輪廻の間①
「それでは試験の概要について説明します。」
こうなりゃなんでも来い!気合いでどうにかしてやる。これでも学生時代は…学生時代は……ダメだ…それこそいい思い出がない。一夜漬けで乗り越えた記憶しかない。今は一夜漬けさえ許されない状況。考えろ!考えろ俺!!これで人生決まるぞ、俺!!そうだ…!
「あの〜…ちょっとご相談が…」
「テスト対策したいから、ちょっと待って、とか無理ですよ?」
もう絶対心読んでるやん。それ以外ありえへん。こんなドンピシャで当たる?当たらへんやろ。普通。終わったわ〜。
「はい、そこ。諦めない」
「学校の先生か!」
「こういうノリがお好みなのかと思いまして。」
「…まぁ好きですけど!」
なんだろう。短期間、いや、ホントわずかな時間しか共有してないのになんか見透かされてる。嬉しいけど悔しい。なんだろこの感情…
「愛情ではありませんよ?」
「だから、絶対心読んでるでしょうが!」
しまった。心の声が漏れてしまった。
「本当に読んでませんよ。分かり易すぎる性格…もとい素直な性格なんじゃないですか?」
バカにされた後フォローされた…悔しい。悔しいです!
「あの〜、このやり取りも楽しいのですが、そろそろ本当に試験に移らさせて貰って良いですか?時間の関係もありますので…」
大人、完全に大人のセリフですやん。人生かかってるんだからいいやん。ちょっと時間かけても…
「そんな目で見ないで下さい。話を進めさせて貰えないから言えませんでしたが、予習とか要らない試験ですよ。あなたがいた世界の表現で言うなら心理テストみたいなもんです。」
「………」
「………?」
「………………先に言って〜!!」
「話を聞かずにテンパったのあなたでしょーが。」
「そうでした?」
「そうでした。」
「すみません。」
「許します。」
「ありがとうございます。 …この会話何ですか?」
「知りません。」
「ですよねー」
「本当に話を進めていいですか?」
「よろしくお願いします。」
「おほん。では改めまして、これから試験を行います。隣の部屋に移動して下さい。」
あ、移動するんだ。ここでもちょっと会話したいけど、我慢しよう。本当に話が進まなくなりそうだし、案内人の人にブチギレられても良いことないだろうし…。
そんな事を考えながら促されるままに進んで行く。
しばらく進んだ所で、大きな柱が2本立った場所にたどり着く。
「そのまま進んで下さい。その先が試験会場になります。」
なんか如何にもな感じだなぁ。きっと通った瞬間に転移とかするんだろうなぁ…。そんな事を思いながら、柱の間を通り抜けると………
☆♪☆♪☆
意識が遠のいたかと思ったら、今までとは違う雰囲気の場所に立っていた。
「やっぱり転移するんかい。めっちゃベタな展開やん!」
思わず声が漏れてしまう。
それにこの場所である。さっきまでの雰囲気が嘘のように、大きなモニターとキーボードが目の前に設置されている。
「なに?試験ってこんな近代的な感じなの??今までの雰囲気と違い過ぎて戸惑うんですけど!」
「試験会場は、前世の世界観を踏襲します。そうでないといろいろ困っちゃうじゃないですか。PCとか無い世界の人に急に使えとか無理でしょ?なので、あなたの目の前にある設備はあなたに合った物だ、と言うわけです。」
なるほど、筋は通っている。確かに俺はこの方がやりやすい。よく分からん言葉で書かれていたり、筆と硯とか用意されていたら、その瞬間にちょっと心が折れてしまうかもしれない。
「ご納得頂けたようなので、先に進ませて頂きます。これからモニターに質問が出てきます。その質問に対し素直に答えて下さい。全体としての時間制限はありませんが、こちらも忙しいので、ちゃっちゃと答えて頂けると助かります。何か質問はありますか?」
「あの〜、人生掛かってるのにちゃっちゃととかどうなんでしょう…?」
