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ギフト

キン!という音が鳴るような感覚がした。

それと同時に周りの動きが止まる。

いや、自分自身も動けない。なのに感覚はある。

時間が止まったように思えるが、実際はどうなのだろう。


そして、脳なのか、心なのか分からないが知っている声が聞こえてくる。正確にいうなら、聞こえてくるというか直接響くような感じである。


「今、何を話そうとしました?」


「おお、その声はアオさんですね!びっくりするじゃないですか。」


「…やっぱり覚えていたんですね。」


「ああ、忘れるとか言ってましたもんね。なんかラッキーだったのか覚えてます。」


「…困ります。」


「…え?」


「困るんですよ。ここの事を覚えていられると…!

ここでの話を覚えているなら、意味分かりますよね。」


背筋が凍るような冷たい声で言われる。


「本来転生された方に私が干渉するのは、あまり望ましくありません。が、しかたありません。その部分の記憶を消させて頂きます。前後の記憶にも影響が出るかもしれませんがお許しください。」


「いや、ちょっと待って。いきなり記憶を消すとか怖いし、いやや!!」


しかし、こちらの話を聞く事なく行動に移される。

雷に撃たれたような衝撃とともに体が光に包まれる………



☆♪☆♪☆



「………………ココハドコ?ワタシハダーレ??」


「………ふざけてます?ふざけてますね。ふざけてますよねぇ……!!」


「ごめんなさい。ごめんなさい。私の心?頭??どっちからか分からないけどそこで激怒しないで!許してアオさん!!」


あの、感情の機微を伺わせないアオさんの感情のようなものが垣間見えた。ロボットか何かのように、おおよそ感情が出ない人かと思っていたけど、そう言うわけでもなさそうだ。


「…おほん。どう言う事でしょう?記憶が消せない。と言うか完全にレジストされましたね。何かやりましたか?」


自分でも意外だったのか、ちょっと照れたような雰囲気を感じさせながら、通常運行のアオさんに戻る。


「何かやりました?じゃないでしょう!問答無用で攻撃してきておいて!!マジでビビりましたよ。」


「自覚がない、と言うことはあなたの能力が影響したのか、それともこの世界に定着してしまったあなたに対し、干渉する事を拒まれたか…。何にせよ、あなたの記憶を消せないことは分かりました。」


ここでアオさんは思案するような気配を漂わせる。そこいるわけではないので、そんな雰囲気を感じる、と言った程度のものだが。


「仕方ありません。最終手段です。今からあなたに交渉を致します。前世の記憶を持っていることは、この世界の人間の中にはある程度いるので問題ありません。ここまではあなたが望んだ通りです。しかし、輪廻の間の記憶は別です。あの記憶は消去されなければならない。ですが、あなたの記憶は消せない。従って、あなたにお願いがあります。輪廻の間の話は一切他言しないで下さい。その代わりといっては何ですが、貴方の望む事、何でもとはいきませんが可能な範疇で叶えさせて頂きましょう。」


これはラッキーなのか。どうなのか。なんか多大なリスクを背負った気がするけど…。

いやでも、結果だけ見ればラッキーじゃね?なんかくれるって言っているんだし。ヤバい。マジでどうしよう…。

急にこういうラッキーパンチが来ると困ってしまう。お金?魔法が使えるように??空を飛ぶ???可愛い女の子と……ムフフ…


「…心の声がダダ漏れですよ…」


「…すみません。つい興奮してしまって。でもどうしたもんでしょう。前世の記憶を辿ってもそれなりに幸せだったと言うか、不幸では無かったんですよね。恐らく超普通の生活だったんです。なので願いが属人的と言うか、面白みに欠けると言うか…。小さなことで凹んだり喜んだりしてる記憶しかなくて。なんかそんな普通の生活がおくれる事が幸せなんだろうなぁ〜なんて感じていたような…」


「つまり、前世では普通の生活を送れる事、その上で日々の小さな幸運に満足していたと?」


「まぁそんな感じですかね…」


「では決まりました。貴方にギフトを贈ります。お受け取り下さい。」


「えっ?」


「えっ??何か問題がありました?」


「えっ???なんかもう決まっちゃった…感じ…です?」


「はい。決まりました。」


「変更は?」


「できません。」


「あれ?なんか私望みました?これにしてくれっ!的なこと言ってないと思いますし、何より普通こういう場面って、その願いでいいのか?みたいな確認て入りません?お約束として…」


「あなたが、前世を生きてきた中で得た結論が先ほどの内容かと思いましたので、それを叶えさせて頂きました。だって今この瞬間で欲しいと思ったものより、絶対必要なものだと思いませんか?」


「…っぐ。そう言われるとなんか正しそうな気がする。」


…でもなんかやってしまった。勿体無いことをしてしまった。という気持ちが消えない…


「そんな事ないですよ。

授けるギフトは【小さな幸せ】。すごい幸運な事が起こり続ける、ということはありませんが、日々の中でも戦闘においても活きてくるいいもの。…だと思いますよ。」


なぜ最後にちょっと間があった。しかもなぜ小さなって付けた。普通に幸運とかでよくない?小さな嫌がらせ感があるような…


「そんなこと、ありませんよ。それに、この状況で、授けられるものには限界がありますから。そこは理解してもらいたいものです。」


「…そうですか。まぁ棚ぼたみたいなもんなので贅沢は言えないですしねー。」


「そうですよ。あまりに巫山戯たこと言ってきたり、交渉に応じてくれないようでしたら、強引にでも排除しようかと思ってましたから。」


「やめて。真面目なトーンでそう言うこと言うの。怖すぎるから!」


「…冗談です。」


だから、その間をやめて欲しい。どうしても冗談とは思えないのだ。


「心の声が漏れてますよ。まぁ言わなくても分かってしまうんですが。今の状態ですと。」


「そうです。そこが気になっていたんです。今ってどういう状況なんですか?時間が止まっているとかそういうことなんですか?」


「時間を止めているというよりは、外の世界と隔絶された中で、あなたの中、つまり精神世界の中の時間を引き延ばしている。といったところでしょうか。ですので本当に僅かですが、時間は流れています。また、あまり長くこの状態を維持することはできません。流石に不自然になってしまいますから。」


「ということは、今私とアオさんは精神の中で話し合っているってことですか?それがどういう事なのかは理解できませんが。」


「まぁそういう事です。このことを理解する必要はありませんよ。かなり特殊な空間であり、そうそう経験できる世界でもありませんから。私もそう簡単に取れる手段ではありませんし。そういった意味でも安心して貰っていいですよ。私が頻繁にこういったアプローチをかけることはありませんから。」


詳しい仕組みは分からないが、とりあえず分かったこと。

…マジで消されなくてよかった。

そう言うことである。本当に巫山戯たことを言っていたら消されていたとしてもおかしくはない。だってこんな無茶苦茶なことやってのけているのだから…。


「と言うことで、元の状況に戻しますね。それでは新しい世界楽しんでください。このことも含めて決して他言してはいけませんよ。もしそんな事があった時は…分かりますよね?」


「だから、分かってるから!去り際まで怖い事言わないでーーー!!」


そう全力で叫んだ次の瞬間には、意識が謁見の間に戻されたのである。

お読みいただきありがとうございます。

宜しければ、評価やブックマーク頂けると非常にありがたいです。

どうぞよろしくお願い致します。

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