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あきらめないきもち   〜うさぎとかめのものがたり〜

掲載日:2025/12/30

冬の森に、しんとした朝がきました。

白い息がふわり。

木のえだには、こおりのつぶが、きらきら光っています。

今日は、森の「ふゆのマラソンたいかい」の日です。



主人公は、うさぎとかめ。

うさぎは、ちょっとめんどうくさがり。

かめは、こつこつがんばる、まじめな子。


「はぁ〜、走るなんて、めんどうだなぁ」

うさぎは耳をだらん。


「ぼくは、にがてだけど……がんばってみるよ」

かめは、ぎゅっと前を見ました。


「ゆっくりでも、ちゃんと前に進めるはず……」

かめは心の中でそっとつぶやきました。



パンッ!

スタートの音がひびきます。


うさぎは、ぴょんっ。

雪の上をかるくとんで、あっというまにみんなをおいていきました。


かめは、ゆっくり。

「よいしょ……よいしょ……」

でも、まっすぐ前へすすみます。



うさぎは中間地点でドリンクをごくり。

そのままトップでゴールしました。


でも、ひょうしょう式はめんどうで……

「テレビで見ればいいや」

こっそり家に帰ってしまいました。



そのころ、かめはようやく中間地点へ。

係の動物たちが、のんびり休んでいます。

「ようやく来たの?」

「ゆっくりすぎて、冬が終わっちゃうよ」


かめは胸がちくり。

でも、言い返しません。

「ぼくは、ぼくのペースでいくんだ」


「わらわれても、ぼくはぼくのままでいい……」

そう思って、ドリンクも飲まずにまた走り出しました。



家でテレビを見ていたうさぎは、はっとします。

画面の中で、かめが必死に走っていました。

冷たい風の中、かめの汗が、きらきら。

まるで冬の星みたいに光っています。

でも、ヤジがとびます。


「おそいぞー!」


「もうやめちゃえよ!」


うさぎの胸が、ぎゅうっとなりました。

なんだか、もやもやして、じっとしていられません。

うさぎは、しばらく画面を見つめました。

「……行かなきゃ」



うさぎは家を飛び出し、ドリンクをつかんで雪道をかけました。

白い息が、すーっとうしろにのびていきます。



かめは終盤。

足はおもく、息はぜいぜい。

「あとすこしなのに……あとすこしなのに…………もう、だめかも…………」


「がんばってきたのに…………ここで終わりなのかな…………」


かめの心が、ふっと弱くなりかけたそのとき。


「かめーっ! がんばれーっ!」


冬の空気を切りさくように、うさぎの声がひびきました。



横を見ると、うさぎがいっしょに走っています。

「これ飲んで! さいごまで、いっしょに行こう!」

かめはドリンクをごくり。

あたたかい力が、体の中にひろがっていきました。



ふたりは、ならんで走ります。

雪をふむ音が、ぽくっ……ぽくっ……とそろっていきます。

「もうちょっとだよ」

「うん……いっしょにいくよ」



ついに、ゴールのテープが見えてきました。

かめはさいごの力をふりしぼり、うさぎとならんで走りぬけました。



ゴールしたふたりは、そっと見つめ合います。

その瞳には、きらきら光るもの。

それは汗か、涙か、冬のひかりか。


でもたしかに、ふたりの心は、あたたかくつながっていました。

冬の森に、そっと小さな光がともりました。

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