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英雄譚  作者: 豊次郎
2/6

妖狐との契約

〖1時間後〗

ようやく、おれは泣き止んだ。

そう、おれはお腹が空いていた。供物になる事が決まってから殆ど食事(母乳)を与えられずに・・・

生かさず殺さずを実証された形で意外と笑えた。


【気持ち悪い赤子だよねー。自分が殺されかけても笑えるなんて・・・】

シロと呼ばれていた妖狐が呟く。

そうか、此奴もおれの感情を読めるのか・・・

【ねね様みたいに・・・じゃないけれど・・・ある程度は。で、あなた名前は?ねね様が飼うと言われてから名前が必要なのよね】


そうか・・・名前・・・名前か・・・お前たちの好きに付けてくれればいい・・・おれはお前たちのペットだろ?


シロがおれをジロジロ観察し頬をペロペロと舐める。

【そうなのかなぁ・・・ねね様が何も言ってなかったから・・・・飼うて、後で食べるのかな?今は、筋ばっかりで美味しそうじゃ無いし。。。そうなると、名前を付けるのは嫌だな・・・・】


やはり、おれはまだ食糧なのか・・・大きく太らせて食らう形なのか・・・


ふっ、と黒い影が下りる。

ねねが帰ってきた。口には野鳥が2匹。背中には羊が1匹。この辺りでは到底お目に掛かれない。

この妖狐は1時間たらずで何処まで狩りに行ったのだ?


【フフフッ 気になるか?今度連れて行ってやる。シロ、当分の間はこ奴は食料にはしない。安心して名前を与えていいよ。役に立たないようだったら考えるが・・・フフフ、でだ? 質問の答えがまだだぞ、赤子。】


質問の答えか・・・おれは前の世界・・・幾つかの前の世界で異質な殺され方をした。そう、これは呪いだ。その呪いが解けない限り、おれの記憶は次の世界に引き継がれる。そして必ず悲惨な死を迎える。

そして、おれに危険が迫ると10秒間の間の未来予知する。そう、死ぬ前もしくは、死にかける前に1度死ぬ体験・苦しい痛い体験をする。呪いとしては2度美味しいわけだ。


【ほう。で今回が喰われる死に方というわけか?フフフ・・・面白いな】

ねねは羊の毛を上手に口と前足で剥がしなら喋る、シロは野鳥の毛をむしるのに夢中だ。


いや、今回はまだ、死ぬ予告は無かった。(まぁ、だから生きているのだが・・・)

だから、どんなに飢えようが喰われようが・・・まぁ、どちらにせよ悲惨な死に方だ。


【ねね様、ねぇこのムクロ。試しに噛んでみようか? ああ・・・この赤子の名前、ムクロにしたから、どうせすぐ死ぬ感情無しの躯。】

シロは口を大きく開けておれに牙をむく。


パクッと・・・噛みつく。

シロの牙が俺の頬に刺さる。頬から一筋の血が流れる。

赤子の俺の体は条件反射で鳴き声をあげるが・・・心の中は至って冷静だ。

【や?凄い。私が之だけ威嚇すれば、みんな、ビビッて感情を出すのに・・・ムクロの心は驚きもしない。】


おい、シロ。それは威嚇じゃない。きちんと歯形は付いてるし、血も出ている。


【むむ、赤子のくせに呼び捨てだよ。ねね様。もうコイツ食べていい?】

【面白いじゃないかい。シロ。当分アンタが面倒を見てやってね。何たって名付け親だから。】


シロは傷口をペロペロ舐める。血の味を確かめているのか?

【違うよ。消毒だよ。ねね様の言う事は絶対だから。私があなたの親だからね。】


ねねがおれの方によってきて

【それじゃ、ムクロ。≪契約≫だ。 わたしたちはお前をある程度まで面倒を見る。まぁ赤子のままでは何もできまい。で、わたしが必要としてるのは、その特殊な能力だ。未来予知能力。それを私達に提供する。】


