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英雄譚  作者: 豊次郎
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魔物の供物

その年、この国では前代未聞の飢餓を迎えていた。

干ばつの影響で穀物は絶対的に不足し、魔物の襲来による国の疲弊が主な理由だった。


食べる物がなく、人々は飢えに耐えきれず、木の根、雑草を煮て食べ、町の猫犬などのペットとして飼われてた動物達は・・・姿を消した。


最近では、子供が行方不明になる事件が頻繁に発生した。

消えた子供たちの隣の家やその周辺の家々は少しは長く生き延びれたのだろうか?


そんなときに・・・おれは生まれた。


貧しい農家の次男某として生まれたおれの運命は、その時点でほぼ決定していた。

売られるか、行方不明にになるか、その何方かだ。

もちろん、その両方の選択肢の中で生き残ることはあり得ない。


しかし、そこに幸か不幸か第三の選択肢が発生した。


運命が変わった瞬間だ。

しかもさらに悪い方向に・・・


再度の魔物の襲来だ。

村々は魔物の襲来により更に疲弊し、ここ2,3日で村が2つ消滅した。


国王は考えた。

此の状況で魔物が襲来して来ては国が潰れてしまう。



【人民を供物に捧げよう】

王は魔物と協定を結ぶ。


《ここ100年の間。人・物・食料を供物として供給する。その間、国の安定の保障》


これが、魔物との協定により取り決められた事


そう、おれは生まれ落ちて、もう直ぐ魔物の供物にされた訳だ。


語り手である俺は生まれたての赤子だが、おれは前世の記憶・知識を引き継いでいた。

前世の世界はこの世界とは丸っ切り違うが・・・



俺は母親と親父に連れられて国王の城に向かう。

両親とも両手、両足が棒の様に痩せ細り、一歩一歩。踏みしめながら城へとむかう。

母親は終始おれに 《ごめんね。ごめんね。》と繰り返し語りかけていたが、遅かれ早かれ、おれは何者かの供物になる事が決まっていた。


《今更、運命は何も変わらない・・・変わらないのだろうか?》


しかし、この両親達も今の状態が長く続けば同じだろう。

城に着き、両親達はおれの受け渡しを行う。

おれを受け渡した後、両親達は幾ばくかの食料を受け取り足早にその場を去っていった。

今では、両親の幾ばくかの延命を願うばかりだ。


≪決して、今が最悪とは限らない。そう思わなければ気が狂ってしまう。≫



〖5時間後〗


おれ達供物、約三百人は馬車に乗せられ国境を越え、魔物の住む領域までさしかかっていた。

魔物住まう森、その協定場所に到着する。

おれは知らない同じく供物の婆さんに抱き抱えられて馬車をおりて、その時、(食料になる時)を待つ。



その場で待つ事3時間。

その時が来た。

黒い霧が掛かり、今までに(前世にても)聞いたことのない鳴声、喚き声が響く。

得体のしれない魔物達がゾロゾロと俺たちの前に現れる。


どこからか?声が響く。


【お前達、静まれ!今より食料の分配を始める。】


その声を聞いた時、全身に寒気を感じ、おれ達供物は魔物達の食料となる事を再認識した。


分配のやり方は至って簡単、早い者勝ちだ!



