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不思議な夢③-君の名は?


「…………?」


しかし辺りを見ても、その声の主は見当たらない。


「死ぬのが怖いのなら、その本には触れない方が良いよ。それは――あなた以外の誰かの記憶。……君が接触すれば、君の記憶が汚染されるからね」

「………………」


声の主は以前姿を見せない。声は背後から聞こえているが、私は本棚を背に、身体をもたれている。


「しかしここに入り込んだとは。面白い。うん、興味深い。しかし、図書館かア――」

「………………あなた、誰なんです」


いつの間か頭痛は収まっていた。なんとか、喉から声を出すくらいはできる。


「そんなことはどうだっていいでしょ?あなたはおかしな人間だね。この声の主は、君に助言をしただけの存在。それで十分じゃない?」

「……………………そんな……ことは……」


不思議と、この声を聞いていると眠気がして来る。中性的な声で、低いわけでも高い訳でもない声だった。何にも分からないがひとつ喉をつっかえているのは、この声の調子だ。


――私の母の声に――いやに似ていた。


また、強烈な眠気がしてきた。


「それでいい、この夢の続きは――綾、君にはいらない」

「……………………」


「これはただの夢。ゆっくりと――おやすみなさい」


瞼を閉じたら、そんな声が聞こえた。

随分と、久しぶりに名前を呼ばれたような気分だった。

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