別れ
そう最後と言われたのが気になるのだ。
なんとなく映画館に行くのが怖くなる。誰でも知り合いと2度と会えなくなるのは恐いと思う。
そんなにハッキリと看取りとか言われて…トムは覚悟を決めているみたいだった。
彼は確かに人間じゃない。フイルムだ。具体的に言えばフイルムの陰影でしかない。それでも、鋭く甘い眼差しに彫刻みたいな身体に何よりひたむきに生きようとする姿に
伽椰子は勇気づけられた。
大学でこんなに早く友達が出来たのだって、彼のおかげなのだ。彼の友達を殺してでも這い上がろうとする姿に伽椰子のなけなしの勇気が湧いて友達が出来たのだ。
「もう会えなくなる…」それは切ない。
胸がキュッと痛む。
映画館に行く日を引き延ばしたいが、ハイネさんが明日が最後だと言っていた。
恋なのか友情なのか、分からないけれど。
彼に会えたから頑張って人に関われた。
ネットの推し友にも相談しょうがなくて、結局誰にも話せていない。
「どうしたの?もう寝たら?」居間でテレビで推しの動画見ながら悩んでたら叔母のミー子さんが声を掛けてきた。
「あっ、すみません!テレビ独占しちゃって!」テレビを消そうとしたが止められた。
「いいよ〜今時の流行が全然分からないから勉強になるよ。この人もゲーム実況してるんだね。」ミー子さんも、隣に座った。
「この人も?誰か動画配信者の知り合い居るんですか?」気になって質問する。
「いやいや、たまに動画見るとオススメで上がるから、そう言う人達が動画には多いんだなと思っただけ。」ミー子さんの頬がピクピクしてる。
「そうですね。ゲーム実況の四天王のエイコーさん、水餓鬼さん、毛玉どん、ヤッターさんほど有名じゃ無いけど私の推しも30万人配信者ですから!
あっ、今月アルバムが出て年末はライブあると思うんです。
ミー子さん、一緒に行ってくださいね!」と頼む。
「う、うん、他に誘う人が居なかったらね。でも、大学の友達もネットの友達も、もう大丈夫じゃない?
今の伽椰子ちゃんなら。」とニコッと微笑む。
「そうかな?出来るかな?」少しひるんでしまう。
「誰かと約束したって言ってなかった?
人殺しても幸せになるんだ!って。」ミー子叔母さんが笑う。
そうだ!トムに誓ったんだ。悪に染まっても友達作って仲良くなるんだ!って。
「あ、あの、その約束したネットの友達なんですが、
難病で入院するから、もうネットで話す事出来なくなって、病気治るの何年掛かるか分からないって。
2度と会えなくなるかもしれないんです。
でも、なんて話したら良いのか?
どう、別れたら良いのか、分からないんです。」と打ち明けた。
「人生って、ずっと一緒に居る人は誰もいないんだよ。
お父さんお母さんもやがて死ぬし、出来た友達も別れの日は必ず来る。夫婦だっていつか別れの日は絶対来るんだよ。
出会った人とは、必ず別れの日が来る。
死ぬ時は1人で、誰も連れていけないの。」ミー子さんは無駄な話しないけど、話す時は人がタブー視してる真実を言う。
「…」伽椰子は、その日を想像すると息ができなくなりそうになる。
「その友達が、貴女の最初の別れの人になるんだね。
素敵だよ。離れる事がツライと思える人に出会えた事が!
そう思わない?」ミー子さんが伽椰子の手を握る。
「ステキ…なんですか?」伽椰子が聞く。
「そう、引きこもってたら出会いも無いから別れも無いでしょ?
そしたら、そんな胸が詰まる気持ちを一生感じないんだよ。
それって死んでるのと大差なくない?
アナタは生きてて自分以外の人を愛してるから別れが辛いんだよ。
それってステキな事じゃない?」そう言うとミー子さんは去って行った。
伽椰子の中で何度も言葉がエコーした。




