『モルブ隊の猫女』
30分位走っただろうか?
「ちょっと...待って...!!」
「マコトー!!遅いですよー!!」
好き勝手言いやがって!!こっちは絵ばっか描いてた陰キャだぞ!!それに片方は元軍人だし!!片方はその軍人に背負って貰って楽してるし!!
「マコト様!!もうすぐで安全な森に入るので頑張ってくださーい!!」
「わ...分かったから...!!もうちょっとそこで待ってて...!」
一分程かけて二人に追い付いた頃には嘔吐感が増していた。
「つ...疲れた...」
「大丈夫ですかマコト?ひっひっふーですよひっひっふー。」
「だっ大丈夫...!!」
俺は親指を上げるが、正直心の中では中指を天に掲げていた。
「この森なら追跡もしにくくなるはずです。...モルブ隊は別ですが。」
「そのモルブ隊ってのはなんだ?」
「モルブ隊は王直属の精鋭部隊です」
精鋭部隊...そんな奴らが俺達を追ってきてるのか...
「ここから一時間程歩いた場所に洞窟があります。そこで今日は野宿をしましょう。」
* * *
「ここです。」
「?何処に洞窟があるんだ?」
今居るのはツタが生い茂った崖の前。どう見ても洞窟が有るようには見えない。
そう言った瞬間ソールが素早く剣を振りツタがバラバラと落ちて取っ手が付いた小さな木の板が見え始める。
「成る程。ツタで洞窟の入り口を隠してた訳か。」
「ええ。」
そう言いソールが取っ手を持ち開けようとする。ギッと木の板が音を立てた瞬間。
「!?離れて!!」
ドガアンッ!!と大きな音が立ち、勢いよく入り口が爆発した。
「うわっ!」
「キャッ!!」
俺とエレオノーラは少し吹っ飛ばされた。
「ソールさん!!」
「ソール!!大丈夫!?」
「ううっ!!」
既にソールの右腕はなくなっていた。
「ソール!!右腕が!!」
エレオノーラがソールに駆け寄る。
「んー?なーんだ仕留め損なっちゃったー?」
崖の上から声がこちらに発せられた。なんだあの見た目...猫と人間が混ざったみたいな...胸があるから女なのだろうか...?
「なんだ...貴様は...!」
「やだねぇソールちゃん。元先輩じゃーん?」
「......モルブ隊のシフェルか」
「今思い出す時間結構かかったよねーソールちゃん?まあいいやー。王様が怒ってるんだよね、早くエレオノーラを連れ戻せーって。って訳なんで国に戻ってほしいんだけどー?」
「断ります!!!!!」
あまりにも大きな声でエレオノーラが直接答えたので木々から驚いた鳥が次々に飛び出した。
「わあっビックリしたー!!でも姫様の意見は聞いてないからねー?」
「私がやらないのなら誰があの悪魔を討伐するんですか!!」
またエレオノーラが大きな声で言った。
「えーっ!?あいつを倒そうとしてるってホントだったのwww!?バカなんじゃないのーwww!?無理だってー!あんなん人間が倒せるわけないじゃーん!!諦めなよお姫様ー!!」
「諦めるだなんて...」
「んだてめぇ聞いてれば猫人間!!」
俺は思わず感情的になって叫ぶ。
「えっ!?マコト様!?」
「ねっ猫人間!?それ差別だよー!?」
「うっせえ!!こっちの世界の差別用語なんて知らねえんだよ!!お前個人に対してムカついてんだよ俺は!!」
人の事を勝手にバカにしやがって!!こんな奴が一番嫌いなんだ俺は!!
「ってか君のこと私見たことないんだけどさー...こっちの世界って今言ったー?」
「言ったけどだからなんだってんだよ!!」
「えっ、て事はー...君もしかして転生者ー!?」
「...あっ」
「バレちゃった...」
エレオノーラは思わず口を押さえる。
「その反応当たりでしょー!!って事は捕まえれば大手柄じゃーん!?えーっと!これ!!」
猫が鞄から望遠鏡のような物を取り出し俺を見る。何をするつもりだ?
「おっ!!やりー!!」
シフェルとやらが崖から飛び降りて俺に近づく。
「んだテメェ!!やんのか!?」
「君魔法使ったことないでしょー!分かるんだよ!お姉さん頭いいからねー!?」
女だったか!!それに魔法を使えないのがバレてる!?あの望遠鏡か!?
「ていっ!!」
「うわっ!?」
猫女は真の顎を狙って拳を放つ。ボッと空を切る音が真の耳に届いた瞬間に初めて、自分が追われる立場に有ることを。ここは異世界である事を実感した。