表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/87

血を吸ってもいいですか-プロローグ①


表情に抑揚が無く、つまり殆ど無表情。そこから感情は伺えない。その顔つきはかわいらしく、真顔であるのが勿体ないとつい思ってしまうほど。


黒く長い髪に日本人らしい真っ黒な眼。


その美しい髪は風になびかれ、夜の空間で踊っている。

しかし、その揺るがない立ち姿は精悍そのもの。


そんな少女が、夜の東京を歩いていた。


人の気配はまるでなし、そこには、その街にはまるで、少女しかいないようだった。

少女はふと、何かに気づいたように、そこに立ち止まって、夜の空に佇むその月を見た。


――少女はその、満ちた月を見た。月は煌々と光っていた。


***



「私は高校1年生で、私は吸血鬼殺しだ。」


「……嬢ちゃん、何て?」

「高一の吸血鬼殺しと言ったんです」


繰り返されたその言葉に、目の前の長髪で背の低い男は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。


東京の路地裏。時刻は遅く、日を跨いだばかり。


「ええっとね、嬢ちゃん。言っている意味が良く分からない。き、吸血鬼殺し?」

「そうです。」


「……コウモリでも殺すのかい?」

「いや、私が正真正銘、殺すのは人喰いの鬼、バンパイアです」


この路地裏には、男と私ふたりのみが立っている。

人気は無く、昼間は人で溢れていたこの路地裏には、街の街灯の光すら届かない。


午前2時。


「雀猫」という、看板のネオンだけが、この路地裏の地面を照らしていた。


「ええっとね、じゃあ、ぼくに何の要件?」

「いや。それはあなたが一番よくわかっている筈です」


男は一呼吸おいて、それから言葉を発した。

その、不気味に高い、少年らしい声で。


「…………うそお、実在したんだ」

「貴方を今から尋問します。場合によっては殺します」


私はコートに隠しておいた、サイレンサー付きの拳銃を取り出す。


手によく馴染むその拳銃の弾は、銀の弾丸。

男にそれを向ける。


「悪いことした覚えはないんだけどなあ」

「みんな始めはそう言います、特に、私が尋問した悪人は全員口を揃えたようにそう言ってます」

「……うっそお、もう悪人扱い?」

「ウチの事件簿の一件目になれるといいですね。ほんとに悪いことをしてない吸血鬼のリストの。まだ白紙なんですよ。」

「ふーん。で。その悪人のリストに空きはある?」


男はニタリと笑う。


「ええ……たっぷりと」


その言葉は宣戦の布告。

そして、戦いの火蓋は切って落とされた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