働けきゅうけつきさん⑧-惜しいところで
「しかし、人に分け与える魔法……」
「どうした?綾。」
「いや、そんな……結構複雑そうな魔法式だから、ハイスペックな魔術管でやらないと、不具合とか起きないのかなあ……と思いまして」
魔法式とは、魔法を発動させるために必要な式。
魔力にただ、日本語で命じただけでは、魔力はいぜん形のない魔力のままだ。
魔法式を組み、魔力に命令し、漸く魔法が使える。
「……わしは始祖なんじゃぞ?この始祖なる身体の超高性能な魔術管が備わっていれば……」
「……今は……転生体なんじゃなかったでした?きゅうけつきさんは」
「………………………………じゃ?……」
そして、そこには物理的に凍りついた森さんがいた。
「す……………………」
〇.一秒、きゅうけつきさん青ざめる。
〇.五秒、きゅうけつきさん口を大きくひらく。
よおし耳栓だ。きゅうけつきさんと出会って3日、少しこの人のことが分かってきた。
この人はただのポンコツではない、むしろ有能。
しかし、一つ致命的な点がある。それは――――――
「すまあああああああああああ――――――――んんんん!!!!!香登――――――っ!!!!!!」
いつも……あとひとつの所でやらかす人だってこと――――!
ちなみにこの後、なんとか私がきゅうけつきさんに魔力を与えて、なんとか魔力式のバグを見つけ出し、森さんを助け出したとさ。
***
「しかし……お前はやはり……優しいな」
「だから……貴女に……言われたくありません…………」
きゅうけつきさんと呼ばれる吸血鬼と、秋葉原綾が、疲れた口調で言葉を交わしている。
そして氷が溶けたように、香登はそこに横たわっていた。
日曜日朝。
ふたりは、お互いを少しだけ知った。
?「どこいったのかしら、私の×…なほん…」
とある吸血鬼は、へこんでいたそうな。




