きゅうけつきさん②-職質を受ける伝説の吸血鬼
さて。
どうしよう。
「…………お嬢ちゃん……身分証明等々のカードを勝手に改造するのはね、犯罪なんだよ…」
「だーかーらー正式に取ったやつじゃよ!写真張り替えとかしてないわーっ!ほら見ろわしは本人じゃて!」
私の中の天使と悪魔が、助ける助けないの選択肢を天秤にのせる。
……自分の気持ちに素直になるのです……ほら……貴女はあのきゅうけつきさんを助けたいのでしょう……?
……時間ってのは有限……だぜ?…………あんな吸血鬼助けて何になるんだよ?……ほら、あの吸血鬼を甘やかしすぎるのは良くねーことだろう……?
私はその現場から反対方向へと進む。
よし。逃げよう。
針は後者を指した。
人に情けをかけすぎるのも良くないと言うし。
何か面倒くさそうだし――
「…………………………!」
と、したら。
視線が向けられていることに気づいた。
あ、気づかれた。
「――――――――――」
「――――――――――」
沈黙。
「…………お姉さん、知り合い?」
の一言で、その刹那広がった静寂が断たれる。
「…………えーっと………………」
一秒。吸血鬼さんの顔がわかりやすく歓喜に満ちる。
二秒。吸血鬼さんは何か手振りをはじめる。
そして三秒。吸血鬼さんの顔に不安が滲みはじめ――
……ああだめだ、逃げられない!
「――――その娘は、私の親戚で――!」
……私は、観念することにしたのだった。