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輪廻の間③

「では、説明に戻らせて貰います。」


ペースを取り戻したアオ(偽)さんが、説明を始める。

本当にしっかりした人やで。友人に1人は欲しいタイプですな。こういう人がいると、会議なんかも進めやすい。俺みたいな脱線しやすいタイプには特に。

…って今関係ないよね。なんだか集中できてないなぁ。今回はしっかりしよう。今後の進路に影響ある話だし。

…進路って言っちゃった(笑)

…はい。すみません。


「リョウさん聞いてます?」


「はい。聞いてます!」


「では私は今なんの説明をしてましたか?」


…そうきたか…こうなったら…!


「パラメータが決まる的な話です!さっき話したことをもう一度説明してくれてたんですよね。」


……


「ちゃんと聞いていたんですね。失礼しました。」


当たった!ふっ…俺の運も捨てたもんじゃないな。

…って、こんなことに運を使わずパラメータ決定の時に使った方がいい気もするけど…


「つまり、この空間自体が命や魂といったものに大きな影響を与える機能であると言えます。また、私がリョウさんにお聞きしたように、転生先もある程度は決める事ができます。この価値や影響力の大きさはわざわざ説明するまでもないですよね?」


なるほど。そういうことか。もしここの存在が明らかになり、その上でアクセスする方法が出来てしまったら…


世の中は思っている以上に悪意や欲に満ちている。もちろん善意や優しさもあるが、それ以上にそういったものと触れ合うことの方が多いのではないだろうか。


特に欲は本当に恐ろしい。際限がないのだ。ここが、そういった人達に占拠されるというのは想像するだけでも寒気がしてくる。


そしてもう一つ。そういった人の在り方というのは、世界が変わっても変わらないものらしい…。


「分かって頂けましたか。ですので、ここでの記憶は消すしかないのです。」


「分かりました。お2人と話した記憶が無くなるのは寂しいですが、仕方ないですね。でも無くなるのをいい事にいろいろ聞かせてもらってもいいですか?」


「ええ。どうぞ。そういうお約束でしたし。」


そう言って綺麗な顔で微笑んでくる。


…惚れてまうやろ…


「では遠慮なく。1番気になっていたのは、死んだら誰もがこの空間に来るのかと言う事です。」


今ここに至るまで、他の人に会うことは無かった。そこそこの時間ここに居るはずなのにである。そうなると、幾つか答えは考えられるのだが…


「誰もが、ではありません。そもそも、誰もが転生、つまり生まれ変われる訳ではありません。転生するためには幾つかの条件が必要になります。魂の強さや想いの強さなどがそれにあたります。魂が疲労していたり、生きる気力が弱い方などは辿り着けないことが多いです。逆に言えば、健全な魂を持った者が、善意でも悪意でも欲望でも、それこそ生きたいと本質的に強く思うことでも、ここにこれる可能性が高いという事です。」


「そうしたら、ここにずっと居たからといって知り合いに会える訳ではない、という事ですね…」


「そうですね。それにここと同じような空間は並列で数多く存在していますし、また、ここに滞在できる時間も限られています。」


まぁそうだろう。ここ一つだけで、数多くの世界から来る人の魂を捌けるとは到底思えない。


「それともう一つ。どの世界にも魂の無い存在が数多く存在しています。…そうですね。なんと表現すると分かりやすいのか…」


ここでちょっと思案するようにアオさんの話が止まる。


魂の無い存在。ロボット的な話…ではないか。植物とかそういうものを指してる訳でもないだろうし。そもそも、ここで使われている“魂”という単語が何を意味しているのかもわからない中では、考えられる幅も限られる。


「…適切な表現かは微妙ですが、あなたがいた世界の、ゲームと呼ばれるものの中に出てくる、NPC。これが1番近いかもしれません。自分の意思で動くのではなく、世界を維持するために、設定された内容に基づいて動く。そういった方が多く存在しています。その方達は、そもそもここに来ることなく、一つの役目を終え、命が尽きた時は、同じ世界の中で、次の役割を与えられ生まれ変わります。」


「ちなみに、人以外の動物が全てNPCとかそういう訳でもありません。同じように人の全てに魂がある訳でもありません。」


「なんでそんな存在が必要なんです?」


「魂を持つ者だけでは、世界の維持が行えないから、と言うのが1番の理由でしょう。先程も説明したように、魂を持っていてもすべての生物が転生できる訳ではありません。加えて、新しく生まれてくる命全てに魂がある訳ではありません。そうなるとどうしてもそういう存在が必要になってしまうんです。」


「なんかそれって可愛そうじゃありませんか?NPCの人達って生きてるのに消耗品みたいに扱われて…」


「可愛そう…ですか…。ただ、NPCの人達も魂を持つ人達も自分がそうだというのは分からないですし、相手がそうだというのも分かりません。ですので、問題はないかと思いますが。」


うーん。なんだろ。この腑に落ちない感。今まで生きてきた中で出会った人の中にもそういう人が多かったのかもと思うとすっきりしないのだ。言っている意味も分からなくはないが、納得していい話とも思えない。


