待ちきれない、我慢できない
次の週の火曜日にフォトミーのサークルの総会がある。莉杏はサークル内に知り合いがいないと言っていた。すぐに携帯のメッセージアプリを開いて莉杏とのトーク画面を開いた。連絡先を聞いたがあまり会話はできていない。莉杏とのメッセージのやり取りの中で俺は、莉杏がメッセージのやりとりを好まないことを察していた。俺の勘違いの可能性も大いにある。
【来週の総会一緒に行こー?】莉杏からの返信はすぐにきた。
【いいよー!】
【ありがとう!!またその時言うね!】
【はーい】
やっぱりこの嬉しさには慣れない。画面を見る俺の顔は満面の笑みだった。画面の暗い部分にその笑みが映った。
総会はおそらく一時間半以上かかると予想し、そこから一緒に帰るとしたらかなりの時間莉杏と一緒にいることになる。嬉しいが不安もある。そんな長い時間会話もつのか?沈黙が続いたらどうしよう。長い時間あるのだから、これを機に仲良くなりたい、そう思ってその瞬間から会話のネタを携帯のメモ機能に思いつく限り書いていった。
この日の最初の授業が終わった。
「きょうちゃんごめん!来週の総会莉杏と一緒に行くことになった!」
「え!全然いいよ!がんばって!」やはり優しい。
きょうちゃんにはフォトミーの新歓の次の日に、莉杏に一目惚れしたことを伝えていた。きょうちゃんは高校から付き合っている、他大学に進学し遠距離になった彼女がいる。付き合って一年半くらいらしい。きょうちゃんは優しいし、イケメンだし、彼女を大切に思っている。だからきょうちゃんには伝えていた。良いアドバイスをもらえることも期待して。
もちろん、移動中も学食を食べている途中も、会話のネタを考えていた。学食を食べている間は来週が楽しみで、一緒に食べている誠、優吾、きょうちゃんの内の、先ほど紹介した優男以外に自慢したくなったが、それをグッと堪えた。先に言ってしまうと、誠には後に、我慢できずに言ってしまう。
授業が始まる前や、なんなら授業中、帰りの電車では莉杏に借してもらった本を開いた。莉杏が借してくれたということが嬉しくて、今まで一度も本を読破したことがない俺が、国語が苦手な俺が、空き時間に会話のネタを頭の隅に入れながら本を読むようになっていた。これが愛の力か?なんて思ったけど、愛の力でしょ。ちなみにどのくらい国語が苦手かと言うと、受験生時代に受けた模試で、国語の偏差値が22と記されていたくらい苦手だ。やはり愛の力だ。
早く一日が終われば良いとずっと思っていた。さらに休日なんかもっといらないと思った。平日は授業があるから一日の流れをそんなに長く感じない。しかし休日はなんなんだ。一日中家にいることで時間の流れが遅く感じる。暇だからだ。恋してる時期の休日ほどいらない日はなかった。本を読もう。