各々の下に魔法陣が浮かび、魔物達が転送されてくる。


色んな奴らがいた。


昆虫みたいなやつ。四つ足動物。人間に近い奴、多種多様だ。


昆虫系は動きが速い。

まずは、人の口、鼻、目・・・ありとあらゆる穴から入り込み、臓物を無佐分利、喰らう。

それを、動物系が昆虫の魔物ごと咥え、噛み砕く。

まずは、首を折り、息の根を止め柔らかい肉を食らう。


昆虫系は胴体から下が千切れようがお構いなしだ。人を喰らいながら、喰らった肉が大地に落ちていく。


動物系は只々、食う


最悪なのは人間に近い形の魔物だ。

人をオモチャに遊ぶ。

腕の関節を逆に曲げ、痛みに震える人間を見てゲラゲラ笑う。

棒を何本も突き刺し、首を棒で刺し

奴らは、簡単には殺さない。遊びつくして・・・飽きたら捨てる。


人々は呻き声を上げ消えて行く。

魔法陣の光に見とれていると、おれを抱き抱えていた老婆の下に魔法陣が発生した。

老婆は、おれを力強く抱きしめ、祈りの言葉をつぶやく。


「わが、女神よ。どうか・・・どうかお助け下さい・・・ワタシ目だけでも、どうか・・・」


淡い金色の光が全身をまとい、おれと老婆の姿が消え変えようとした・・・

その時、ふっと何かが舞い降りたと思うと、黒い影がおれを咥える。


おれを咥えたのは、銀色の狐だった。


【何をする。妖狐 そいつらはおれの食事だ】


そこにひとつ目のキュクロプスが現れる。

キュクロプスは棍棒を振り回ながら地面に叩きつける。

その反動で地響きが起き振動が森全体に伝わる。


その場が騒然となり、自体を飲み込めないおれはその妖狐を見つめる。

銀色の毛並みに真っ赤な燃えるような目、研ぎ澄まされた牙。全てがまばゆく、美しい。


【すまないね、キュクロプス。これはわたしのワガママだ。すまないが、こいつと他の供物と交換してはもらえないだろうか。】


キュクロプスはギロギロと俺と妖狐をにらむ。

【またか・・・今回は赤子だ。安くないぞ!1対50だ! 他全ての供物を50人だ】


おれにそんな価値があるのか・・・おれみたいに赤子は食べるところが少なくて、贔屓目にみても割に合わないと思うが・・・


【いいだろう。他は全てお前にやる。取引成立だ。】


妖狐はおれを咥えたまま、魔層の奥へと飛んで行く。



〖2時間後〗


おれは其の侭、妖狐の住処に連れていかれカゴの中にいる。

洞窟の中に小屋があり、ひっそりとした佇まいだ。


さて、おれはどうなるのか?。すぐに喰われる・・・大きくなったところをガブリか?

まぁ、赤子のおれには選択肢は無いのだけれど・・・・


【ねね様。なぜに今晩のご飯が赤子だけですの?今晩は豪華な食事と聞いていたのに・・・】

白い毛並みの妖狐がおれをみて残念そうに喋る。

【シロ。ゴメンね。わたし、この赤子に興味があってね。この子は食料じゃ無いの・・・飼うことにしたの】


【へ?今晩のご飯は?飼うて?】

シロと言う名の妖狐は首をかしげる。


【おい!赤子。お前は何者だ?】

ねねと呼ばれた妖狐がおれに喋りかける。

おれは、知らぬ存ぜぬと、赤子のようにフギャフギャと泣き出す。


【今更、泣き出しても遅い。なぜ?今まで泣かないで全てを観察するような目で見ていた?お前の存在は魔物のわたしから見ても異質だ。】


おれはまだ赤子だ。実際に喋れない。

『すまんな。おれはまだ、赤子だ。喋れないんだ。』と心の中で念じる。


妖狐はフフフッと笑うと

【そうか・・・喋れないか?でも私達を誰だと思っている?妖狐だぞ。他の魔物と違ってな・・・お前の感情は駄々洩れだったぞ?老婆に対しても何の感情も抱いていないのも。わたしに見とれていた】


おれはフギャフギャと泣いたままだ。

赤子故に体で感情表現をすると、中々元には戻らない。


【フフフ・・・まだ、体が付いていかぬか・・・シロよ、その赤子にヤギの乳でも飲ませておいてくれ。わたしは今晩の食料を調達してる。】


ねねと呼ばれた妖狐は暗闇の中に姿を消す。

おれは、この世界に生を受け、2日後に魔物の供物となった。




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