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第2話 事件解決は煙にまかれる【前編】

「それで?探すと言っても目処がついたのか?」

黒い服のお兄さんは、相変わらず淡々と話を始めた。

「そりゃあ、お前この子が見つけたんだからよ。」

ぽん、と肩に手を置かれて僕は戸惑う。

『というか、何でお前が一緒なんだよ??!御頭様の邪魔はさせないぞ?!』

小さな雀さんが相変わらず大きな声を上げてくる。

「ピーチクパーチクわめくんじゃねーよ、雀か?あ、雀だったわ。」

『おっお前~~!!!』

入内雀の様子にげらげらとナガレさんは笑い始めた。


「入内雀、落ち着け!…あまり時間が無いんだろう?」

「さっすが、地面走り回ったんじゃ時間がいくらあっても足りない。というわけで、御頭見習いさん、車の一つはお持ちだろう?」

核心を突いたようにナガレさんは尋ねた。

「やれやれ。」

黒いお兄さんがため息をつくと、おもむろに黒い乗用車が走ってきた。

「上々だ。よし、嬢ちゃん行くぞ。」

『そ!そいつも連れて行くのか??!』

「あったりまえだろ?仲間はずれか?百鬼夜行を目指すヤツが仲間を選ぶのはいただけないぜ?」

ナガレさんはにやにやしながら、入内雀に告げた。

「かまわん、行くぞ。」

「だとよ?乗りな?」

ナガレさんは助手席に誘導した。

運転手はもちろん黒いお兄さんだ。

正直生きた心地がなかったけど、優ちゃんが見つかるならと、その席に座り、シートベルトを装着した。


車は人気のない道を走り始めた。

「何とか暗くなる前に終わらせたいがな。」

ナガレさんが独り言のようにつぶやいた。

「とりあえず、上から探したほうが早いな。」

黒いお兄さんはおもむろにハンドルから手を放す。

「もしかしてこの車ってさっきの…!」

「ああ、すこし揺れるぞ。」

次の瞬間車体は大きく揺れ、空中へと浮き始めた。

「わわわわわわ!!」

乗用車は形を変え、現代では到底見かけることはない牛車の姿になった。

「場所はどこだ?」

「ラグーンリゾートってラブホだ!」

「ラブホ・・・??」

首を傾げる僕をよそに、朧車は空を走った。


日が沈みかけた頃、目的のラブホとやらに到着したらしい。

「あー、本当こういうハデハデしいホテル、いかにもーって感じがする。」

「はではで…いかにも…」

「おい、その人間はどこにいるんだ。しらみつぶしに探すわけにもいかないだろ!」

呆れた声を上げながら、黒いお兄さんは言った。

「任せとけって、ここまで来たら何とか…いや、どーすっかなー建物から人が逃げるには。」

ナガレさんがおもむろに指を顎にあてて考え始めた。

「そ!それなら!火事ってことにしてみたら??避難訓練みたいにみんな外に出るはずだよ!」

僕がそう言うと、ナガレさんは目を丸くした後、嬉しそうに僕の頭を撫でた。

「そうだな!そいつはいいや、だが俺の力だけじゃどうにもうまくいく自信がねえ…。」

ナガレさんはそう言うと、僕の額に自分の額を近づけた。

「あんたの≪神力ちから≫貸してくれ。」

そうつぶやくと、僕の額にそっと口づけた。


次の瞬間、気づいたら僕はラブホという建物の中に居た。


「あの≪神力ちから≫…、まさか!!」

遠くで響いた黒いお兄さんの声が通り抜けた気がした。


(ここ、あの建物?)

声に出したつもりが声にならない。

「そう、大丈夫だ。俺にはわかるからさ。」

ナガレさんの安心する声がした。

「正念場だぞ?お嬢ちゃん、いや秋葉って言うべきか。しっかし良い名前だな 羨ましいぜ。」

(もしかしてナガレさんってお名前ないの?)

「おうよ、こんなご身分だと名前なんてそうそう無いからよ、あこがれなんだぜ?」

笑いながらナガレさんは真剣なまなざしになった。


「でっかい音がなるけど!秋葉は優ちゃんのことだけ考えてな!!」


次の瞬間、辺りが一瞬で煙に包まれけたたましい非常ベルの音が鳴り響いた。

そしてたくさんの人たちの悲鳴と絶叫がしたと思ったら、次々とドアのひらく音がした。


(優ちゃん!優ちゃん!!)


目を閉じたつもりで、優ちゃんの顔を浮かべる。

考えてみたら、あの子は知らない間に大人っぽくなった。

僕には流れていないような、時間の差を思い知った。


僕を見るあの子の瞳が、寂しそうになったのはいつからだったかな…。

それでも僕が大好きだって言ってくれて、同じくらい僕だって大好きで。


(ナガレさん!!すぐ上の階!!)

「任せろ!!」


目的地にたどり着いたとき、扉は既に開いていたようでナガレさんの安心したような息が聴こえた気がした。


「よかった…寝てるわ。」

(本当!!優ちゃん!!優ちゃん!!)

優ちゃんに声が届かない。僕は今、自分がどうなっているのかわからない。

(ナガレさん!!ありがとう…!本当にありがとう…!)


そう言うと、少し意識がぐらりと揺れた気がした。


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