ヤツが来る②-待たせたな(蛇)
「ねえ綾かベス、ネットショッピング使った?配送サービスとかでも……」
おかえり、と言った後森さんは、こう私達に問いかけた。
土曜日夜七時くらい。
食材だとかの買い出しで街に出かけていた私と、雀荘中の漫画を一日中読み漁っていたベス、一台自動式雀卓が失われた、余計ボロさが増した雀荘の店番をしていた森さん――という感じに、それぞれ行動が分かれていた。
「―――?使っても、使おうともしてませんよ」
「いやまあ当然ちゃ当然よね宛名ないし……見て、これ」
「なんじゃ何じゃ?」
私とベスが、森さんの指すそれを見れば。
「ダンボール……ですね」
「おっ!ダンボール!わしが愛用していた寝床ではないか!」
「寝床!?」
「ああ――野外生活で重宝したぞ………ちょいと思い出を語ってもよいかの?」
「聞きたいです聞きたいです」
そうだった。
ベスはここに来るまでホームレスだったのだ。別にダンボールが寝床だとしても、なんらおかしくは無かったんだった。しかしベス(伝説の吸血鬼)の野外生活か――気になるし興味がある。
「わしはダンボールとゴミ捨て場で出会い――最初、燃やした」
「……どうしてそのファーストコンタクトなんです?」
「薪がわりになるかと思ってな、丁度一年前ほどの冬だったもんで寒かったのだよ。まあ良く燃えたわ、野外生活の間拾った漫画も燃えたのだが……ちなみに付近にいた警官にめちゃくちゃに怒られた。だからもう二度としないと誓ったぞ……」
「ベスは随分と警察のお世話になってますね……あと、その頃から漫画拾ってたんですね。……やけにどっさりあると思った」
「なかなかすごいだろう?集めた漫画がそのお陰で全て燃えた時は心が折れたかと思うたが」
「仲良ねえ仲良しさんねえ、ええうんうん良いことよ。けど――私の話も聞いてほしいわ……?」
「あ忘れてた」
「うーむ忘れてた」
「酷いわーあ……………」
*ダンボールを野外で燃やすのは法律に触れる場合があります。吸血鬼以外は真似しないで下さい。




