あきらめないきもち 〜うさぎとかめのものがたり〜
冬の森に、しんとした朝がきました。
白い息がふわり。
木のえだには、こおりのつぶが、きらきら光っています。
今日は、森の「ふゆのマラソンたいかい」の日です。
主人公は、うさぎとかめ。
うさぎは、ちょっとめんどうくさがり。
かめは、こつこつがんばる、まじめな子。
「はぁ〜、走るなんて、めんどうだなぁ」
うさぎは耳をだらん。
「ぼくは、にがてだけど……がんばってみるよ」
かめは、ぎゅっと前を見ました。
「ゆっくりでも、ちゃんと前に進めるはず……」
かめは心の中でそっとつぶやきました。
パンッ!
スタートの音がひびきます。
うさぎは、ぴょんっ。
雪の上をかるくとんで、あっというまにみんなをおいていきました。
かめは、ゆっくり。
「よいしょ……よいしょ……」
でも、まっすぐ前へすすみます。
うさぎは中間地点でドリンクをごくり。
そのままトップでゴールしました。
でも、ひょうしょう式はめんどうで……
「テレビで見ればいいや」
こっそり家に帰ってしまいました。
そのころ、かめはようやく中間地点へ。
係の動物たちが、のんびり休んでいます。
「ようやく来たの?」
「ゆっくりすぎて、冬が終わっちゃうよ」
かめは胸がちくり。
でも、言い返しません。
「ぼくは、ぼくのペースでいくんだ」
「わらわれても、ぼくはぼくのままでいい……」
そう思って、ドリンクも飲まずにまた走り出しました。
家でテレビを見ていたうさぎは、はっとします。
画面の中で、かめが必死に走っていました。
冷たい風の中、かめの汗が、きらきら。
まるで冬の星みたいに光っています。
でも、ヤジがとびます。
「おそいぞー!」
「もうやめちゃえよ!」
うさぎの胸が、ぎゅうっとなりました。
なんだか、もやもやして、じっとしていられません。
うさぎは、しばらく画面を見つめました。
「……行かなきゃ」
うさぎは家を飛び出し、ドリンクをつかんで雪道をかけました。
白い息が、すーっとうしろにのびていきます。
かめは終盤。
足はおもく、息はぜいぜい。
「あとすこしなのに……あとすこしなのに…………もう、だめかも…………」
「がんばってきたのに…………ここで終わりなのかな…………」
かめの心が、ふっと弱くなりかけたそのとき。
「かめーっ! がんばれーっ!」
冬の空気を切りさくように、うさぎの声がひびきました。
横を見ると、うさぎがいっしょに走っています。
「これ飲んで! さいごまで、いっしょに行こう!」
かめはドリンクをごくり。
あたたかい力が、体の中にひろがっていきました。
ふたりは、ならんで走ります。
雪をふむ音が、ぽくっ……ぽくっ……とそろっていきます。
「もうちょっとだよ」
「うん……いっしょにいくよ」
ついに、ゴールのテープが見えてきました。
かめはさいごの力をふりしぼり、うさぎとならんで走りぬけました。
ゴールしたふたりは、そっと見つめ合います。
その瞳には、きらきら光るもの。
それは汗か、涙か、冬のひかりか。
でもたしかに、ふたりの心は、あたたかくつながっていました。
冬の森に、そっと小さな光がともりました。




