表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/87

きゅうけつきさん③-吸血鬼の日光浴


「また助けられてしまったな、感謝するぞ」


にっこりと笑顔で、ぐーと指を出す彼女。

なんとか遊びに来た小学生の親戚が、目を離したスキに――ということで誤魔化した。


免許証(笑)のカードはもちろんのこと偽造。

というかほぼオモチャ。


どうもきゅうけつきさんの無知につけこんだ輩がいたそうで。

5万払えば20歳以上と認めらるカードをあげるよ、これできみも酒が飲めるね、と、彼女は居酒屋近くの路地で昨夜言われたらしい。

彼女は喜々としてなんとか稼いだ金を全額渡したそうだ。


雀を鷺と騙すレベルの詐欺だ……

もうはや哀れというかなんというか……


そのことについては彼女、そうなのかと些かの不満の態度を表すだけであった。


「そいつに仕返しとかしないんですか?」


自分でも若干どうかと思う発言だが、一応聞いてみる。

だが彼女はからりと、そういうこともあるーーと返すだけ。


この異常な程の心の広さは始祖故なのか。

それとも慣れっこだからなのか?


彼女の場合……どっちもある気がする。


「…………きゅうけつきさん……他にも色々と質問したいんですが……」


…………まさか昼間に吸血鬼が日の下で、職質を受けてピンチになるなんて、私はいっさい想像していなかった。


吸血鬼は、基本日の光を浴びると灰になる。

紫外線ではない、特別な太陽の光に吸血鬼は弱い。


それは人間による縛りらしい。


吸血鬼と人間が遠い昔、とある戦争をした。

そこで吸血鬼は敗北。


常人百人が束になろうと力及ばないその吸血鬼の強大な力を恐れ、人間たちは或る縛りを設けた。


それが――太陽の光のもとへ出られないという縛りである。


単純なれど強力な縛り。世界の均衡を変化させ、吸血鬼という種に、その特性を人間は付与したのだ。


「どーした、今日はわしは機嫌が良い。陽気な気分になるな、やはり日本の冬のおてんと様の下ではさ。夏は地獄だが、やはり冬は丁度が良い気候だからな。なんでも答えるぞお?」


のだが――あれえ?

河川敷。きゅうけつきさんは太陽の下で、溶けるどころかのんびりとーー羽根を休めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