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第7話:戦わずに、村を救う方法

干ばつの兆しを告げる風が吹き始めてから、数日が経った。


空は晴れている。

だが、どこか軽すぎる。

湿り気を失った空気が、村の上を素通りしていく。


「本当に雨が来んのか……?」


畑を見回しながら、村人の一人が呟いた。

芽吹いたばかりの作物は、まだ元気に見える。


「今は、まだ大丈夫です」


俺はそう答えた。


「問題は、この先です。

風が、水を連れてこなくなっています」


村人たちは顔を見合わせた。

正直、理解できていないのだろう。

それでも、誰も笑わなかった。


魔物の一件以来、

俺の言葉は「念のため」では済まされなくなっていた。


「何をすればいい?」


村長が聞く。


「畑の向きを変えます。

それと、水を集める溝を掘ってください」


「向きを……変える?」


「風が強く抜ける場所では、水が逃げます。

ここを、こうです」


俺は地面に枝で線を引きながら説明した。


風上に低い土手を作り、

風下に水が溜まるよう、浅い溝を巡らせる。


「雨が少なくても、

風が水分を奪いにくくなります」


村人たちは半信半疑のまま、作業に取り掛かった。


鍬を振るいながら、誰かが言う。


「……正直、よう分からん」


「でも、外れたら笑えばいい」


「当たったら……助かる」


それで十分だった。


数日後。


周辺の村から、噂が届き始めた。


「作物が萎れ始めた」

「雨が、全然来ない」


だが、この村の畑は――耐えていた。


土は湿り気を残し、

葉は、枯れる寸前で踏みとどまっている。


「……なんで、ここだけ」


村人の一人が、畑に膝をついた。


俺は風を読む。


水は少ない。

だが、逃げていない。


「戦っていないからです」


そう言うと、村人は顔を上げた。


「戦って、ない?」


「自然と、争っていないだけです」


風に逆らわず、

風に奪われないようにした。


それだけだ。


夕方、村長が俺に言った。


「お前は……本当に不思議な男だな」


「そうでしょうか」


「いや。

強いとかじゃない。

“正しい場所”に立っとる」


俺は、その言葉を否定しなかった。


この日、村は知った。


守り方には、

剣を振るう以外の答えがあるのだと。


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