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「本当だとも。最初は悩むだろうがじきに慣れるよ。その理由を教えようか?」
「はい。知りたいです」
「ふむ。さようか。それはな?最初は霊体であるもののけ。つまりわらわたちは「無に近い」の存在なのだ。
しかし、こうして意識して考える力だけは持っておる。その意識を鍛錬する事で外界のものを体で触れることが
出来る様になってくるのじゃ」
「それじゃあ、野いちごを食べることも出来る様になるのですか?」
「一応はなるがな。それはわぬしの鍛錬次第なのじゃ。食えるようになるのが早いか、遅いか?それは
わぬし次第という事じゃ」
「がんばります!」
キクはふんっと息をはいて踏ん張った。
それからー。
空による、キクへの鍛錬が始まった。
それは、自分の持つ霊力を高め「無から有」へと変化させる方法だ。
「ではキク。先ずはその木の枝を折ってみんしゃい」
「どうやればいいんですか?」
{んー?ただ、その枝をみて「折れろ」と念じてみい?」
「はい!」
キクは目を枝にむけ、ただひたすらに折れるように念じた。すると直ぐに枝が揺れ始めたが、いつまで経っても折れる気配はない。
やがてキクは疲れて念じるのをやめた。
「出来ないよー」
そう言って泣きべそをかくキク。
「まあ、そう泣くな。初めてであれだけ枝を揺らせるなら上出来じゃぞ?わぬしなら出来るぞ?」
空はそう言ってキクを慰めた。そしてこの時、空はキクに対しての能力の素質を感じとり、その素質を育ててみようと考えた。
「なあキク?」
「はい?」
「わぬし、わらわと行動を共にするのじゃ。霊力もまだ未熟じゃし、わらわについて旅をしながら修行をせい。さすれば野いちごを食らうことが出来るのも、そう遠い話では無くなるぞ?」
「はい!ついて行きます」
キクは速攻で答える。
「良い返事じゃ」
空はキクの答えを聞いてにこやかに微笑んだ。
「しかし何じゃな?出雲を目指すのも良いが、それは置いといて、ここは一つアレを使おうかな?」
空か少し悩む。
「うーむ。・・・そうじゃキク。なるべく大きくて真っ直ぐな長い木の枝を探してまいれ」
空はキクに直ぐ側の林を指差し、枝を探させた。
そしてしばらく後。
「持ってきました」
キクは自らが探した枝を空に差し出す。
そして空はその枝を持って確かめる。
「なかなか良い枝じゃ。えいっ!」
空はそう言うと、枝を天高く垂直に放り投げた。
そしてその枝は間もなく地面に落ちて倒れる。
「よし。この方角じゃな。天の神様の言う通りにしよう」
そして、空とキクの二人?による宛のない旅が始まったのです。