不思議な夢⑦-たぶん、この感情だけは夢じゃない
ここから、目を離してしまおうかと思った。
多分、あと、数刻でその時は来る。
……誰のお陰なのか、この酷い記憶は私の夢として、全く鮮明に脳を流れている。
私の記憶として――この光景は正しいのだ。
だからこそ、この不気味な雰囲気を私は恐れている。
……寸分違わず、違いのない光景。
それが意味するのは……
いつの間か、自分の手が自分の胸を掴んでいた。
耐え難い光景の襲来を、本能で感じていた。
――心臓の音は、やはり静かだった。
聞こえるのは、やけに響く心電図の音だけ。
一秒、二秒、時は残酷にやって来る。
どうしようもなくやって来る。
……運命はいつも、いらないものまで運んで来る!
そして――時は遂に……
「――――――――――――」
病室のドアが開く音。
ガラガラと、そんなヘンな音で、いつも煩わしく思っていた。
いや、そんなことなど、どうでも良かった。
目の前にいる、吸血鬼を見た衝撃に、比べれば。
「――――――――――――」
これも運命が運んで来たものなのだろうか。
――いやもしかすれば、彼女は、自力でやってきたのかも?
金髪のその人は、背の小さいその人は、その深く紅い眼で見る。彼女は瞬きを繰り返し、目を擦り、一秒、二秒。
そのちいさくて、その独特の挙動。
そろそろ見慣れた、その動き。
私は魅入られたように、立ち止まっていた。
時を忘れたように、ただ彼女を見ていた。
だからきっと――私は本当に魅入られたのだ。
吸血鬼――エリザベスに。
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