働けきゅうけつきさん②-収入源はいづこ?
一分。
「――――――――」
三〇分。
「――――――――」
一時間。
「――――――――」
三時間。
「――――――――」
八時間。
「――――おい」
きゅうけつきさんは、ロビーで漫画を読んでいた私を呼ぶ。
「どうしました?」
読んでいた漫画を本棚に戻して、厨房に向かう。
きゅうけつきさんは厨房で待機していた。
暇を持て余していたらしく、その時間でもう一着メイド服を作っていた。自分よりもすこし背が高い椅子に、きゅうけつきさんは、 足をぶらぶらさせて座っている。
隣に森香登――森さんが眠っていた。しかも立ったまま、文字通り人間技ではない、人間じゃないけど。
厨房で?という突っ込みが入りそうだが、いつもの光景である。
「客が――殆ど来ないではないか!閑古鳥が鳴いとるわ!」
「ええ。まあ――いつもこんな感じですよ。」
彼女の隣でやんややんやと言っているきゅうけつきさんは、期待外れだという表情。
「やけに、食材の量が少ないと思ったわ……」
時計の針はもう、閉店時間のよる十二時を指す。
開店準備を張り切っていたきゅうけつきさんには悪いのだが、いつもこの雀荘、『雀猫』はこんな感じ。
常連の数人が来店するだけで、それ以外の来客は殆どいない。
「さ――閉店準備ですよ。張り切りましよー」
「へ――い…じゃ……………」
半日前とは違い、全く元気のないきゅうけつきさん。
「まあ、きゅうけつきさん。――本当の仕事はこれからなんですよ?」
「――――――」
それを察したのか、些か元気をきゅうけつきさんは取り戻した。
そして。
「あ………………あさ……あ?」
「もー夜ですよ」
隣で森さんが呑気な声で目を覚まし、それに私はお決まりの返しをした。