「言葉のあやです。気にしないでください。それ以外質問がないなら、始めさせて頂きます。それでは張り切ってどうぞ!」
人生掛かってるはずなのになんだろう。この軽い感じ。俺が悪いのか?遊び過ぎたせいでこんな感じになっちゃったのか?いや、遊んでたわけではない。地の性格が出ただけなのだ。
…えっ?もっとタチが悪いんじゃないかって?このくらいご愛嬌でしょ。だって死後の世界よ?ちょっとくらいテンション上げてかないとやってられないじゃん。
そんな事を思っている間に、画面に問題が写し出され、読み上げられる」
「第1問
あなたは猫派ですか。犬派ですか。それともそれ以外ですか。」
…なんだこの質問。これで何が分かるの?こんな質問で人生決まるの??マジで???ちょっと勘弁してほしい。
そんな事を思いながらも即答する。
「猫に決まってるでしょーが!」
「第2問
あなたは道を歩いています。目の前に十字路が見えてきました。そこに差し掛かった時、何かが飛び出して来ました。それは何ですか?」
フリー問題。でもちょっと心理テストっぽい。
「パンを咥えた女の子!」
ふっ!ベタな答えを返してやったぜ。
「第3問」
えっ、スルー?なんか反応とかないの?
「ありません。」
「だから、絶対心を読んでるでしょうが!」
この展開がきたら、何回でも突っ込んでやる。そんな意味のない誓いを心に決める。
「あなたが生まれ変わるとしたらどれですか。猫、パンを咥えた女の子、その他」
「その他!」
なんなのこの質問?確かに1問目と2問目で猫と女の子っていいましたよ?でもそれになりたいとかあり得る?意味わからん!
「第4問
転生したら、あなたは何になりたいですか。」
急にくる核心っぽい質問。これはガチなのか?それとも引っ掛け??惑わす事が目的???
どうしよう。なんて答えていいか分からない…
「時間切れです。」
「…えっ?時間切れとかあるの…?」
「問題によってはあります。」
「そういうのさ………先に言ってよ〜。」
「第4問」
無視ですか。無視ですね。いいですよ。なんかこの展開にも慣れて来たし。そのくらいじゃあ凹まないし。
「あなたは犬派ですか。猫派ですか。それともそれ以外ですか。」
えっ?1問目と同じでない??順番入れ替えただけやん。いきなり被る?そんな事をある??ちょっと意味わからんけど。わからんけどとりあえず…
「猫!」
そんなこんなで質問が続き…
「第58問目」
そろそろ真ん中過ぎたくらいかな。まぁあっても100問くらいでしょ。
…
……
「第101問目
次に書かれている文章を読んで、主人公の気持ちを100字以内で答えなさい」
…100超えたし。しかもここにきて記述問題だし。ちょっと疲れてきたんですけど…
…
……
………
「第213問目
あなたは猫派ですか。犬派ですか。それともそれ以外ですか。」
「だから猫!何回目やこの質問!!」
「だから猫、と言う答えはありませんが…」
「…猫…」
いつまで続くのこれ…
…
……
………
「第350問目
あなたは…」
「猫!」
「何に生まれ変わりたいですか。 猫で宜しいですか?」
「すみません。人間です。人間でお願いします!」
「どうされたのです?なんで泣いてるんですか??」
「なんかもう疲れちゃって…ネロと天使が見えそうです。」
「そうですか。では次の質問です。」
ダメだ。もう言い返す気力も無くなってきた…
「頑張って下さい。あともう少しですよ。」
「もう少しってどれくらいです?」
「ええっと…まぁ、もう少しです。」
「絶対もう少しじゃないやん!ううっ…辛いよぅ…」
こんなやり取りがもう暫く続き、そして…!
「お疲れ様でした。試験は以上です。先に進んで下さい。」
体力と気力の限界を迎えた頃、やっと試験が終わり先に進む事が出来たのであった。