表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/87

きゅうけつきさん⑦-名ばかりグランドマザー


「貴女が……綾が言ってた……吸血鬼の――始祖さん?」


その女からは、派手な赤色の服が目立つ女――という、第一印象を受けた。


女の髪は上手く精巧に編まれている、解けば長い髪が表れるであろう。どこか青いその髪の、その前髪の隙間から除く目は緑の色をしている。


つい緑の目を見て、わしはとある知り合いを思い出した。


「いかにも。わしは全ての吸血鬼の始めとなる存在。始祖なるもの。名前はいやに長いから――もう、きゅうけつきさんでよい」

「私も吸血鬼なんですけどねぇ……」


雀猫。すずめねこ、と呼ぶらしいその看板の下の、錆だらけのドアを開けばそこにいたのは吸血鬼。


紅いカーペットが敷かれた床の上に、妙な形をした机がある。綾曰く、麻雀という遊びをするためのものらしい。それが複数個この部屋に並んでいた。


隣に視線を移せば本棚がそこにあった。小さ目の本がいくつも仕舞われている。綾曰く、それは全てが漫画本であり、汚さず、必ず返却するという条件を受け入れるのならば、これは自由に読んでも良いのだとか。


日本の小説などは漢字等々がわしには難読だが、漫画は言葉の意味が理解に易く、わしの好みに合う。この様なわしの全く知らぬ文化に触れるのは心底楽しい。


「帰り道に私が考えました。呼び名は必要でしょう?」

「チープねぇ……見たところ、本当に始祖の吸血鬼よ。と――言うか、私が吸血鬼だから良く分かる……のよね」


「ふふふ、グランドマザーと呼ぶが良いぞ」

「おばあちゃんになっちゃいますけど、それ」



女の歯、ふたつの尖った特徴的な歯は、間違いなく女が吸血鬼であることの証明をしていた。

女はその歯を魔力で隠している様だが、魔力がない人間は騙せても、始祖であるわしには通じない。吸血鬼なんて皆、わしにとっては息子娘のようなものであるし。


「まあ、それでわしは良いし、構わない。して、そこなる女吸血鬼よ。名をなんと言う?」

「私は――――」


そう言って、女は姿勢を正した。


「私は、――森香登(かかと)。雀荘『雀猫』のマスター兼、東京吸血鬼殺し(仮称)の総長――っっても今は、二人しかいないんだけどね」


「じゃ。かかと、というのか。かかと、よろしくじゃ。」



森香登。

それが女の名前だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