しかし、この能力はおれも良く掴んでいない。そう、危険な目に合うと必ず死んでいたし、だから死ぬ姿を死ぬ前に見られるだけだ・・・


【そう、その死ぬ前の出来事が起こった時に私達にも伝達する。それがこの≪契約≫だ。】


なるほど、おれは、このままでは生きていけない。この≪契約≫はもうすでに決定事項と言う事だ。


【フフフ・・・それじゃ≪契約成立≫だな】


と、ねねはシロの噛みあとの血を舐める。

【これで、私達は深くお前の考えが読める。まずは、先ほどお前を横取りされた恨みにキュクロプス達が復讐にきておるみたいだ。それで食事の前の準備運動を兼ねて実践稽古だ。】


そうか・・・じゃおれはお腹が膨れたのでひと眠りだな。


【何を言うか?お前も連れていく。おいシロ。ムクロを背に固定しろ。】


シロは言われるまま俺の襟首を噛んで宙に上げる、おれは3回転してシロの首筋から背中にかけてスッポリト埋まる。そして、シロの体毛が伸びでおれを包み込む。

あったかい。眠くなってきた。と毛が針金の様に硬くなりおれをチクリと刺す。


【ムクロ。寝たら刺すから・・・】


【それじゃシロ。キュクロプスを退治に行こうか】

とねねとシロが歩き出す。


速足でねぐらの洞窟を出て、辺りを探索する。

さすが、妖狐だ。木の上を縦横無人に飛び回り、辺りを探る。


と、滝の麓でキュクロプス達と相まみえる形になる。

【どういう了見だい。キュクロプスの・・・我が領地に無断で入ってくるなど死にたいのかい?】


キュクロプスは三人だ。おや?供物受け渡しのいたのと若干違うが・・・おれはシロの背で様子を伺う。


【ムクロ。よく気付いたね。あれはキュクロプスの息子たちだ。親父は約束を破りはしない。恥をかかされたと誰かに吹き込まれて来たんだろう。】


なるほど、何処の世界でもいざこざは絶えない。


【シロ。貴方は真直ぐにキュクロプスに向かって歩いて行って。たぶん奴らは石を投げるから。その後はムクロの言葉を聞いて逃げなさい。いい、決して自分で判断してはダメよ。ムクロが伝達するまで動いてはダメだから。】


おい、何を言ってるんだ。不確定な能力だ。もしも・・・があるかもしれないし。シロだけに当たる可能性もある。


【わかりました。ねね様。それじゃ行って参ります。】


なにも、疑問も持たずに・・・おかしい。少しは疑えよ。俺の言ってることが嘘とか思わないのか?


【ムクロを信じているわけではありません。ねね様の言葉なの。それが、全てだから】


シロはキュクロプスの前に歩いて行く。


パッン。パッンと小石が飛んでくる。シロは逃げない。小石は石に変わる。


シューパン。シューパンとシロの顔に当たり、額から血が浮き出る。


それをみて、ねねは呟く。

【なるほど・・・大きなもめ事は起こしたくないわけね・・・それなら】


ねねは木の枝を切り取り、牙で先を尖らせて・・・放つ。


キュクロプスの1人に命中する。


突然、訪れた強襲にキュクロプス達が騒然とする。

木の槍を食らった一匹は、その場に倒れ込み。うねり声を上げる。

【ぐぁあぁ。いでぇ いでぇよ。お兄ちゃん いでぇよ。】


どうやら、ねねは一番弱い。キュクロプスを狙ったようだ。


【くそう。狐のくせに・・・調子に乗りやがって】

1人がやられ、頭に血が上ったキュクロプスは大石をシロに目掛けてぶん投げる。

多分、当たる。そして、潰れておれは死ぬ。


そこで、未来予知が発動する。

〚シロは避けない。そのまま、大石がシロに命中しおれは潰れて死ぬ〛

絵に描いたような簡単な出来事。


おれとシロ・ネネの脳裏に未来予知がシンクロする。

と、すぐさま、シロが凄まじい跳躍を見せて大石に向かい飛んでいく。

シロは大石に頭突きをすると、大石は簡単に粉々に崩れる。


【なるほど・・・未来予知のシンクロてあんまり、気持ちいいものでは無いのね。】

【フフフ・・・思った以上、使えるかも・・・・これで・・・フフフ・・・】


ビビったキュクロプスは、脅えて逃げ去っていく。


おれは、そのまま、シロの背中で眠ってしまった。















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