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銀幕の恋人  作者: たま


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6/10

地獄谷

大学で2人に大森の地獄谷に女優さんがウエートレスしてる喫茶店があると話した。

どうしても映画館の話は…信じてもらえる自信なくて話せなかった。

「それ、本当?私、あの女優さん好きよ!あの人出ると一気にホラー味増すよね!」ユウが興味津々だ。

「喫茶店とかエモいよね〜堅めのカスタードプリン食べたくなってきた!」都会育ちのサキは喫茶店って言葉に興味があるようだ。

「大森に住んでる叔母の話だから確かだとは思うけど…私は大森のあの繁華街の中に本当に地獄谷があるのか?それが疑問なんだよね。

夜は危ないから昼間行きなさいと言われてるから1人で行く勇気が出なくて…」と伽椰子は2人に相談する。

「面白そう…探検してみる?」ユウがキラキラした目でサキと伽椰子を交互に見る。

「処刑場もあるし何かと気になるよね、アソコって。」サキも東京っ子として気になるらしい。

「お祖父ちゃんに大森のお化け屋敷に小さい頃入ったって聞いたよ。アソコが日本の化け物茶屋の発祥の地なんだって!」サキの話に驚く。

「エ〜ッ、お化け屋敷の発祥の場所なの?そりゃ、地獄谷があるはずだよね…行く?探検しに?」伽椰子が2人に聞いたが、すでに決まってる顔だった。


昔、江戸時代、処刑はイベントだった。

人々は見物に集まり、処刑人が馬で刑場に引かれる道は屋台や茶店が並んでいたのだとか。

イベントがないと茶店などは困る。そのため、医者が化け物茶屋を開いて処刑が無くても人が楽しめるようにしたのが、お化け屋敷の最初らしい。

言われてみれば、刑を受けてるような姿形のモノが確かに多い。

磔獄門もだが、大森は干潮満潮があり海苔の一大生産地でもあったので、水磔(すいたく)と言う溺死刑があった。干潮時に海に磔にして満潮と共に溺死させる刑だ。晒し首も並べられて、それを見たさに集まる人に化け物茶屋は大ウケしたそうな。

今も競馬にボートレース、水族館と観光地だが、江戸時代はそれにホラー要素のメッカでもあったのだ。


大森駅を映画館と反対の出口から出ると商店街が並ぶ。

「本当に普通にアーケード街だよね。こんな所に地獄谷があるの?」ユウが左右をキョロキョロ見る。

「叔母さんが行けば分かるって言ってたけど…」伽椰子は自信がなさそうな声を出す。

「いや…あったよ!地獄谷!」先頭を歩いてたサキが止まりアーケードの右手を指した。

そこには下に降りるタイル造りの古い階段があり、その底には温泉街みたいな看板が掛かっていた。

「山王小路飲食店街」

昭和のバラック街が令和に現代に普通に残った異様な空間だ。

下へと延々続く階段は、本当に地下世界への入り口のようだ。

思わず3人はツバを飲む。

「行く?」先頭のサキが不安そうに聞く。

「2人が一緒で良かった。私1人だったら無理だったよ。恐いよ〜」伽椰子はサキの背にしがみつく。

「ヒエ〜ッ!本当にコレは地獄行けそうな道だね!

私が先頭歩くよ!皆、ついていて!」ユウがワクワクと先頭に立ってくれた。

3人で固まって昼間なのに暗く深い階段を降りていった。

底に着くと、そこは飲み屋が集まっていた。昼間なので静かだ。全部閉まっている。

「新宿のゴールデン街みたいだね。」サキが1本道を歩きながら左右を見ながら言う。

「ところで店の名前は?」ユウが伽椰子に聞く。

「それが聞くの忘れて。行けば、すぐ分かるって」伽椰子が小さな声で言う。

「エ〜ッ、大丈夫?!!

アッ、でもココだわ!分かるわ!ホラッ」とユウが前を指さした。


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