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第8話:狩人たちは、俺を疑っていた
村の狩人たちは、俺を信用していなかった。
それは当然だ。
彼らは長年、森と命を賭けて向き合ってきた。
風を理由に安全だと言われても、簡単に信じられるはずがない。
「森はな、運と経験だ」
狩人の一人が言った。
「風なんぞ、気にしとったら動けん」
「分かります」
俺は否定しなかった。
「だから今回は、俺も一緒に入ります」
ざわり、と空気が動く。
「足手まといになるぞ」
「危ない時は、すぐ引き返します」
それだけ約束して、森に入った。
森の中の風は、村とは違う。
木々に遮られ、細かく分かれ、嘘をつかない。
(……右はだめだ)
わずかに、空気が重い。
縄張りの境目だ。
「右には行かないでください」
「理由は?」
「魔物が、近い」
狩人たちは顔を見合わせ、
一瞬の沈黙のあと、別の道を選んだ。
結果、魔物とは遭遇しなかった。
獲物は十分。
誰一人、傷つかない。
「……さっきの道」
狩人の一人が言った。
「あそこ、昔仲間を失った場所だ」
俺は何も言わなかった。
風が教えてくれただけだ。
森を出る頃、
狩人たちは俺を見て、短く頭を下げた。
疑いは、もうなかった。




