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第10話:盗賊団は、風に負けた
夕暮れ時、風が荒れ始めた。
速く、乱れ、焦りを含んだ流れ。
人間特有の、欲の匂い。
「……来ます」
俺の言葉に、村長の顔が強張る。
「盗賊か」
「はい。
数は多いですが、統率が取れていません」
「勝てるのか?」
「戦いません」
俺は、風が最も荒れる時間帯を待った。
盗賊団が村に近づいた瞬間、
突風が砂埃を巻き上げる。
「なんだ、前が見えねぇ!」
叫び声。
仲間同士の衝突。
その間に、村人たちは避難を完了する。
盗賊たちは、
何も奪えず、何もできず、混乱のまま退いた。
静けさが戻る。
「……勝ったのか?」
村人の誰かが呟く。
「ええ」
俺は風を感じながら答えた。
「風が、勝たせてくれました」
この日、村人たちは確信した。
この男は、
剣を振るわずに、
村を守れる存在だと。




