表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/87

血を吸ってもいいですか-プロローグ③


***


そこにいたのはひとりの少女。

雲で隠れていたはずの月が、その少女を照らしている。


金のシルクのような長い髪に、長いスカート。

その姿は、私がついぞ見たことのない、美しい立ち姿だった。


一瞬我を忘れて見惚れていたくらい、儚くーー美しい。



成る程と、私はあの少年の吸血鬼の行動に腑が落ちた。



「やれやれです、あの吸血鬼、ロリコンでしたか」


そう言うことなのだろう。

全くひどい吸血鬼だ。


こんなに愛らしい少女をーー傷だらけにするなんて。


「……ロリータ?……わしのこと……かあ?」

「………………?貴女以外に誰かいます?私は――」


少女は、その傷だらけの身体が嘘のように素早く立ち上がり――


「だぁーれがロリータじゃっ!儂あとっくの昔にはたちなど超えとるわい!」


そう言った。


「じゃあ、その姿で酒買えます?」

「……昨日コンビニで買おうとしたけど、不良家出少女に思われた」


「試したんだ」


少女――?

いや……違う。


ーー少女の姿をした者は、明らかにむすりとした顔でこちらを見る。


「そも、儂あ吸血鬼じゃぞ?分からんかオマエさん……」


吸血鬼?

私が首を傾げると、あちらはこちらの疑問に気づいたらしい。


「ふふん。聞いて驚け見てお届け。儂あ全ての吸血鬼の始祖、名を――」

「……慄けの間違いでは?」


そう私が言えば、自称吸血鬼始祖は固まった。

台詞を噛んで絶妙に間が抜けている。


うん。

この娘ぽんこつだなと、私は察した。


「うるせーっぽんこつ言うなーっ!日本語難しいんじゃー!!なんじゃ漢字だのひらがなだのカタカナだの、大文字か小文字でいいじゃろー!!!」

「日本の言語文化全否定してる……」


そもそも。噛んだことに日本語の習得の難しさを説くのは色々違うのでは?


私はそう思ったが、言うと絶対に面倒くさそうなので、その思考を奥にしまったのだった。


彼女の金の髪が、ひらひら揺れていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