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疑問と疑問

「お姉さん、本当に有り難う!けどお姉さんのカッコイイとこ見れなくて残念だったなー」

「いや、止め刺したの別の人だし、私一人じゃ無理だったから」

「カイザーのおっちゃんがベタ褒めしてたぜ!肝の座った嬢ちゃんだって!」

「分かったから大人しくしてなよ。頭の怪我に響くって」

「海の男だから平気だってこんくらい!」


あれからコーエン君はすぐに目を覚ましてこの通り元気に復活してくれた。内心とても安心したが、このお喋り攻撃は正直困っている。

それよかカイザーのおっちゃんて、あの止め刺した人だろうか?無精髭を生やしたスキンヘッドのガタイの良いあの人の名前がカイザーさん…。若干名前よりも野性味が溢れている気がするが。おっと思考が逸れた。

只今バルガダを元気な人達と共に解体中です。何とあの巨体が4体も獲れたので良かったらとお裾分け頂ける事となりました。嬉々として解体のお手伝いを申し出たが、後少しで港に到着らしいのに作業の終わりが見えない。デカイ上に数がある。

船員さん達は慣れた手付きでどんどんバルガダを細かくしていってる。以前テレビで観たマグロの解体ショーの様に鮮やかだ。

それに比べて私はチマチマとあの収納式ナイフで作業している。勿論道具も貸してもらったが、何か手に馴染まなかったので使い慣れた物でチャレンジ。やっぱり1番しっくりきた。進みは遅いし手際も悪いが、此れが1番やり易いので仕方ない。そんな私を見兼ねてコーエン君も一緒に解体してくれてる。有り難や。でももう少し会話のペース落としてくれたらもっと嬉しいです。言わないけど。


「そういえば、お兄さんは大丈夫なのかよ?」

「大丈夫だよ。今は意識も戻って大人しくしてもらってるし」

「お兄さん大活躍だったらしいじゃん‼︎銃も使えるしすげぇな‼︎」

「そーだねー…」


遠い目をしながら目覚めた直後の不機嫌Maxな彼の顔を思い出した。治療は問題なく出来たので動いて頂いても何も問題はないが、あの尾っぽくらってすぐ全快というのも不自然なので休んでもらってる。本人とても不本意そうでしたが知らん。「人助けした後の一休みだと思え」と言ってベッドに残して来た事を後悔はしていない。


「にしてもバルガダって色んな所が素材になるんだね。知らんかった」

「海の魔物の事なら何でも聴いてよ!バルガダの肉は栄養価高いけど不味いのがなぁ。塩で燻製にすればまだマシだけど、やっぱあんま美味くないんだよ。その代わり歯や鱗は魔除けや装飾品になるし、皮は鎧や手甲にも使われてんだぜ!」

「へえ、燻製良いね!旅してるから保存食は重宝するんだ」

「お姉さん聴いてた?不味いんだってば」

「でも栄養価高いんでしょ?」

「…お勧めはしないぜ」


そんなに不味いのか。逆に気になる。コーエン君は味を思い出しているのか、物凄く苦い顔をしている。

…刺身とかイケるかな?と懐かしい郷土料理を思い出したが衛生面を考えてすぐに却下した。寄生虫とかいたら堪ったものではない。


「コーエン君、手伝ってくれるのは有り難いけど休んでなよ。頭打ったんだし」

「へーきだってこん位!お姉さんは心配し過ぎ」

「あのねぇ、頭部の怪我は甘くみると危険なんだってば。無理は禁物だかんね!」


コーエン君は耳に蛸だと言わんばかりに適当な返事を返しながら手を動かしている。やはり海の生活が長いだけあって作業は私よりも丁寧で速い。私も早く解体作業を上手く熟せる様になりたい…これから還る迄の必須技術なのだから。

無意識に眉間に皺を寄せながら黙々と手元の作業に没頭する。こういった技術は数を熟さないと身につかないから、必死に頭を働かせてあーでもこーでもと脳内で喚く。私の脳味噌はそんなに高性能ではない。頑張らねば。

集中して作業すると時間の流れを早く感じるのは世の常です。船員の誰かが「陸が見えたぞー!」と大声を張ってくれたので没頭していた耳にも遠慮なく入ってきた。


「おう嬢ちゃん、後はこっちでやっといてやるから下船の準備しな!心配しなくても分け前はたっぷりやるからよ。そら、手洗ってアンちゃんとこ行って来な」


誰かと思って見上げれば先程話題に上ったカイザーさん。やっぱり名前の響きよりワイルド感半端ない。

ニッカリ歯を見せながら笑った顔は、全体の厳つさをとても和らげてくれる。笑顔の力って凄いな。


「いえ、2人旅ですし少しで充分…」

「お姉さん遠慮すんなって!海の男にケチな真似させないでくれよ」

「…ええと」

「そういうこった!随分世話になったからな。海の男は恩には恩で返す」


左様ですか…。2人の良い笑顔を交互に見て、これは勝てそうにないなと諦めてお言葉に甘える事にした。2人にお辞儀をして背を向けた瞬間カイザーさんから「イイって事よ!」と一撃貰いました。物凄く痛かった上にヨロケてしまった。コーエン君がカイザーさんに「加減しろってカイザーのおっちゃん‼︎」と怒っているのを後ろで聞きながらクスリと笑う。別にM子ではない。2人の遣り取りが微笑ましかったのだ。痛いのは嫌いだがあのノリは好きなんです。

