その血を頂けますか-プロローグ④
「……わしはな、すごい吸血鬼なんじゃぞ?ほんとじゃぞ、名を言えば皆慄くこと間違いなしなんじゃぞ?」
「さあ――人間の私には、違いが分かりません」
その吸血鬼は半泣きである。
1000年生きたと自分で語るが、うん。全く信じられない。
距離を縮めて、その金髪を掻き分けて彼女のその目を見てみる。
「な……やめ……やめろ……お……」
なんか言っているが無視しよう。
……その目は赤かった。
碧眼だとか緑色だとかの目でなく、真っ赤な赤だった。
「ちょ…………やめ……やめてください……」
見惚れてしまう、引き込まれてしまう。
そんな錯覚のような感覚を覚える。
私はバッ、と距離を置いた。
「……なんじゃお前、忙しいやつじゃな……」
「魔眼の類いですか?……全然使えていないですけれど」
「話が急じゃな!……そうじゃよ。ま……この身体じゃ人を惚れさせることもできんな……魔力が圧倒的に足りとらん…というかお前、魔法を知っとるのか。ーー完全に風にさらわれたものだと思っておったわ……」
「ふーん。じゃ、吸血鬼ってのは本当……」
「だーかーらーあー!そー言っとるじゃろー!」
なんだかキレているらしいが、その主張している声の音量はなぜだか控えめである。
「もしかして、近所迷惑、気にしてるんですか?」
「…………また、話が急じゃなあ。そうじゃが?」
キッパリ言う。
ここで私は一番の疑問を口にする。
「吸血鬼が?」
「じゃ。五月蝿くすれば通報される警察呼ばれて逮捕される、の3拍子。抜け出すのにまる3日かかったぞ……戸籍なんてないしな…というか色々社会のシステムが複雑で…ぶつぶつ……」
……こんな吸血鬼、初めて見た。
吸血鬼であるというのは確実だ。
吸血鬼特有の魔眼持ち。人間にもごく稀に持つ者はいるが、この時代で魔眼を持っている人間など、この平和国家日本に数人いるか?くらいなものだし。
それに……なんというか……その……
「ぽんこ……いや…………まぬ……うーん……」
「言葉を選ぶなあはっきり言え!……どーせわしなんか……時代に取り残された老害ばばあですよーだ…………」
「ああ、拗ねちゃった」
拗ねた。
そりゃあもう、教科書に載るくらいはっきりと拗ねている。
まあ……この辺にしておこう。
彼女が吸血鬼だというのなら、私は役目を果たさねばならない。
私は、その吸血鬼に質問する。