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「さようか。・・・それでは、ちょいとあの童子の様子でも見てみんか?」
「・・・いきなり。何です?」
空は、キクを童子の見える位置に連れて行きました。
そこに隠れる為のものは少なく、下手をすれば実体化してるかも知れない空は見つかるのかも知れない。
でも、空は物陰からでて、自分の姿は見えていないという事に賭けにでました。
「なむさん・・・」
そして、堂々と童子の前にでてみたのです。
すると。
「ねえ、雪女こっちに大きい蛙がいるよ。見にきてー?」
童子は空とキクの前を素通りして、真っ直ぐ蛙のほうへ向かいます。どうやら童子には見えてない様です。
「これ。薬王丸。蛙にちょっかいださんようにね?」
「うん。わかったー」
空は雪女という名を聞き、その人のいるであろう方向を向きました。
すると、社の直ぐ側に若い女が立っていました。
そして、薬王丸と言われる童子は、蛙の側まで行くと、座りこんで、ただ蛙の姿を眺めていました。
また、雪女と言われた人も、姿が見える位置にいる空とキクに、一向に声をかけて来ません。
それで、雪女と薬王丸という2人には、自分達の姿が見えていないと思った空は、キクと一緒に
今日一日2人の様子を見るように言ったのです。
するとキクは、木の陰に隠れて様子をみます。
そんな中、雪女と薬王丸は、なにか手拍子を合わせて歌を歌ったり、裏の林の木の枝を折り、地面に文字を書いたりしました。
するとそこへ、もう一人の男の子が現れました。
「兄上さま!」
薬王丸が、嬉しそうに声をあげます。
それから、追いかけっこなどをして遊びます。
この時、この二人はキクの直ぐ横を通りましたが気づきません。
それから、暫くすると、雪女に呼び止められた二人は、社の中に入って行きました。
キクはそれについて行きました。
ただ、この時雪女が、周囲をみて回りましたが、特に何もなく安心した様子で社にはいりました。
それから、雪女は二人に読み書きをさせていました。
その様子を、キクは社の壁をすり抜け、三人の側に座り、じいっと見つめます。
その読み書きも終わった処で、薬王丸が言いました。
「兄上さま。まるは、これからも勉学に励んで、大きくなったら全ての衆上を飢餓や疫病から救い
たもう思います」
「薬王丸や。左様か。期待しちょるぞ」
薬王丸の兄が薬王丸の肩を軽く叩いて期待をこめる。
薬王丸は嬉しそうに笑いました。
少しして、雪女が言いました。
「薬王丸や。わぬしは、魑魅魍魎からもこの世界を救える世にしないとねぇ。その為にも沢山勉学に
勤しむのですよ?」
「はい。雪女。わかってたもう」
薬王まるの返事に、雪女は微笑みました。
そして、薬王丸の直ぐ近くにいるキクの方へ顔をむけました。
実は、雪女には薄っすらと空とキクの姿が見えていたのです。