「なんか納得できないですね。というか、そこまでして世界の維持って必要なんですかね?」


「世界の維持が必要かどうかですか…。私の立場では何とも言いようがない話ですね。」


まぁ、そうだろう。言い方は悪いが、お役所の人に、今の国のあり方が間違っていると窓口で抗議したところで、その人に返答しようがないのと同じである。


「すみません。私としてもアオさんと言い争いをしたい訳ではありませんので。ちょっと気になってしまったんです。」


「いえいえ。感じ方や見方は人それぞれですから。そう言えば見え方という点で、リョウさんが興味を持ちそうな話がありますよ。例えば、リョウさんが生きていた世界には魔法とか存在していなかったですよね?」


「そうですね。そういうのに憧れてましたが、残念ながらありませんでした。」


「でもそれ本当になかったんでしょうか。ただ認識できていなかっただけ。もしくは、隠されていただけとか。加えて言うなら、薄皮一枚隔てた先に、そう言った世界が広がっていたかもしれませんよ?」


「マジですか!?」


「ええ。本当です。世界ってそういうものなんですよ。もちろんそうだったと言っているのではなく、その可能性があったと言うことですが。」


「可能性っていうのはどういう意味ですか?」


「私も全ての世界を知っている訳ではありませんので。ただ、そういう例はありましたので、お話させて頂いたんです。」


「なるほどそうなんですね。と言うか今更なんですが、ここまで話しちゃって大丈夫なんですか?」


流石に話し過ぎなのではないかと心配になる。忘れるからとは言え大丈夫なんだろうか。話をさせて貰っている感じからしてもトップという訳ではなさそうだし。口は災いの元。変に目を付けられないといいが…。そして、なんか変なフラグが立っていないだろうか…こちらは自分への心配だが…。


「ダメでしょうね。流石に話し過ぎました。リョウさんが聞き上手過ぎて、上手く引き出されてしまいました。」


あ、さらっと俺のせいにしよった。汚い。ズルい。むしろノリノリで自分から喋っていたのに。


「そんなことないですよ。アオさんがノリよく…」


「では、転生先の話に戻しましょうか。どうされたいですか?」


無理矢理被せてきよった。最後まで話させないように、声張ってきよったし。まぁ心の広い私はしょうがないから合わせてあげるけど!


「そうですね。やっぱり剣と魔法の世界が良いですね。手から火を出すとか、空飛ぶとかやりたいんです!

そういう世界ってあるんですか?」


「ありますよ。そうしたら、そういう世界に行けるように設定させていただきます。他に希望はありますか?ご自分に関わるものでも構いませんよ。年齢とか性別、種族とか。」


「そこまで選べるんですか!?」


「必ず叶うかはお約束出来ませんが、可能です。ただ、世界と年齢に関して一点注意事項があります。転生が行われる場合、前世の記憶を引き継ぐかどうかというのがあるのですが、これは転生する世界と年齢設定による影響が色濃く出ます。例えば、記憶を引き継ぎやすい世界においては、転生者という者が普通に存在しています。それでも、0歳児からの転生とした場合、記憶が引き継がれる可能性は低くなります。これは赤ちゃんの時に持てるスペックに起因していると思われます。ただ、記憶が後々戻る事もあるので絶対に引き継がれない訳でもないんですが。その上でどうされますか?」


なるほど。そういう事もあるのか。そう考えると、俺が今までいた世界は極めて記憶が引き継ぎにくい世界だったのだろう。

…もっともさっきの話からすれば気付かなかっただけかもしれないが。


「そうしたら、記憶を引き継ぎやすい剣と魔法の世界っていけます?」


どうせ転生するなら、記憶は残したいよね。じゃないと、念願が叶ったー!ってならないし。


「可能です。ではそう言った世界を探してお送り致します。他はどうしますか?」


そう話しながら、何処かと通信をしているらしい。アオさんの周りに光の玉のようなものが出ては消え、時には手で触れながら何かをしている。


「そうしたら、まず性別は男で、年齢は…」


「あ、マズい…」


アオさんが急に慌て出す。と同時に、俺の周りも光り出し、部屋が輪郭を失っていく。


「ちょっと時間を使い過ぎたみたいです。ここにいられるリミットがきちゃいました。本当は見た目とかも決められますし、あなたが獲得した能力とかの説明もしなくちゃいけないのですが、時間がないので諦めてください☆」


「下さいじゃないでしょうが!どうしたらいいんですか?」


「とりあえず見た目を作らないといけないので、そのイメージを頭に浮かべて下さい。あと年齢も。それでどうにかしますので。さっきも言いましたが、記憶を引き継ぎたいなら年齢は特に気を付けて下さいね。それでも、残らない事がある事もご了承下さい。

あなたと話せて楽しかったですよ。もう二度と会う事もありませんが、ご達者で。それでは良い人生を!」


その言葉を最後にアオさんも見えなくなる。

そして俺は年齢と見た目を頭に浮かべる。てか、人生掛かってるのに雑過ぎない?結局なんなのよ。このバタバタ感。そしてやっぱり時間かけるとこ間違えたー!俺のバカ…。


そして最後にもう一つ。


「やっぱりあいつ心を読んでるやん!!」

お読み頂きありがとうございます。

まだまだ未熟者ですが、どうぞよろしくお願い致します。


お話はやっと転生先の世界が始まります。

と言っても、本格的な冒険が始まるまでにはもう少し時間が掛かるのですが。


そこも含めてご理解頂けますと幸いです。




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