ヤツが来る⑦-面倒な女ども
「まあ、というワケで……ベス」
「……つまり、体調の心配はしなくても良い、と?」
私はベスのその言葉に内心驚いた。地下室に招いた理由の殆どを、彼女に当てられたからだ。
「良く分かりましたね」
「小音の真似じゃ。ふふ、当たっとったか!」
「私、そんな分かりやすい女なんですか?」
「というより、面倒な女じゃろ」
「……良く言われるような」
小音との付き合いでそれらしいことは良く言われる。自分でもそう思っているから全く反論できないのが――うん……
「お前との付き合い――二週間程で分かったことがある。……お前は面倒くさいやつだ!感情を簡単に表に出さぬし表情も全然変化しない!嬉しいのか悲しいのかはっきりせーい!!分かりやすくなるよう猫耳でも生やしやがれいってとこじゃ!!!」
「なんですかその要求は……?」
ベスの高く、柔らかな声が地下室で反響している。
「ま、なんてな。お前はほんと……一緒に居て退屈しない女だ」
そんな訳がないと、この時つい思った。自分を卑下する訳ではないが――いや卑下しているのかも知れないがーー私と一緒にいて楽しいのか、疑問に思ったのだ。
良く、感情が伝わらないと言われる私と。
「……漫画のセリフですか?」
「バレた?」
テヘヘと、またまた漫画に出てくるような分かりやすい仕草でコツンと握り拳を頭に添えるベス。吸血鬼の始祖がこんなのでいいのだろうか?
「だが――本心だぞ」
ベスはそう答える。
まるで言葉に濁りは無く、そう、ベスは答えた。




