学校帰り買い食いしちゃう病②-関西弁少女
「それで、かくふにしかうまのうまうまで、吸血鬼の始祖がきりきりで…………」
「へー?すごっ、やべー、ぬめぬねのはらはらなんやろ?」
朝、ホームルーム五分前。
なんとか駆け足(法的速度ギリギリのスピード)で学校へ向かったために、私の遅刻の切符9枚目は切られなかった。
9枚目で反省文を書かねばならないが、そろそろ私の反省文用のネタも尽きている。
もうと早く起きりゃええやない。
今私と喋っている彼女から、耳にたこができるほど聞いた台詞。
私の説明を聞いているのは、私の友人の家令小音。
「それでね、その時きゅうけつきさんが…………」
「へー……まじ草やねっ⭐︎」
この通り語彙がギャル、あと関西弁。話していて楽しくなる子だ。
小音の、茶色が混じる黒の髪そして大きい碧眼がぱちくりとよく動く。
「で、きゅうけつきさんはウチに住むことになったんです」
「へー……きゅうけつきさんって言うんや、長いね?」
「本当の名前じゃないんだけどね。きゅうけつきさんの名前……か。聞きそびれました。いつの間にかあのひと、きゅうけつきさんって名前になってたようなきがします」
「長い!思い切ってQさまとかにしたら?」
「それじゃらせん階段クイズ番組になっちゃいます」
鐘が鳴り、担任の先生がガララとドアを引く音がした。
「はーい静かにね――ホームルームですよお〜」
先生が教壇で生徒を纏めている。
私達は小声で会話を続けた。
「それでそれで、綾。そのきゅうけつきさんってのはどんな人なん?……あ、人じゃないんだっけ」
「そうそう。金色の髪でね、それもシルクみたいなやつです」
「ふんふん」
「真っ赤な目で」
「ふんふん……?」
「小学生並みの低身長なんです。」
「なるほど、隣のこの子みたいな人なんや?」
「そうそう、こういう綺麗な………………あれ?」
そこに――
「……綺麗って言ってくれたことは嬉しいが、低身長は訂正しろ!この国の人間みんな身長低低めじゃろ!わしはこの国じゃ平均なの!」
「綾より低いんなら平均ないで?」
「だまらっしゃ………………」
「てんこーせーちゃん〜、仲良しなのはいいけどほどほどに〜。おいたはほどほど愛らしい位に。がこの国のモットーなの〜」
「………………すまぬ…………」
と、とぼとぼ先生の横に帰って行く後ろ姿は、間違いなくきゅうけつきさんのものであった。
いやけど、うーん?
私はちょっと考えて――
「――人違いかな?」
「綾がそれを私に聞くん?」
ご尤もです。
「は〜い、みんなさん気になってると思うからね〜まずはさ〜てんこーせーしょーかいです〜。」
教室の空気がざわざわと。
すこしだけ、いつもと違うホームルームが始まった。
 




