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その昔、ある田舎の村の外れ。林に生えている野いちごを、狐が美味しそうに食べていました。
するとそこへ、狐が食べているのをみつけた一人の男が駆け寄ってきます。
「こらぁ!作物を荒らすんでねぇ!」
声に驚いた狐は、直ぐにその場を逃げました。
「まぁーってぐ。ワシが秘密で栽培してるのを食い荒らして。今度見つけたら、とっ捕まえてやる!」
男は手に持って居る鎌を構え、警戒してうろうろしている。
その様子を茨の陰からみつめる狐。
暫くして。時にして四半刻は経ったろうか?
男は一向にその場を離れない為、その日、狐は野いちごを食べるのを諦めたのでした。
そしてある日。
狐が野いちごを食べようと、近づいたその時でした。
何か変な音と共に、狐の前足に激痛が走りました。
狐は、男の仕掛けた罠にかかってしまったのです。
狐は罠を解こうと、もがきましたがどうにも成りませんでした。
そこへ、二人の男がやってきました。
「おお。狐が罠にかかりよったわ」
狐は逃げようと必死にもがきましたが、鉄製の歯が食い込みどうにもなりません。
そして男2人に後ろ足から縄で縛られ、そして前足を縛られ、棒にくくりつけられて、担がれて村へ持っていかれました。
そして狐は、村の見世物として晒され、やがて餓死しました。
そして死んだ夜の日のこと。
死んだ狐の前に複数の尻尾を持つ人型の妖怪が現れました。
「若いのに可哀相に。どれ?」
妖怪は狐の亡骸に接吻をするとそこから、死んだ狐の霊が現れました。
「おいで」
妖怪は、それだけ言いました。
「・・・」
霊となった狐は黙ってついて行きます。
妖怪は振り向きもせずただ歩いているだけ。
狐の霊はただ、付いていきました。
やがて、狐の前には見慣れない囲いが現れました。
それを人型の妖怪に続いてくぐったその時。
狐の霊は、人型の女の姿へと変わったのです。