11話 呪いの家と妖精
マッチョ先生のパンツ授業、なんとか終わった。
なんで、おれだけ、こんな目に……
くそう、夢に出てきそうだ。
はぁ、とにかく今日は、寝るか。
ほとんどなにもない部屋だが、枕と毛布だけは、買った。
生活費に余裕が、できたら、家具とか服とか、いろいろ買いたいものだ。
まぁ、今日は、とにかく寝よう。
「ねぇねぇ」
なんだ、なんか女声が、聞こえてきてるような気がするのだが。
「ねぇねぇ」
まただ、どこからだ?
窓の外を見ても、歩いている人は、いる人は、いない
まさか、お化けか!?
そういえば、通行人が、前この家に、お化けが出るとか言ってたような。
くそ、とにかく無視して、寝るしか、ない。
「無視するんじゃないわよ」
怒られた!?
んっ? 声は、壁から、聞こえているような気が……
気のせいか?
いや、やっぱ壁からだ
壁になんか、声の出る特殊な仕掛けでも。してあるのか?
それとも、壁の中に、人が、埋まっているのか?
さすがに、それは、ないか……
「ここの封印を解除、してちょうだい」
「封印って、なんのことだ?」
「壁の封印さ」
封印か……
試してみるか、まだ、学校以外じゃ、あんまり使ったことないが。
光の手の能力を使ってみると、壁の中に書かれた、文字が見えた。
壁の中には、ふういんと書かれていた。
やっぱり壁の中に文字が、ある。
だが、(か)と(べ)の文字じゃなく、(ふ)(う)(い)(ん)の文字だ。
まあ、いいか、抜き取ってみよう。
光り輝く手は、壁の中をすり抜け、(ふ)(う)(い)(ん)の文字を掴むことが、できた。
壁は、光だし、その中から、手のひらサイズの小さな少女が、出てきた。
「ふぅ、しゃばの空気は、おいしいわ」
その声は、さっきから壁の中で、聞こえていた声だった。
そこには、緑の髪の蝶のような綺麗な羽に、美しい緑のドレスの少女がいた。
その姿は、まるで、妖精だ。
「妖精?」
「そうよ、妖精のリリーベルよ、よろしくね~」
やっぱり妖精なのか
「ヒグルマです。よろしくお願いします」
「封印を解いてくれて、ありがとね、ヒグルマちゃん」
「どういたしまして」
妖精は、なにかを探すように、あたりを見渡す。
「聞きたいことがあるんだけど、メアリーって、名前の女の子、知らない?」
「誰ですか?」
「魔女のような恰好で、この家に住んでいるやつなんだけど」
「いえ、自分は、空き家だった、この家に、ちょと前に、引っ越したばかりなので、その辺の話は、よく知らないです」
「そう……」
妖精は、落ち込んだような顔をしたが、すぐ元の元気な顔に戻った。
「なぜリリーベルさんは、壁の中に入ってたんですか?」
「メアリーちゃんに、壁の中に封印されて、何年も長いこと閉じ込められたのよ」
長いこと壁の中に!?
「それは、なんとも、ひどいですね、おれなら、何年もそんな中にいたら、頭が、おかしくなってしまいそうです」
「まあ、人が、こないときは、寝てたから、そこまで、気にもしてなかったけどね、人間と違って、妖精は、何十年と眠っていられるのよ」
そこまで、苦痛な日々でも、なかったのか。
「なんで、壁に閉じ込められたんですか?」
「んまあ、私は、いたずら好きでね、ちょと怒らしちゃったのさ」
「いたずらぐらいで、何十年も閉じ込められていたんですか?」
「そうなのよ、メアリーちゃんのパンツを鳥のように飛ばして、遊んでたら、このざまよ」
う~む 罪の判定に困るな。
この妖精もなかなかひどい。
「まあ、こうやって、いたずらするたびに、壁に封印されるのは、いつものことだったんだけどね」
いつものことだったのか。
「それでも、次の日には、出してくれてたのに、どこいったんだろう、メアリーちゃん」
ん~、このリリーベルという妖精とメアリーという子は、友達だったのか?
ちょと寂しそうな感じだ。
「メアリーという人のこと、この家を貸してくれたエリカさんに聞いてみますかな」
「お~、そうしてもらえると、助かるわ」
「では、行きますか、エリカさんの家に」
そして次の日、やってきた、エリカさんのマイハウスに。
家のベルを鳴らすと、美しいエリカさんが、出てこられた。
「ああ、ヒグルマさん、朝から、どうされましたか?」
「ちょと聞きたいことが、ありまして」
「ん?そちらの小さい人は?」
「ああ、こちらは……」
「あたしは、妖精のリリーベルよ」
肩に乗っていた、リリーベルは、羽を広げて、飛んで、見せた。
「私は、エリカと言います」
「あんたに聞きたいことがあるのよ」
「いいですよ」
「メアリーっていう、今のヒグルマの家に住んでいた人間を知らない?」
「ふむ、メアリーさんですか、知ってますよ、行方不明になられた人ですね」
「行方不明?メアリーが?」
「急に、なにも言わず、姿を消したみたいですね、貸していた家も家具も、そのままで」
なんか事件的な話になってきた
「そして、3年待っても、戻ってこられなかったので、行方不明扱いにして、家の家具は、回収して、別の人に貸したのですよ」
「なるほど、そんなことがあったんですか」
「ですが、次々と、住んだ人が、おかしな声を聞いたという情報が流れてしまい、別名、呪いの家という名前が、ついてしまって、困っていたツバサさんに、お譲りしました」
「メアリーちゃんが、行方不明か…… びっくりだわ」
おれも、自分の家が、呪いの家という名前で、呼ばれてたのが、びっくりです。
「まあ、メアリーさんは、私が家を管理する前のことなので、会ったこともないのですが、依頼受付所の登録者のほとんどで、捜索したけど、見つからなかったようです」
「情報感謝するわ」
メアリーは、空中で、スカートを掴み、お辞儀する
「エリカさん、朝から、ありがとうございました」
「いえいえ」
「それじゃあ、エリカさん、またこんど~」
「はい、ヒグルマさん、リリーベルさん、またこんど~」
リリーベルさんと手を振り、エリカさんの家を後にした
「リリーベルさんは、これから、どうします?」
「久しぶりに、私は、他の妖精に会ってこようかな」
「そうですか」
「そうそう、なんかお礼しないとね、エッチなお願いでも、なんでも、願いをいいなさい」
エッチなお願いだと……
その言葉をエリカさんから、聞きたかった。
「願いですか……考えておきます」
「また会いに来るわ、その時までに、考えておきなさい」
そう言って、妖精は、空に消えていった。
おれも帰って、飯にしよう。




