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8話、《鉄姫》藤原皐月。

《訓練所》



「ハァハァ!」


俺は身体中から血を流しながら走り回る。


「おいおい、その程度か木戸慧護!」


藤原先輩は手にいくつかのパチンコ玉を持ち握る。するとパチンコ玉は形を変え手裏剣に変化した。それを勢いよく俺に投げつける。


「逃げるな!」


「クソッ!」


俺は手で顔を隠し歯を食いしばる。


グサササッッ!!


腹と両手に鈍い痛みが走る。


「グゥッ!!」


「戦斧!これで終わりだ!」


右手に持っていた刀を斧に変え切りかかってきた。


「ハッ!」


それを辛うじて避け後ろに跳ぶ。


「長槍。」


そこから間合いもつめずに槍での攻撃、身体をひねり皮一枚でなんとか回避する。


「……本当に良く避けるな。普通なら数十回死んでる筈なのに。」


「ハァ…ハァ…悪いが負けるわけにはいかないんでな。」


試合が始まって既に一時間が経過していた。


……完全に油断していた。能力を聞いて普通だと思った。そんな能力でよく三強に入れたと、だが、試合が始まって思い違いだとすぐに理解した。能力はほとんどオマケ、藤原皐月の強さは驚くべき身体能力と武器を扱う技術の高さだ。開始と同時に刀での連撃、そのスピード、キレ間違いなく達人の域に入っている。おまけに近距離はトンファー、盾、短刀、中距離は刀、斧、レイピア、遠距離は手裏剣、長槍、モーニングスター、等で距離に合わせて使い分け間合い無関係の連続攻撃を繰り広げる。最初は遠距離から武器を使わせ続ければ鉄もなくなり隙が出来ると思っていたが藤原先輩は鉄を身体中に重りのように取り付けていてなくなりそうにない。むしろ、使えば使うほど速く強くなっていった。


「ハァ…ハァ…クソッ!初姉とは別の意味で反則だ!」


「ハハ!そう言うな、私はこんなに長く戦える相手は久しぶりなんだ。もっと楽しませろ!」


冗談じゃねぇ、


「まぁ、それも終わりだがな。鉄蜘蛛。」


藤原先輩は刀を地面に突き刺すと刀は蜘蛛の巣状に広がっていった。広がりながら落ちている武器を飲み込み更に広がり続ける。


「何だよこれ?」


針金程しかない細さの鉄、これならダメージはなさそうだ。俺は藤原先輩との間合いを詰めるため走る。…地面の鉄を無視して。


「かかったな。…拘束具。」


ガション!


「は?」


俺の右足に足枷が付いている。


「言ったろ私は触れている鉄の形を変えられるんだよ。鎖。刀。オラッ!。」


左手に足枷付きの鎖、右手に刀を持ち俺を空中に浮かせ引き寄せる。どんだけ馬鹿力だよ⁈


「これで逃げる事は出来ないぞ?死にたくなければ降参しろよ?」


「誰がするか⁈」


…やられた。体は空中。このままじゃ真っ二つだ。俺は右手についたブレスレットの石に触れ叫ぶ。


「風の鳥!」


「ハァッ!」


藤原先輩は容赦なく俺の体を真っ二つにする一撃を放つ。しかし、その斬撃は俺に届かず空を斬る。俺はそのまま地面に落ちる。


「ん?外した?」


「外したんじゃなく外させたんだよ。鉄の蛇!」


右足についた足枷がするりと取れる。


「ふぅ、危なかった。」


「……それが貴様の能力か?」


俺はポケットからライターを取り出す。


「あぁ、まだ見せてなかったよな。俺の能力は触れた物に動物の動きをさせるんだ。」


俺の右足についていた足枷が蛇の形でニョロニョロ動く。


「なるほど、形状変化に操作系の能力か。」


……少し違うんだが。


俺はライターに火をつけ、触れる。


「火の犬!」


「なっ⁈」


火はみるみる膨れ上がり二メートル強の犬の形をとった。


「これが俺の最初で最後の攻撃です。食らいつけ!」


「フッ、面白い!」


藤原先輩に勢いよく火の犬が襲いかかる。藤原先輩はそれを向かえうつために刀を握っている。


「ハッ!」


音速。そう呼んで相応しい斬撃を火の犬に放った。…だが、


「クッ!」


刀が溶けた。当然、ライターから生まれた火だとしても二メートル強までデカくした炎塊だ。ただの鉄ぐらいなら一瞬で溶かせる。


そして、藤原先輩の体に火の犬の牙が食らいつく寸前で止めた。


「藤原先輩の武器がただの鉄で良かった。もし、もっと丈夫な物だったらまだ時間が掛かってました。……降参してもらえますか?」


「…ここまで計算尽くか?」


「はい、藤原先輩の武器の素材と量を確認してこれなら防げないと思う一手を打たせてもらいました。」


「そのために一時間も無駄にしたのか?」


「はい。」


「…ふははっ!!馬鹿だな貴様は!そんな事しなくてももっと効率のいい戦い方があっただろうに!…分かった!認めてやるよ、木戸慧護。一緒に魔力狩りをぶちのめそう!」


どうやら認めてもらえたらしい。


「こちらこそよろしくお願いします。」



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