に挑むつもりだったとはな!」



刺々しい鞭が茉莉を締め上げ床に叩きつけると、茉莉は床を突き破り一階のリビングに落ちてしまう。



「....り....」



いくら頑張っても体が動かせないし声も出ない。ただ、ひたすら冷や汗が流れるだけだ



「折角だ、貴様の目の前で良いものを見せてやる」



「?」



そう言って笑い、アークは一階に横たわる茉莉を鞭で引き上げ私の眼前に放り投げた。



「っ....!ま....っ!」



息を切らしながら立ち上がる茉莉、もう私を放って逃げてと伝えたいのに....!



「こ....の、百合子ちゃんに手出しは....」



「健気だな。そろそろ終わりだ....汝、罪に焼かれ業苦に溺れよ!」



「うああああ!!」



アークの鞭に滅多打ちにされ刺が体中に刺さる茉莉、心の中で悲鳴をあげたけど何故か血は出ていない事に気付く



「死にはしないさ、カッカッカッ」



「このっ、さっきは、よくも」



希里子が割れた窓から飛び込んでアークに切りつけるが鞭で弾かれる。



「あうっ....私、つまみ食いした、いっぱい、いっぱい!ごめんなさい、ごめんなさい!!」




いきなり頭を抱えて希里子はごめんなさいと呟き始めた。明らかに何時もの彼女ではない、彼女はつまみ食いをしても罪悪感なんか....



いや、心の中では感じていたのかもしれないけど食欲に逆らえずに、ついついつまみ食いをしてしまうのか?




「いきなり何言いだすのよ、こんな時に」



「私のせいで百合子ちゃん毎日苦しそうだよ....心の底から笑えてないよ。うう、ごめんなさい、ごめんなさい」



希里子の次は茉莉が謝り始めた。



「はぁ!?アンタまで何言ってんのよ、あんたが私に謝ることなんて何もないでしょうが!」




「だって私のせいで、ごめんね、ごめんね、百合子ちゃん。私のせいで苦しんでるんだよね」




「ちょっと....二人ともどうしたのよ!?」




これがこのアークの能力か!?



「いっ....」



ベシンと、うつ伏せに横たわり無防備の背中に鞭が叩きつけられる。



「ほう、貴様には効かないのか」



「やっぱり二人ともあんたの仕業ね!元に戻しなさい」



「倒せば戻るさ、しかし効かないのは何故だ」



こいつは罪悪感で支配する能力!?



だとしたら希里子はなんかショボいことに罪悪感を感じてるし置いておくとして茉莉は....私に気を遣わせてるって罪悪感が....最低ね私は、未だに茉莉を苦しめ続けていたなんて。




「さーて、お前からなぶり殺しだ」



「きゃあっ!」



背中に激しい痛みが走る。うう、でもこんな痛みは茉莉の痛みに比べれば....私が彼女に与えた苦痛に比べれば何ともない!



「ごめんなさい、ごめんなさい」



目の前で大粒の涙を流して茉莉が謝っている



「くっ....あなたは悪くないの!悪いのは全部わたしなんだから、謝るのは私....だって私は!!」



やっと声が出せたけれど、未だに体は動かせない。



「なるほどなあ、もう既に俺がやる前からあんたは罪悪感に支配されていたわけか」



「そうよ、私は....私は赦されない、赦されてはいけない罪を犯した!」



「それが何かは知らんが、とにかくその茉莉とかいう女の子に関係があるようだなあ?」




「そうよ....でもあんたなんかに教える義務はないわよ!」




「知りたいなあ、あ〜知りたいなあ!」




「くっ....」



「この痛みに耐えられるのもその女の子の存在があるからだな!」




もはや痛覚すら無くなってきて、私は走馬灯のように過去を振り返っていた....私が茉莉を散々いじめた日々を....



つづく

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