学校帰り買い食いしちゃう病⑨-現代の日本で必要な人材
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「なあ、きゅうけつきはん」
「何……じゃ?」
小音は、あることをきゅうけつきさん(仮称)に聞く。
とある東京の喫茶店。綾の一番のお気に入りの、柔らかな木のテーブルでの話である。
ひとり綾は席を離れていて、そこにはふたりだけが座っている。
冬も深く、外の日はもう沈みきり、月が登っていた。夜を照らす街の光が窓から入って来る。
老若男女の人々はまだ、その照らされた街道を歩いている。
「嘘ついとるやろ?」
「…………!!??」
きゅうけつきさん(仮称)は不意をつかれた鳩のように驚いた。
「…………な、何のことじゃ……?」
「名前のことや。しかもホントはあだ名が、あるんやろ?」
「……その通り、だが何故………………分かる………………?」
名前を隠していることならまだしも、自分に……あだ名があった。
と、当てられたきゅうけつきさん(仮称)、は目に見えて動揺した。
何故分かったのか、何故当てられたのか。
「勘や」
小音はそう、あっさりと語る。
「…………………………まア……ご名答じゃ。……隠している訳にも……いかないか…………」
「ああ!…私はそれを隠してる理由を追求したいんやないんよ。ただね」
「……ただ?」
「…………綾ちゃんは、いい子や。やから、抱え込む。しかもタチの悪いこと悪いこと、綾ちゃんはそれを自覚してへん」
「………………………………」
「……やから、こんなこと言われても、うっとうしいだけかもしれへんけど」
「あだ名……を、教えてやれ…………と」
「……せや。勿論、強制もせん。けど……綾ちゃん、真剣に悩んどるから」
「………………………………」
きゅうけつきさん(仮称)は、何か。
決意のような。不安のような。そんな感情を、抱いていた。




