ヤツが来る⑩-その夢は、海のような記憶は深く
――昔は、泣き虫だった。
父に怒られては泣き、母に叱られては泣き。私が泣いていたのはその殆どがこのふたりの親の前だけだった。一カ月に一度くらいは泣いていた気がする。何故泣いていたのか、その理由など殆ど覚えてはいないが、訳が涙を流した記憶だけが私の中に残っている。それ程によく、泣いていた。
しかし――
「……綾さま些か。いやうんだいぶ…感情的になっていますね……?」
私がなっさけなく拗ねていると遠回しに本人に伝えるリーリス。……そんなこと言われずとも自分で分かる。
いや、確かに自分でも感情が制御できなくなっているよう……な。
「まさ…か!術が効きすぎてしまったのでしょうか……」
……?知らない。
そんなことはもう知らない。
いや、知るべきことなのか……?
……また頭が、混乱している。いた。
視界がボヤけている。
リーリスの声も遠ざかっている、まさか夢から覚めるのだろうか?
リーリスの顔が見えなくなっている。
瞼は開いているはずなのに、視界はぼんやりと、ぼんやりと、水に浮いた絵の具のようにぼんやりと、歪んでいる。
夢の中なのに、おかしなことだ。
――そして。
現実でもないのにこんな表現はおかしいのかも知れないが、私は意識を失った。
やっとなんとか投稿です。気づいたら年が明けていたんですけど。(戦慄)




