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1000の言葉 story of 1000 words  作者: 古市 棗
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時間差の手紙

『〝時間〟という流れの中で〝想い出〟は時間差で目の前に現れる―。』



僕のもとに彼女から初めてのLove Letterが届いた―。


封筒の中には女友達と一緒に飛びっきりの笑顔を映した写真と、初めての海外旅行を楽しんでいる様子を綴った手紙が入っていた。


〝ハワイは暖かいです。〟


〝貴方は来た事があるんでしょ?こんな素敵な所を私より先に知ってたなんて許せない!〟


〝ダイビングのインストラクターにナンパされたわ。もちろん断ったわよ。英語で何言ってるかイマイチ分からないし。〟


〝今度は二人で来よう。夕暮れのワイキキを一緒に歩きたい。〟


〝こんなに長い間、貴方に逢っていないなんて奇跡だわ。だから日本に帰ったら一番最初に逢いたいです。〟


彼女が帰国する予定だったその日―。


何気なく見ていたTVのニュースで、僕は彼女が2度と戻らないことを知った。


飛行機事故―。


彼女の乗った飛行機が太平洋上空で消息を絶ち、その後、幾つかの飛行機の破片が海で見つかったとニュースは伝えていた。


(間違いであって欲しい。)


そう思わずにはいられなかった。


でも、時が経つにつれそのニュースが間違いでないことは明確になり、TVを見ながら呆然としている僕のもとに友人達から引っ切り無しに電話が掛かって来ていた。


しかし、その電話にすら、僕はどう対応し、何て返事をしたのか、全く憶えていなかった。


後日―。


彼女の実家で葬儀が行われ、弔問に訪れる全ての人々が若い彼女の死を痛み、涙する声は途切れることは無かった。


そんな風景を見ながら、僕は少しも涙を流す事が出来ないでいた。


僕一人だけが、彼女の死を受け入れられずにいたのかも知れない。


そして―。


数日後、彼女からの手紙は僕の所に届いた。


その手紙を読み、僕は初めて泣いた。


広くて深いどこかの海で眠る彼女を想い、余りの刹那さに涙を抑え切れなかった。


僕はもう一度彼女からの手紙を読み直し、最後の一行に書かれた言葉に精一杯の想いを込めて答えた。


それは二人が交わす最後の会話。


〝ねぇ、私のこと愛してる?〟


『ああ、愛してるよ-。』

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