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キク -幼少編ー  作者: 麻本
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2

その変化に気の付いた狐の霊は、すっくと立ち上がってみます。

前の腕を、もちあげると、人間と同じ手が見えました。

「・・・!」

その様子を見ていた、人型の妖怪が言いました。

「おやおや。変化してみれば。髪は金色。随分若い娘に。生娘じゃな。お主は早死にしてもうたんじゃな。

1年も生きられなんだか。まあ、よいわ」

この事に答えようとする狐。

「あのっ!」

自然と言葉がでた。その事に、狐自身がびっくりする。

しかし、何か礼を言おうと狐は必死だった。

「あのっ!どなたか知りませんが蘇らせてくれてありがとうございます」

「礼には及ばぬよ。しかし何だ。ちゃんと喋れるではないか。お主、名前はなんと申す?」

「名前?名前ってなんですか?そんなものは知りません」

「ははっ。名無しの権兵衛か。ならば、わらわが名を授けようかの?」

そう言いながら、人型妖怪はあたりを見回す。

すると、その場所には黄色い菊が咲いていました。

それをみた人型妖怪は、狐の髪色が金であることもあり、黄色が近くも感じたので、そのままつけることにしたのです。

「そうじゃ。お主はキク。キクと名乗るがよい」

「キク、ですか!ありがとうございます。それで、お姉さまのお名前は?」

「わらわはくうだ」

「空様、ですか」

「ああ。そう呼ぶといい」

「あ、あのっ!」

「今度は何じゃ?」

「あたい、無念があって。そのお。野いちごをお腹いっぱいたべたくて」

「あはは。女子なのに、食い意地の張った奴じゃ。残念だが、野いちごを食う事は出来ぬよ?」

「何でですか?」

「少しは考えてみんしゃい?わぬしはもう、生きてはおらん。もののけになったのじゃよ。じゃから、お腹は空かぬし、人間なんかよりずっと素早く動ける。特に不便はないぞ?」

「信じれません」

「そうか。ならばわらわについてくりゃれ。何故なのか教えたもうぞ?」

そう言うと、空と名乗る妖怪は、ある方向へゆっくりと歩き始めます。

そこにまた、キクは黙って付いていきました。

「さあ。着いたぞ」

空にそう言われ、辺りを見回すキク。

「あっ!ここは」

キクが目にしたのは、生前、好んで食べていた野いちごが生えていた場所でした。

そして、その近くには新しい罠が仕掛けてもありました。

「キクや。先ずはその罠に触れてみい。何も起こらないから」

「はい・・・」

空に促され、おそるおそる罠に近づくキク。そしてキクは、手で罠に触れてみました。

すると、何も起こりません。手が罠をすり抜けてしまうのです。

「触れない!それに痛くもない!」

「そうじゃろ?」

キクは前まで狐だった時とは違う感覚に戸惑いました。そして、もうひとつの行動に出たのです。

それは、口から直接野いちごを食べる事でした。

そして、勢いをつけて口をもっていきました。

でも、見事に口は野いちごをすり抜け、食べることは出来ませんでした。

その事実を知ったキクは、急に涙をこぼします。

「食べれないぃー。空しいよおぉー」

キクは力なく言いました。

その様子を見た空は

「ありゃまあ。早速壁にぶつかったか。キクや。もののけになった者が、最初にぶつかる試練なんじゃ

その事はじきに慣れるさね?」

と、言いました。

「本当ですか?」

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