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そんな悩みが空の頭をよぎった時に、キクがあることをしている男の様子をみて
言ってきた。
「空さま。あの村人はいったい砂をほじったりして何をしてるんでしょうか?」
そう言われて空が男の様子を見ると、その男はどうやら村のリーダー格の男の様であり、周りに指示をしている事も
あって空は興味を持ち、その男の
心を読む事にした。
そしてその男は手元をなにやら黒い石を持ち、それを転がして砂をくっつけている。
その石に、黒い砂粒が付いてきて、それをつぼに落として集めていた。
男が何のために必死になって黒い砂を集めているのか。
その心を読んだのだ。
そしてそれを知った空が答える。
「ああ。あれか。あれは砂鉄を採っているんじゃよ」
「さてつ?」
「砂鉄を沢山集めてから火にかけて溶かすと、鉄の塊になるんじゃ。それで刀をつくってたり、わぬし
が捕まった鉄製の罠などに変化するんだよ。
どうやらここの村人たちは、魚が捕れない時は鉄で何か作って売る事を生業としてるみたいじゃな?
それをあの男が率先して村人を動かしている」
「ふーん?」
キクの返事は素っ気無かった。どこかつまらなそうにしているキクをみて、空が次の行動をとる。
「ほいじゃ、次のところへ行くか」
「何処に行くのですか?」
「黙ってついてまいれ」
「はーい」
空は、男の熱い気持ちの原動力となる物が存在する場所へ、キクを連れていく。
その途中でキクがあるものを目にし、うわっ。と短く叫んだ。キクの見たそれは、青コケの生えた白骨
遺体であった。
その様子を見た空。
「どうしたのだキク?人間の骨に驚いたりして?」
「驚きますって!人間が死んで、そのままになっているんですから」
「キクよ。よく聞き。実はな、ほんの一年前。この地で疫病が流行したんじゃ。それと同時に飢饉
にもなって。沢山の人が死んだのじゃよ。それで、手がまわらずにそのままにされたんじゃな」
「むごいことがあるものですね」
それから程なくしてその場所に着いた。
「さあ。着いたぞ。お寺じゃな。ここは」
「おてら?」
「そうじゃ」
其処は小高い丘になっていて、木で組まれた階段があった。
空とキクは階段を上がる。
そして階段を上がり切ってほんの少し周りをみる。するとキクは、直ぐに少しの違いに気づいた。
「やや!空さま。ここには鳥居が在りません。それどころか屈強な男の像があって雰囲気もどこか違いますね」
「そうじゃな。ここは仏さまのいる場所じゃから」
「仏様?神様じゃなくて?どうして?」
きょとんとするキク。
「話せば長いことながら。神様は森とか農作物、その実り。自然に対して願い、感謝を捧げる所じゃ。
それに対してお寺は。釈迦とかいう人が起源で、人間の死後の世界を説こうとか、安らかな死を迎え、
極楽浄土とかいう人間の理想の地へ赴くためにあるのじゃ。
しかも日本に古来から在るのではなく、外国から入ってきたのが仏教じゃ。
かいつまんで言えば、こう成るな」
「じゃあ、死んでこうなってるあたいは何なんですか?」
「もののけじゃが?」
キクの質問にきょとんとする空。
「そうじゃなくて、死んでその極楽ナントカに行けてないあたいはどっちかと」
「ほう。属するのはわらわもキクも神社になるな」
「神社なんだ」
「そうじゃよー?自然に生まれ、そして自然とともにそのまんま生きてきたじゃろ?
だから、神社なのじゃ」
「ありがとうございます。なんだか分かった気がします」