ヒリヒリする背中を摩りながらセオの居る部屋に入ると、もうベッドから起きて下船の準備を黙々としていた。私の入室に気付いている筈なのに、視線を向ける気配はなさそうだ。取り敢えず私も部屋の片付けをしなければ。彼は問題なさそうなので自室に戻る事にして踵を返した。


「…ちょっと」

「?」


ドアノブに手を掛けたまま振り返る。言わずもがな、呼び止めたのはセオな訳だけど…呼び止めた癖に視線が合わない。目線を手元に下げたまま彼はポツリと言葉を零した。


「…怒らないの?」

「???」


本気で意味が分からず首を傾げる。何かあったか?私が彼に対して怒るような事。

………数秒考えてみたが何も出てこず、結局傾げた首の角度を頭の中で更に傾げただけで終わってしまった。


「………特には」

「何で⁉︎」

「いや、何でって言われても…」


あ、やっと目が合った。

訳の分からない疑問よりもそっちの方に意識が向く。やっぱり人と話す時は目が合ってる方が良い。どうでもいい人なら兎も角、彼は別。なんて思っていたらセオの眉間に皺が出来た。何故だ。


「…護衛失格だった…」

「そう?」

「そうって……………、俺に期待してなかったって事?」

「いや、期待以上だけど」

「どこが⁉︎危険な目に遭ってたのにっ‼︎」


そうだろうか?いや、まぁ今考えたら下手したら死ぬかもなぁとは思う状況だったけれども、あの時はそれよりも活路を開く方に思考がいってたし、結果オーライだったから特に問題はないかと。しかもセオは甲板で大健闘していた訳だし、そんな中私の事を見張りながらとか普通に無理だろ。うん、解決。


「精一杯やった結果なら仕方ないっしょ」

「………」

「自衛も出来る限りする覚悟の旅だし、全部君に責任を押し付けるつもりはハナからないよ。でも道連れにする気もないから這いつくばっても生き残るつもりではいる」

「…そうじゃない…その話ならもう聴いた」

「…???」


どうしよう、彼の言いたい事が全く理解出来ない。それでも目覚めた時不機嫌だったのは今問答してる事が原因だと悟れたが…本気でどうしよう。何を言っても恐らく彼の言いたい事に辿り着けなさそうで言葉を無くしてしまう。沈黙が重たい。頭の中がグルグルする。どうしよう、本当にこの空気辛い。どうしよう…。マズイ、どうしようの無限ループだこれ。折角船の揺れに慣れてきたのにまた船酔いが再発しそうです。


「…護衛が欲しかったんじゃないの?」

「…え?うん、そう…だけど」

「なら何で…!」

「な、何でって…何が?」


あ、駄目だ。よく分からないけどこれ駄目な感じだ。この遣り取り絶対何か食い違ってる。何が食い違ってるかは分からないけど私と彼の間で絶対どっかがズレてる。

相変わらず頭の中は疑問だらけで正解が弾出せない自分にいい加減苛々してきた。しかしこの事態に若干パニックを起こしている為か、何をして何を話せば良いのか分からず途方に暮れてしまいそうだ。

そんなオロオロしている私をセオはジッと見ている。穴が空きそうな程見ている。きっとセオの目に私は挙動不審な変人に見えているのであろう、彼の顔は得体の知れない物体を見ているソレだった。本気で泣きたくなるからやめてくれ。

暫くして漸くセオは私から視線を外し、何か考え込むように口に手を当てながら斜め下を見ている。彼の視界から消えた事に安堵したのか、私も少し落ち着きを取り戻した。しかしやはり彼の考えてる事は分からない。


「…分かった。ごめん、もう大丈夫」

「…だ、大丈夫なの?」

「ん、理解出来ないけど理解した」

「???ごめん、私が理解出来ない」

「気にしないで。俺も理解出来てないから」

「????????」


え、結局意味分からないまま終わらせて大丈夫なのかこの会話。

今度は私が彼をジッと見てしまう側になったけれど、会話は本当に終わったらしく、セオはまた下船の準備を始めてしまった。暫くその様子を疑問だらけの頭のまま呆然と眺めていたけれど、船員さん達がバタバタと動いてる音でやっとこ我に返り、自分の準備をしなければと慌てて自室に戻った。


…私、セオとの距離感これで合ってるのだろうか?

本気で心配になってきた。

まだ船から降りない…すいません、次回やっと降ります。本気で進行遅くてすみませんーーー‼︎

更新遅いのにブクマ、ポイント本当に有り難うございます‼︎早く落ち着け私生活‼︎ここまで読んでくださり有り難うございます‼︎‼︎

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