4話 ひまわりタイツ
痛い……
ああ、赤髪少女に殴られたんだっけな。
それにしても、なかなかいいパンチだ。
「ヒグルマさん」
エリカさん!?
目を覚まし、あたりを見渡すと、ベット横の椅子にエリカさんが座っていた。
「よかったです。起きられたのようで」
「あの赤髪の少女は?」
それを聞きエリカさんが、部屋の隅のほうを向く。
そこには、赤髪の少女が、壁に寄りかかり、腕を組み、こちらのほうを見ていた。
「ひぃ」
驚きで、なんか変な声が出てしまった。
そして、赤髪の少女が、近づいてくる。
「ごめんなさい」
その意外な言葉に驚いた。
「怪我人とは、知らずに、殴ってしまって、仕事から、帰ってきてたら、知らない男の人が家にいることが、わかって、それで……」
「別に構いませんよ、自分も悪かったので、気にしないでください」
痛みも、もう大したことないし。
パンっ!という両手を叩く音が部屋に響き渡る。
「ヒグルマさんとの仲直りが、終わったころで、自己紹介しましょうね」
「はい、お姉ちゃん、わたしの名前は、ニーナ」
「自分の名前は、ヒグルマと言います」
まあ、誤解が解けて良かった。
「そうだ、ヒグルマさん」
エリカさんは、そう言い、紙袋を持ってくる。
「裸のままの姿が気に入っているのら、すいませんが、服を着てもらえるとありがたいんですが」
「気に入っていませんよ!」
変態だと思われている!?
「それは、よかったです。服を買ってきたので、よかったら着てください」
「おお」
「男物は、どんなのがいいのか、わからないので、もしかしたら、センスが悪いかもしれませんが」
「そんなことないですよ。エリカさんが選んでくれた、服なら、どんなのでも嬉しいですよ」
そう言い紙袋から、服を取り出すと、全身緑のタイツと、ひまわりのかぶりものが出てきた。
んっ!?
これを着ろというのか!?
「エリカさん、服をまちがえたということは、ないですか?」
「それですよ、ヒグルマさんに似合うと思ったのですが、嫌でしたか?」
「いえいえ、そんなことは……」
おれの名前の日車と言うの名前は、ヒマワリの別名でもあるが、まさかこんな変態みたいなものを着るはめになるとは。
「私達は、部屋を出ていますので、ヒグルマさんは、着替えてくださいね」
しかたない、覚悟を決めて、着るしかない。
くそう、なんかぴっちりと肌にフィットする。
股間のもっこりは、でかい葉っぱのアクセサリーで、隠されていて、よかった。
なかったら、やばかった。
よし、最後にヒマワリの被り物を被って完成だ。
鏡が、ないから、自分の全身の姿が見えないが、変態だというのは、わかる。
まあ裸よりは、ましだろう。
「終わりました」
そう言い、ドアを開けると、エリカさんとニーナさんが待っていた。
「よく似合っていますよ、ヒグルマさん」
「うえ……」
嬉しそうに見てくれるエリカさんに対して、ニーナさんの目は、まるで、ゴミを見るような目である。
「ニーナもどう思う?」
「とてもいいと思うよ、さすが、お姉ちゃんのセンス」
うむ、ニーナさんは、エリカさん、大好きっ子だな。
「さて、ヒグルマさん、は、異世界から来たらしいので、右も左もわからない状態でしたっけ?」
「はい」
その返事を呆れるように聞くニーナ。
「はぁ!?異世界から来た?なにを寝ぼけたこと言ってるの?」
自分もそう思う。
だが、本当なことなんだ。
「信じられないかもしれませんが、事実だと思います。」
「まあ、わからないだらけのヒグルマさんに、私が、いろいろと教えてあげます」
いろいろと……!?
いかん変な妄想をしたら、今の俺は、全身タイツだから、あかんことになる。
「最初は、住むところですね」
「はい」
「ニーナ、お留守番しててくださいね、ヒグルマさんの家を選びと町の案内をしてきます。」
「わかったよお姉ちゃん、それとヒグルマさん、ちょとこっちに来てください」
ニーナさんの手招きに誘われて、向かう。
なにやら、内緒話のようだ。
「なんですか、ニーナさん」
「お姉ちゃんに手を出したら、絶対に殺すから……」
耳元で、そう囁く。
そして、赤い瞳で、睨まれた。
この目……絶対にそうするだろう。
「き……肝に銘じておきます……」
そう言いニーナさんから、離れる。
「ヒグルマさんとニーナは、仲良しさんですね」
「えっ!?」
敵意むき出しですよ、妹さん。
「それじゃあ、お姉ちゃん、行ってらっしゃい」
エリカさんが買ってくれていた茶色のスニーカーを履き、外に出る。
さて、外は、どんな世界なんだろ。




