4/10
第4話:魔物襲来、そして被害ゼロ
夜明け前、風が大きく揺れた。
空気が震え、地面を這うような流れが村へ向かってくる。
嫌な予感ではない。
はっきりとした“警告”だ。
「来るぞ!」
見張りの声が上がるのと同時に、森の奥から黒い影が現れた。
魔物の群れ。
数は多いが、動きは乱れている。
村人たちは事前に指示された通り、東の丘へと避難していた。
風の流れが弱まり、視界が開ける場所。
魔物たちは丘へ近づこうとするが、
強い横風に進路を乱され、思うように動けない。
(今だ)
俺は、風が最も静まる瞬間を見極めて合図を出した。
最低限の迎撃。
深追いはしない。
魔物は混乱し、やがて森へと退いていった。
夜が明ける。
村に、静寂が戻った。
死者――ゼロ。
負傷者も、軽傷のみ。
倒壊した家はなく、柵も無事だった。
「……守られた、のか」
誰かが呟く。
村長は、俺を見ていた。
その目には、疑いではなく、驚きがあった。
風が、穏やかに吹いている。
――ひとまず、この村は生き残った。




