抜け毛とムダ吠え
B…ボケ T…ツッコミ
B「アメリカンショートヘアのウズネだな? イエネズミのチュー吉殺害容疑で逮捕する!」
T「はにゃ? そう言うお前はビーグルのコタロウだにゃ。 ひょっとして犬のお巡りさん気取りかにゃ」
B「とぼけるな! お前の容疑はすでに固まっている! 現場に落ちていた抜け毛が証拠だ!」
T「ウチは毎日のお手入れがいいから抜け毛は少ないにゃ。抜け毛まみれのお前とは違うのにゃ」
B「わ、私の抜け毛だってほんの少しだけだッ!」
T「季節の変わり目はコタロウの抜け毛がめっちゃ服につくって、ご主人がいつもぼやいてるのにゃ。ほんとビーグルは最悪の抜け毛だにゃ」
B「くッ! 抜け毛の話はもういいッ! チュー吉の死体はウズネのキャットハウス近くで発見された! つまり犯人はお前だ!」
T「あの死体ならウチも見たにゃ。ウチが犯人と言うなら死因は何にゃ? ちなみに外傷は何も見当たらないのにゃ」
B「目撃者の証言がある! ウズネは怪しい毛玉を吐いていたそうだな? 今までもネズミをとって食べていたのろうッ! 吐いたのはきっとその被害者の毛だ!」
T「はぁ~。ご主人がいつも絞り出しのオヤツをくれるのにネズミなんて食べるわけないのにゃ。何でも拾い食いする意地汚いコタロウとは違うのにゃ」
B「い、言い掛かりはよせッ! ウズネこそ外でカマキリやらコオロギやらのゲテモノを食べてるくせに!」
T「コタロウは遅れてるにゃ。今は人間だって昆虫を食べるのがブームになってるにゃ。つまりウチこそ流行の最先端なのにゃ!」
B「なるほど、ネズミを食うのもその流行とやらか!」
T「またそれにゃ~? も~証拠もないのに変な言い掛かりはやめて欲しいのにゃ」
B「ふふふ、証拠ときたか。目撃者によれば貴様、砂の中に何か隠していたらしいな? きっとそれがチュー吉を殺害した凶器だッ!」
T「にゃッ!? にゃ、にゃにをバカなこと言ってるのにゃ!」
B「ほら動揺してる! 動揺してるぞッ!」
T「す、砂の中に凶器なんてないのにゃ! 酷い言い掛かりにゃ!」
B「ほほう。ならば確認しても良いのだな? そうれ、ここ掘れワンワン! ここ掘れワンワン!」
T「や、やめろ変態ッ! 爪出しネコパーーーンチ!」
B「ギャーーーッ!」
T「シャーッ! いくらウチを疑ってもコタロウのムダ吠えのようにムダ、かつ迷惑なのにゃ!」
B「む、ムダ吠えだとッ! 違うぞ、私はご主人を危険から守るために吠えているのだッ!」
T「知らないのにゃ? ご主人はコタロウのムダ吠えが酷いから、ビーグルじゃなくてチワワにすれば良かったって後悔してるのにゃ!」
B「バカなッ! あんな寒くもないのにプルプル震えるだけの、釣り上げられた深海魚みたいな目玉をしたチワワをかッ!?」
T「あッ、ご主人が帰ってきたにゃ! にゃーーーん! ご主人お帰りにゃーーーん!」
B「ワンワン! ご主人! ワンワンワワンッ! お帰りご主人! ワンワンワワンッ!」
T「え、このネズミ、ご主人が置いといた毒で死んでるから食べちゃダメにゃ? そうだったのにゃー。もちろん食べたりしないにゃ。ほれバカビーグル、事件は解決したにゃ!」
B「ワンワン! ご主人! ねえ、なんでチワワなんか抱いて帰ってきたの? えッ、どうしてぼくをキャリーバッグに入れるの? ご主人の実家に連れてくってどうして? ワンワン、ワオーーーンッ!」
T「あにゃー。ムダ吠えコタロウはご主人の実家行きにゃ。達者でにゃ~。で、お前は新入りのチワワだにゃ? まあこれからヨロシクなのにゃ~」
B「キャンキャン! キャンキャンキャキャキャン! キャキャキャキャン! キャキャーーーン!」
T「ご、ご主人、このチワワ……あにゃ~、ご主人ってば、またやっちまったって顔してるのにゃ~ん」